東京都
東京の寿司は、江戸前だけではありません。八丈島には、ヅケにした魚を甘めのシャリで握り、ワサビの代わりにカラシをのせる島寿司がある。魚河岸は日本橋から築地へ、そして豊洲へと移ってきました。
島寿司はカラシで食べる
なぜカラシなのか。伊豆諸島や小笠原諸島では、かつてワサビが自由に手に入らなかったからです。醤油にも島の工夫がある。島トウガラシの熟していない実「青とう」を漬け込んで辛くした「島とう醤油」で食べることもあります。伊豆諸島の北のほうでは、刺身もこの島とう醤油。
ヅケにするのは、もとは船で沖に出るとき魚の鮮度を保つための工夫だった、という話が伝わっています。やや甘めのシャリも、日持ちをよくするため。とはいえいまは、おいしいからヅケにする。そういう食べ方として島に根づいています。寿司が江戸から伝わったのは明治以降のことで、そこから島ごとに独自の形に育ちました。マグロ
八丈島では昔から、2月3日の節分に、島の言葉で「春トビ」と呼ぶハマトビウオで島寿司を握って食べてきました。春トビの初水揚げは、島に春を知らせる合図。小笠原諸島で春を告げる魚は、サワラの仲間のカマスサワラで、こちらも島寿司のタネです。冠婚葬祭の膳にも、島寿司がのります。
島寿司は海を渡りました。南は小笠原諸島へ。明治時代に八丈島からの開拓団が入った沖縄の大東諸島には、「大東寿司」として伝わっています。伊豆大島では、醤油に漬けたタネがつやつやの飴色になるので、「鼈甲(べっこう)鮨」とも呼ぶ。
小笠原諸島は、日本人と、欧米から来て日本に帰化した人たちが一緒に暮らしてきた島です。島寿司は、ここでも島の伝統として好まれてきました。戦争中、島の人は全員が強制的に疎開させられ、戦争が終わってもしばらくは、欧米系の人とその家族しか島に戻れなかった。それでも島寿司は作られつづけます。江戸前のヅケの技を守ったのは、欧米系の島の人たちでした。
島で手に入らなかったワサビが、同じ東京の山あいでは名産でした。多摩川の清流と涼しい気候に恵まれた奥多摩では、文化文政のころにはワサビ栽培が盛ん。文政6年(1823年)の『武蔵名勝図会』には、この地の名産で、たくさん作って江戸の神田へ出す、と書かれています。タネとシャリの間にワサビを塗る江戸前の握りが考え出されたのと、ちょうど同じころ。幕府にも献上され、明治の後期には日本有数の産地になりました。
魚河岸は日本橋から築地、豊洲へ

佃村の漁師たちが移り住んだのが、隅田川の河口の佃島。いまの中央区佃のあたりです。この島の名から生まれた東京の名産が佃煮。塩ゆでや塩漬けで魚を保存するのが当たり前だったところへ、紀州から伝わったたまり醤油などで濃く煮付け、日持ちをよくしました。白魚の佃煮は春のもの。白魚
江戸の魚河岸の取引は、いまでは考えられない順番でした。問屋は荷主から魚を買い取ると、値段を決めずに仲買人へ渡す。仲買人は小売商に売らせ、市が終わると問屋に集まって、その日の売れ行きを持ち寄る。値段はそこで、話し合いで決まりました。売ったあとで、卸値が決まったのです。
日本橋の魚河岸は、大正12年(1923年)9月の関東大震災ですべてを焼かれ、長い歴史を閉じました。震災の直後は芝浦の仮設市場へ。同じ年の12月には、海軍省から借りた築地の土地に移ります。これが築地市場の始まりです。昭和10年(1935年)2月、広さ約23万平方メートルの中央卸売市場が築地に開設されました。荷は旧汐留駅からの引き込み線を貨物列車で、隅田川の桟橋からは船で運び込む。長い貨物列車を受け止めるために、建物は扇形に建てられました。

豊洲市場には午前5時から一般の人も入れて、水産や青果のセリを見学できます。マグロのせりを見学者デッキから見るには事前の申し込みが要り、抽選です。マグロ
東京都での呼び名
| 呼び名 | 一般には | 出典での土地の書き方 |
|---|---|---|
| メジ(メジマグロ) | クロマグロ(本マグロ)小型 | 千葉・東京・神奈川、山形県鶴岡市、富山県高岡市 |
| バチ | メバチ(メバチマグロ) | 宮城県仙台、千葉県銚子、東京、神奈川県三崎、愛知県豊橋、高知 |
| ダルマ/ダルマシビ | メバチ(メバチマグロ)全長1m以下の若魚 | 東京、埼玉、千葉、群馬、静岡、三重、和歌山県太地 |
| トンボ | ビンナガ(ビンチョウマグロ) | 神奈川県、東京都、三重県、和歌山県、高知県室戸 |
| ワカシ→ワカナ→ワカナゴ→イナダ | ブリ出世魚。ワカナゴ10〜15cm、イナダ30〜40cm | 東京 |
| マサ | ヒラマサ市場などでも | 東京 |
| アオブリ | ヒラマサ | 東京都新島・神津島・三宅島・八丈島 |
| ソゲ→オオソゲ→ヒラメ | ヒラメ1kg以下をソゲ、2kgくらいまでを大ソゲ、それ以上をヒラメ | 関東(千葉県、東京都、神奈川県) |
| シオッコ(汐っ子)/ショッコ | カンパチ若魚。出世魚としての呼び名 | 千葉県外房、東京、相模湾 |
| ショゴ(汐子) | カンパチ若魚 | 東京都神津島・三宅島・八丈島 |
| ホンカンパチ | カンパチ | 東京都伊豆諸島・小笠原 |
| ジミ | ホシガレイ(星鰈)『河岸の魚』(1979) | 東京都(旧築地市場) |
| キンメ | キンメダイ | 千葉県銚子、東京、神奈川県三崎 |
| アカムツ | ノドグロ標準和名 | 千葉県金谷、東京都、神奈川県、富山県魚津、三重県志摩市、鹿児島県種子島 |
| ホンサワラ(本さわら) | サワラ他のサワラ類と分けて | 東京都北区、島根県東部 |
| オオカミ | シマアジ超大型魚の呼び名 | 東京都(東京市場・伊豆大島・八丈島) |
| シマイサギ | シマアジ幼魚。金色の縦縞が目立つため | 東京都、神奈川県三崎、新潟県寺泊 |
| ヌクモメ | シマアジ小型魚 | 東京都小笠原 |
| バケシマ | シマアジ大型魚 | 東京都八丈島 |
| コッパ→セイゴ→フッコ→スズキ→オオタロウ | スズキ『さかな異名抄』。オオタロウは1mにもなる老大魚 | 東京近郊 |
| マメアジ(豆鯵) | アジ | 東京都、神奈川県など日本各地 |
| カスゴ(春日子) | 春子(かすご)小型の赤いタイ科 | 東京(魚河岸) |
| オオッパナ | チダイ(花鯛)大型の雄 | 東京 |
| シラギス | キス | 東京、大阪、有明海 |
| マギス | キス | 東京 |
| ジャコ | コハダ東京では4cmくらい、高知では6cmくらいのもの | 東京、高知県浦戸 |
| ヒラサバ(平さば)/ホンサバ(本サバ) | マサバ(真鯖)ゴマサバと区別して | 東京の市場など日本各地 |
| ヨシナガサヨリ(吉永さより) | サヨリしゃれ | 東京都内などの市場 |
| シラス(白魚) | 生しらすカタクチイワシの稚魚 | 東京都、神奈川県、富山県、和歌山県 |
| タチノウオ | 太刀魚 | 東京、福岡県大川市、有明海 |
| シンイカ(新いか) | スミイカ(コウイカ)初夏から秋にとれる当歳の小イカ。 | 東京都・千葉県・神奈川県・兵庫県明石など |
| バライカ | スルメイカ春から初夏の小振りのもの。 | 新潟県佐渡・東京都内の市場 |
| マルイカ(丸烏賊) | ケンサキイカ | 相模湾・東京湾の沿岸 |
| ボタンエビ | ぼたんえび(トヤマエビ/ボタンエビ)トヤマエビの一般的な呼び名。 | 北海道・新潟県糸魚川市・東京都など関東周辺 |
| ケミガワ(検見川) | 赤貝千葉県検見川がアカガイの集積地だったことから。 | 東京都 |
| アオヤギ(青柳) | 青柳 | 東京都(築地などの市場) |
| オハマ | ハマグリ東京の婦人言葉 | 東京 |
| バチハマ(場違ハマグリ) | チョウセンハマグリ内湾ではない外洋のもの | 東京の市場 |
| トリッケ | トリガイ | 東京都葛西 |
| アオツブ(青ツブ) | 青つぶ(ヒメエゾボラ) | 東京都・青森県・北海道など |
| ハカリメ(秤目) | 穴子体側に並ぶ白い点が秤の目盛りのように見えることから。 | 東京都・神奈川県三崎・江ノ島 |
| ホンアナゴ(本アナゴ) | 穴子 | 東京都・関東・愛媛県宇和島 |
| 鉄砲巻き | かんぴょう巻 | 東京(江戸前) |
| きゅうり巻き | かっぱ巻 | 東京・大阪(元祖の店の呼び名) |
東京都の食べ方・名産
- カツオ東京文化9年(1812年)旧暦3月25日、江戸に初鰹が17本入りました。6本は将軍家へ、1本は料理屋の八百善へ。魚屋から1本3両で買い取って、芝居小屋でふるまったのが三代目中村歌右衛門です。
- カツオ東京カツオは足が早い。だから1尾(マル)ではなく、半身や4分の1で仕入れる店もあります。皮の硬い部分を取り、腹と背に分けて血合いや筋を除き、切り付けた身に隠し包丁を入れる。
- マグロ東京天保3年(1832年)の春、マグロが大漁で日本橋の魚河岸にあふれました。滝沢馬琴の日記には、三尺のマグロが二百文とあります。
- マグロ東京赤身の最高級は「背ナカ」。5〜10kg前後の塊を、3〜5日に1回、同じ仲卸から仕入れる店もあります。産地は季節で移り、冬は津軽海峡、春は壱岐や佐渡、夏は紀州勝浦や銚子、秋は塩釜。
- マグロ東京マグロが初めて寿司ダネになったのは江戸後期。天保年間(1830〜1844年)に、江戸・馬喰町の「恵比寿鮨」が使ったのが最初だという話が残っています。
- ネギトロ東京ネギトロ巻きが生まれたのは1964年、最初の東京オリンピックの年です。発祥の店は、大正13年(1924)創業、浅草に本店がある「金太楼鮨」。三ノ輪の店で、鉄火巻きに使う中落ちやすき身にネギを加えてみたら、マグロの脂っぽさが消えた。それを客に出したら評判になり、本店の品書きに載りました。
- ネギトロ東京2026年には、東京や埼玉のスーパー「東武ストア」がネギトロとマンゴー、キュウリを巻いたのり巻きを売り出しました。6月下旬に一部の店で始め、8月には40店以上に広げています。水産物の値上がりのなかで、売値を抑えながら見栄えのする品を、という発想からです。
- トロ東京マグロを刺身で食べるようになったのは江戸時代後期で、それまでは汁や鍋にしていました。代表が「ねぎま鍋」。当時一番安かった脂の多い部分を、白ねぎと煮たものです。
- ホウボウ東京谷崎潤一郎が振り返る子どものころの東京の食卓では、魚はたいてい煮つけ。焼くのは蒸し鰈、ホウボウ、鰯、飛魚くらいでした。東京のホウボウは、焼き魚の側だったわけです。
- イサキ東京伊豆諸島では、大島から三宅島までの北の島々が主な漁場。桜が散るころから初夏にかけて、よく釣れ始めます。島の郷土料理は、ぶつ切りのイサキでだしをとり、アシタバを浮かべた澄まし汁。
- ノドグロ東京築地の「つきぢ神楽寿司」は、のどぐろを「炙り握り」で出します。注文ごとに皮目を直火で炙る。香ばしくなった皮が身の旨みを引き出し、口当たりのいい温度でシャリと合わさります。
- サワラ東京2013年の10月、11月には東京湾産のサワラが続けて入り、どれも脂がのっていました。皮目をあぶると、皮の下から脂がしみ出して粒が踊るのが見える。冷めないうちに握って、すぐ口へ。表面がとろりととろけ、あぶった香りが鼻に抜けます。
- 白魚東京「月もおぼろに白魚の篝もかすむ春の宵」。河竹黙阿弥の歌舞伎『三人吉三廓初買』で、お嬢吉三が口にする名せりふです。この篝火こそ白魚漁の火。春、産卵のために大川(隅田川の河口から千住大橋あたり)へ集まる白魚を、火をかかげてすくっていました。
- 白魚東京江戸での漁の盛りは、冬から春の佃島の沖。夜に篝火を焚いて魚を寄せ、四つ手網ですくい上げた。歌川広重の『名所江戸百景』「永代橋佃しま」には、その白魚舟が描かれています。同じ百景の「八ツ見のはし」、いまの日本橋の一石橋あたりにも白魚舟がいる。東京駅の北で、白魚をとっていたわけです。江戸前の白魚は、昭和の初めまでとれていました。
- スズキ東京東京湾などでは、秋に深場へ移るスズキを「落ちスズキ」と呼びます。産卵を控えて真子を持つので、「腹太スズキ」とも。
- スズキ東京人形町「㐂寿司」が寿司ダネにするのは、フッコより少し大きな型。これより大きくなると、身が荒れておいしくない。カレイより淡白で身質が柔らかく、噛むうちに鯛に似た甘みが出てきます。
- タイ東京人形町「㐂寿司」では、朝仕入れたタイをすぐに神経〆にして持ち帰っておろし、皮を引いて1日ねかせます。おろし立ての身は「活かって」いて、寿司ダネには向かない。食べ頃は翌日の昼以降です。
- アジ東京塩を振って置くのは、わずか数分。人形町「㐂寿司」の四代目は、表面に水分が浮いた頃合いで、もう酢にくぐらせます。塩は余分な水分と雑味を抜くためのもの。冷蔵技術が進んだいまは、生でも食べられるからです。同じ酢〆でも、江戸時代とは塩や酢の時間が目に見えて違います。
- イワシ東京イワシは、注文を受けてから腹を開く店もあります。それまでは氷を入れた塩水ごと容器に入れ、しっかり冷やし込んでおく。開いたら塩をあてて10分ほど。ため水で塩を流し、布巾で水気をとります。少量の醤油を加えた酢にくぐらせ、飾り包丁を入れて握る。
- 春子(かすご)東京人形町の老舗では、15cmほどの小鯛に塩を10分、酢と砂糖を合わせた汁にくぐらせ、昆布で1時間半ほど締める。身が薄く、締めると縮んでしまうので、海老のすり身を入れた甘いおぼろを身とシャリのあいだにかませて握ります。脂はのっていなくても、軽やかな酸味とふくよかなうま味が合わさる一かんです。
- サバ東京しめさばの仕込みの一例。三枚におろしたサバに、魚体が見えなくなるほどたっぷり塩をあて、約2時間(身の具合で1時間半)置きます。身が柔らかいので、塩は流水ではなく、ボウルにためた水で抜く。それから赤酢と白酢に醤油を加えた酢に、約1時間。昼に漬けたものを、夜から使います。
- サンマ東京落語「目黒のさんま」は、鷹狩りに出た殿様が、目黒の茶店で庶民の焼いたサンマを食べ、その味が忘れられなくなる話です。
- シャコ東京湾浜ゆでしたシャコの爪(捕脚)から、大豆ほどの身をむき出したのが「しゃこ爪」。軍艦巻きにすることもありますが、出す店はそう多くありません。
- 青柳東京江戸前を代表する寿司ダネで、東京湾ではいまもとれています。伝統の仕込みは、鍋にむき身と塩を入れてかき混ぜながら火を通し、手を入れていられないほど熱くなったところで氷水に落とす。水気をよく拭いて開き、握ります。東京湾のものは赤みが強く、味も濃い。春に江戸前をひとつだけ選ぶならこれ、と言いたくなる一貫です。
- 青柳東京東京で「かき揚げ」といえば、一に小柱、二に小エビ(シバエビ)。貝らしい風味と甘みがかき揚げのなかで主張して、江戸前天ぷらでは主役級です。
- 青柳東京東京の老舗そば屋には「あられそば」があります。かけそばに小柱を散らしたもの。天保8年から幕末にかけて書かれた『守貞謾稿』にも「ばかと云う貝の柱をそばの上に加うを云う」とあり、いまではそば屋の品書きでいちばん高い品のひとつです。
- 青柳東京深川めしも、初めはアサリではなくバカガイで作っていました。深川にはバカガイの身をむく「むきみ女」がいて、歌川国芳が浮世絵に描いています。東京湾の隅田川河口や品川、羽田でたくさんとれたからこそ、東京はいまもバカガイの一大消費地です。
- ハマグリ東京「煮蛤ちょうだい」。ひと通り食べたあとにこう声がかかると、この人は本当に鮨が好きなんだなと嬉しくなる。人形町「㐂寿司」の四代目、油井一浩さんの言葉です。昔は当たり前の種だった蛤も、いまは仕込みに手間のかかる一貫になりました。
- ハマグリ東京江戸湾は、かつて蛤や浅利の宝庫でした。なかでも最上等は、江戸湾で揚がるハマグリでした。いまの江東区には「深川蛤町」という町名まであった。蛤を味噌で煮てご飯にかける「深川飯」も、この深川の名を冠した名物です。
- つぶ貝東京八王子の鮨忠 第一元八支店のように、真つぶを握るようになった店もあります。それでも、握りで出す店はいまも少数派。
- イクラ東京銀座久兵衛の初代は、ウニの軍艦巻きを考えたあと、イクラをはじめ握るのが難しいタネを、次々に軍艦巻きにしていきました。
- 穴子東京穴子を看板にする店の仕事は、こうです。背開きにしたら、何度も洗ってぬめりを落とす。それをたっぷりの煮汁で、身が崩れないように煮上げる。ふわっ、とろっとした食感を出せるかどうかは、火加減ひとつにかかっています。
- 穴子東京八王子には、穴子を2時間ほど煮る古い江戸前の店があります。それだけ煮ても、皮はしっかり残る。炙って出すことを計算した煮方で、出前で時間がたっても味が落ちません。
- 玉子東京早稲田の八幡鮨に残る昔ながらの玉子は、鯛と海老を分厚い切り身のまま擂鉢でつぶすところから始まります。そこへ卵と砂糖・塩・味醂を混ぜ、近くを通れば消えてしまいそうなほどのトロ火で焼く。厚く焼くと、仕込みから2時間ほどかかります。
- うなぎ東京寿司の世界でおなじみの「江戸前」は、もとはウナギの言葉でした。大川(隅田川)や江戸川、荒川の河口の干潟でとれるウナギが「江戸前」。江戸時代の後期にはそれだけでは足りず、利根川や手賀沼のウナギも江戸の町で食べられていて、こちらは「旅ウナギ」と呼ばれた。旅ウナギに対しての江戸前、というわけです。江戸湾の干拓でウナギがたくさんとれ、蒲焼が大流行して『江戸前大蒲焼番付』という本まで出ました。
- 軍艦巻き東京軍艦巻きが生まれたのは1941年ごろ。海運業の常連客が北海道から持ってきたウニを、寿司にできないかと頼んだのがきっかけです。応えたのは銀座久兵衛の初代・今田壽治。海苔で囲ったシャリにウニをのせる「軍艦巻き」を考え出しました。握ると崩れるウニは、それまで寿司ダネとしてはタブーだったのです。続いてイクラや青柳の小柱なども、次々に軍艦巻きになりました。
- 軍艦巻き東京銀座久兵衛では、ウニとシャリの水分で海苔が湿らないよう、客が食べるまでの時間を計算して直前に握り、手から手へ渡します。
- かんぴょう巻東京江戸前で「海苔巻き」と言えば、干瓢巻きのこと。細くても太くても「の」の字に巻くのが原則で、芯の干瓢がくたっとしないように巻き上げるのが職人の腕の見せどころでした。
- かっぱ巻東京かっぱ巻きは、戦後生まれの巻物です。食糧難でタネが自由に手に入らなかったころ、東京・早稲田の「八幡鮨」で、まだ10代だった四代目の安井弘さんが「きゅうりでも巻いてみようか」と思いつく。鉄火巻きやかんぴょう巻きの代わりに生のきゅうりを巻いてみたら、これがなかなかうまい。それが始まりです。
- 納豆巻東京江戸っ子は大の納豆好き。江戸詰めの和歌山藩士が書いた『江戸自慢』には「からすの鳴かぬ日はあれど、納豆売りの来ぬ日はなし」。「納豆と蜆に朝寝おこされる」という川柳のとおり、早朝の下町にやって来るのが納豆売りとシジミ売りでした。
- お新香巻東京東京に出回りはじめたころ、新香巻きは江戸っ子にさんざんな言われようでした。江戸前の海苔巻きは、焼き海苔の香りを楽しむもの。そこへ沢庵の強いにおいでは、せっかくの海苔の香りが台なし。「こんなものは下種の食べ物だ」とまで酷評されたのです。
- 鉄火巻東京マグロの鉄火巻が東京の寿司屋で生まれたのは、江戸の末から明治のはじめ。日本大百科全書によれば、天保(1830〜1844)の中ごろより前は、寿司にマグロを使っていません。「鉄火巻き」という名前が見えるのも明治からです。もとはマグロの端材を生かしたものでした。海苔の香りとマグロの旨み、そこへワサビの刺激。握りとはまた違う味が江戸っ子に受けて、全国へ広がっていきます。
- ちらし寿司東京銀座の寿司店が考えた新顔が「づけあなちらし」。シャリにイカ、タコ、エビ、玉子焼き、イクラを細かく切って混ぜ込み、上にマグロのヅケと煮穴子、そしてウズラの生卵をのせる。江戸前と五目のいいとこ取りです。
- ちらし寿司東京いまは節分といえば恵方巻ですが、1960年代前半の民俗調査などで節分に寿司を食べる記録として出てくるのは、東京では五目ちらしでした。
- いなり寿司東京いちばん古い記録は、江戸時代の末に書かれた『守貞謾稿』。天保の末年(1844年ごろ)、江戸で油揚げの片側を裂いて袋にし、きのこや干瓢を刻んで混ぜた飯を詰めて、売り歩く者が現れた。名前は「稲荷鮨」、あるいは「篠田鮨」。値段は「最も賤価鮨なり」、つまりいちばん安い寿司でした。尾張の名古屋あたりでは、それより前からあった、とも書かれています。
東京都の寿司ばなし
このページの出典(92件)
- 島を代表する郷土料理(島寿司)(八丈島観光協会)2026-09-29 閲覧
- 市場の歴史(一般社団法人 豊洲市場協会(ザ・豊洲市場))2026-09-29 閲覧
- 島寿司|地域資源紹介記事|TOKYOイチオシナビ(東京都(TOKYOイチオシナビ))2026-09-29 閲覧
- 島ずし 東京都|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 島ずし(2)【すしトリビア(8)】(日比野光敏)|すしラボ(ミツカン)2026-09-30 閲覧
- 奥多摩ワサビ|江戸東京野菜について(JA東京中央会)2026-09-29 閲覧
- 奥多摩わさび|地域資源紹介記事|TOKYOイチオシナビ(東京都(TOKYOイチオシナビ))2026-09-29 閲覧
- 佃煮 東京都|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 早朝セリ見学(一般社団法人 豊洲市場協会(ザ・豊洲市場))2026-09-29 閲覧
- 早朝のマグロせり見学について(東京都中央卸売市場)2026-09-29 閲覧
- クロマグロ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- メバチマグロ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ビンナガマグロ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ブリ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ヒラマサ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ヒラマサ - Wikipedia(Wikipedia)2026-09-25 閲覧
- ヒラメ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- カンパチ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ホシガレイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- キンメダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- アカムツ(ノドグロ)|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- サワラ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- シマアジ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- シマアジ - Wikipedia(Wikipedia)2026-09-25 閲覧
- スズキ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マアジ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- チダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 春日子の一枚づけ(1327貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- シロギス|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- コノシロ(コハダ)|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マサバ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- サヨリ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- カタクチイワシ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- タチウオ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- コウイカ(ハリイカ)|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- スルメイカ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ケンサキイカ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- トヤマエビ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
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- バカガイ(アオヤギ)|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
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- 稲荷鮨とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』、平凡社『改訂新版 世界大百科事典』ほか)(コトバンク)2026-09-30 閲覧