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品書き / 巻物

お新香巻御新香巻

おしんこまき/Pickled radish roll (Oshinko-maki)

沢庵などの漬物を芯にした細巻き。明治の大阪で生まれ、東京へ来たばかりのころは「海苔の香りが台なし」「下種の食べ物」と江戸っ子に嫌われました。いまでは〆の定番で、トロと巻けば「トロたく」になります。

沢庵にする大根の天日干し
沢庵にする大根の天日干し写真: Robin(CC BY-SA 2.0)
細巻き4種(右から2列目が沢庵の新香巻き)
細巻き4種(右から2列目が沢庵の新香巻き)写真: 石焼ビビンバ(CC BY-SA 4.0)

「下種の食べ物」と言われた巻物

東京東京に出回りはじめたころ、新香巻きは江戸っ子にさんざんな言われようでした。江戸前の海苔巻きは、焼き海苔の香りを楽しむもの。そこへ沢庵の強いにおいでは、せっかくの海苔の香りが台なし。「こんなものは下種の食べ物だ」とまで酷評されたのです。
においの強さは折り紙つき。旅行家イザベラ・バードは『日本紀行』で、誰かが食べていると同じ家にいられないほどで、これよりひどいのはスカンクくらい、と書き残しています。江戸っ子が海苔巻きに入れるのを嫌がったのも、無理はない。
大阪沢庵の細巻きは、大阪生まれ。大阪寿司の生き字引と呼ばれた人の証言では、最初に始めたのは大阪の「鮓虎」で、それをまねた「矢倉」が「こうこ巻き」と名づけて売り出しました。明治の後期のことです。
昭和5年(1930)の『すし通』は、「香の物鮨」を「関西方面から最近東京に流行してきたもの」として取り上げています。載っているのは「巻鮨」の項ではなく「特種の鮨」の項。まだ変わり種の扱いでした。

新香か、香々か

「新香」は、新しい香の物、つまり漬けて日の浅い漬物のこと。別名の「香々(こうこ)巻き」も、香の物を指します。だから古漬けの沢庵で巻いたら、厳密には新香巻きではなく香々巻き。とはいえ今では、「新香」は漬物全般を指す言葉としても使われています。
芯はふつう沢庵。千切りか刻んだものを使い、ごまや紫蘇、大葉、きゅうりを合わせます。沢庵の香りとぽりぽりした歯ざわりに、ごまと大葉の風味。紫蘇を入れればさわやかさも加わり、辛みがほしければ山葵を塗ります。ヤマゴボウの味噌漬けなど、沢庵以外の漬物で巻くこともあります。
北海道北海道で「新香巻き」と言えば、きゅうりの奈良漬けを芯にした細巻きのことです。
トロたく巻き(ネギトロと沢庵)
トロたく巻き(ネギトロと沢庵)写真: 石焼ビビンバ(CC BY-SA 4.0)
北海道沢庵とトロ(またはネギトロ)を巻けば「トロたく」。北海道の寿司屋が考えたと伝わる一本で、ピンクと黄色のかわいい色合いと、さっぱりした沢庵に濃厚なトロの脂という意外な組み合わせで、人気の巻物になりました。

沢庵和尚と、二切れの理由

山形沢庵漬けの名の由来は、じつはよく分かっていません。沢庵和尚が始めたからとも、「貯え漬け(たくわえづけ)」がなまったとも言われ、辞書は「未詳」とする。和尚の墓石が漬物の重し石に似ていたから、という説まであります。沢庵和尚は江戸初期の臨済宗の禅僧、沢庵宗彭。寛永6年(1629)の紫衣事件で出羽の上山へ流された人で、上山の春雨庵の境内には「沢庵漬名称発祥の地碑」が立っています。
滋賀さらに古い祖先を名のる漬物もあります。比叡山に伝わる「定心房」は、平安時代の良源が考えたと伝わる、丸干しの大根を塩と藁で重ね漬けにしたもの。これを沢庵の始まりとする見方もあります。
天保年間の『漬物塩嘉言』は、沢庵を香の物の第一に挙げています。作り方は、大根を14〜20日ほど天日で干し、1斗分の大根に糠7升、塩3升。長く漬けるほど塩を増やし、3年漬、5年漬、7年漬と呼びました。
定食に沢庵が二切れつくのは、江戸時代の武家社会の名残、という話が残っています。一切れは「人斬れ」、三切れは「身斬れ」に通じるので、侍には出さなかった、というわけです。

いぶりがっこ、回転寿司、台所

秋田秋田には、燻した大根で作る「いぶりがっこ」があります。雪深い内陸では天日干しの大根が乾ききらないうちに凍ってしまうので、囲炉裏の上に吊るして熱と煙で干した。ナラや桜の煙で2〜5日いぶし、米ぬかと塩、ザラメで2か月以上漬け込みます。「いぶり」は燻すこと、「がっこ」は漬物。2019年には地理的表示(GI)に登録されました。
回転寿司では、はま寿司が「たくあん巻(ごま入り)」を税込110円で出しています(2026年9月確認)。
家で巻くなら、沢庵を千切りにして、白ごまと大葉を一緒に。シャリを広げた海苔に並べて巻き、四つか六つに切り分けます。いぶりがっこで巻けば、燻した香りの新香巻きになります。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • はま寿司「たくあん巻(ごま入り)」110円2026-09-25 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「たくあん巻」手巻1本(税込)275円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「お新香」細巻1本(税込)431円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「お新香巻」(グランドメニュー、税込)330円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「お新香」細巻き(税込。一部店舗は価格が異なる場合あり)330円2026-09-29 時点
  • 芦屋 波沙鮓「しんこ」細巻1本(税込。本体価格600円)660円2026-09-30 時点
  • 富山 蛇の目寿司「新香巻」巻寿し1本(税込。その日の仕入れや季節で変わる)275円2026-09-30 時点

『江戸前の旬』では

読者の感想によれば、32巻に、母の糠漬けで巻いたお新香巻きが出てきます。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
こうこ巻き(香々巻き)大阪
新香巻き(きゅうりの奈良漬け)北海道

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