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土地の寿司

消えかけの巻き寿司

節分の恵方巻は、いまではすっかりおなじみになりました。その陰で、土地ごとに巻かれてきた一本が、ひっそり消えかけています。

恵方巻の陰で

節分に恵方巻を食べる習わしは、昭和のはじめに関西の花柳界ではやったお座敷遊びが始まりだ、という説もあります。栃木県壬生町の磐裂根裂(いわさくねさく)神社は、これを神社の行事に取り入れ、「福巻寿司発祥の地」を名乗っています。巻き寿司を神社のお下がりとしていただけるのは、めずらしいことです。

消えかけの一本

兵庫県明石市には、フルセの巻き寿司があります。フルセは、生まれて1年以上たったキビナゴ。つけ焼きにして、巻き寿司の芯にします。昔は値の張るアナゴの代わりに、三月の節句によく作られていたようです。アナゴが安くなったいまは見かけることが減り、知る人も少なくなりました。
埼玉県の秩父地方の「きらずずし」は、ご飯の代わりにおからを使います。きらずは、おからのこと。おからの寿司はふつう、魚の姿寿司や棒寿司、ちらしにすることが多いのに、ここでは巻き寿司にする。芯は入れず、酢で味をつけたおからと野菜の煮物を巻きます。
三重県多気町では、名物のイセイモを蒸してつぶし、ご飯の代わりにして巻くことがあります。芯はニンジンなど。秩父のきらずずしと同じく、地元でも忘れられかけた、遠い昔の話になっています。
和歌山県の加太(かだ)には、海苔ではなくワカメで巻く「加太のメずし」があります。メは海藻のこと。芯はふつうの海苔巻きと同じで、江戸後期の料理書『名飯部類』(1802年)にも載っている古い寿司です。困るのは、巻くためのワカメのシート。平成23年(2011年)の時点で作る人はもういなくて、寿司屋が買いためたものを細々と使っていました。

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