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寿司・鮨・鮓、三つの字

すしは「寿司」とも「鮨」とも「鮓」とも書く。二つは中国から来た漢字で、もとは別の食べ物を指していました。残る「寿司」は、音を当てただけの字です。すしの名前と三つの字の話です。

酸っぱいから「すし」

「すし」の語源は、酸っぱいという意味の「酸(す)し」。もとのすしは、塩をした魚をご飯に漬けておく保存食でした。酢は使わない。ご飯が発酵してできる乳酸が、すしを酸っぱくしたのです。

塩辛の「鮨」、ご飯の「鮓」

すしの字が出てくるいちばん古い文献は、紀元前5〜3世紀の字典『爾雅』の「鮨」。ただしこれは、ご飯を入れずに発酵させたもの、つまり塩辛でした。ご飯に漬ける、すしのルーツにあたるものは「鮓」。こちらのいちばん古い文献は、2世紀の末に編まれた字典『釈名』です。
ところが3世紀の『広雅』は、「鮨」と「鮓」を同じ意味としてしまいます。鮓は南方の食べ物で、都の学者は見たことも食べたこともなかった。発酵の効きすぎたすしは塩辛と見まちがえそうで、取り違えたのでしょう。二つの字は、ごちゃ混ぜのまま日本へ渡ってきました。
日本の最古の文献のひとつ、正倉院文書や平城宮跡の木簡に、すでに「鮓」「鮨」の字が見えます。『養老令』(718年)には「鰒鮓」「貽貝鮓」「雑鮨」。その注釈書『令義解』は「鮨また鮓なり」と書いていて、以後、日本では二つを区別せず、どちらも「すし」と読んできました。

「寿司」は当て字

では「寿司」は。「寿」にも「司」にも食べ物の意味はなく、スシと読める字を並べただけの、まったくの当て字です。スシと読めさえすればよく、「ス」には「須」や「酢」、「シ」には「志」や「之」と、いろいろに書かれた。そのなかで、なんとなくめでたそうな「寿司」が残ったのです。いつから使われたかは、資料で割れます。世界大百科事典は、鮓と鮨のほかの書き方を江戸中期以後の当て字とし、日本国語大辞典は、縁起をかついだ当て字で近代以降のものとしています。
すしはめでたい席に欠かせないから「寿を司る」と書く、という話をよく聞きます。けれどこれは、あとからつけた説明だ、というのがすし研究者の日比野光敏の見立てです。

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