滋賀県
琵琶湖があってこその食文化。湖でとれるフナ、ウグイ、ホンモロコ、アユを、周りの水田の米で発酵させる、なれずしの土地です。海のない県にも、若狭や敦賀からサバが届きました。
北は塩辛く、南は甘め
峠を越えてきたサバ
都に近い湖南
雨のあとのビワマス
秋、雨で川の水かさが増すと、1〜2kgにもなるビワマスが産卵のために群れで川をのぼってきます。昔はそれを手づかみで捕まえ、米の上に丸ごとのせて大鍋で炊いた。雨の後にのぼってくるから「あめのいおご飯」。家族や親戚が集まって楽しむ、旬の味です。
滋賀県の食べ方・名産
- 鮎滋賀滋賀県は、なれ寿司の宝庫。湖産鮎のなれ寿司は、フナに次いでよく作られます。ふなずしより乳酸発酵が浅く、食べやすい。長浜市などの「こけらずし」は、塩漬けの鮎を洗い、しょうがとにんじんのせん切り、ご飯と麹を重ねて1か月ほど漬けたもの。ほんのり甘酸っぱくて、なれ寿司より万人向けの味です。
- タイ滋賀滋賀県日野町では、5月3日の日野祭に、各家庭で「鯛素麺」を作ります。マダイの煮つけの煮汁で、素麺を食べるのです。
- かんぴょう巻滋賀江戸時代、干瓢は近江の水口(いまの滋賀県甲賀市)の名物でした。歌川広重の『東海道五拾三次』の水口宿は、題して「名物干瓢」。白い帯のような干瓢を干す人たちが描かれています。
- お新香巻滋賀さらに古い祖先を名のる漬物もあります。比叡山に伝わる「定心房」は、平安時代の良源が考えたと伝わる、丸干しの大根を塩と藁で重ね漬けにしたもの。これを沢庵の始まりとする見方もあります。
- 鮒寿司滋賀奈良時代の長屋王家木簡や二条大路木簡に、もう「鮒鮨」「鮨鮒」の字が見えます。平安時代の『延喜式』では、近江国の筑摩厨(いまの米原市)から「鮨鮒」が納められていて、米と塩で作っていたことが分かる。豊臣秀吉が朝鮮に兵を出したときには、陣中見舞いに鮒寿司が届けられ、秀吉は返礼に朱印を送った、と記録に残っています。
- 鮒寿司滋賀鮒鮨は夏の季語。蕪村に「鮒鮨や彦根の城に雲かかる」の句があります。
- 鮒寿司滋賀春先にとったニゴロブナを塩漬けにし、夏の土用のころに洗って、ご飯に漬け込む。正月のころには酸味が増し、骨まで柔らかくなって食べごろです。フナは腹を開かず、口から先を曲げた金属の棒などを差し入れて内臓をかき出す。卵は残したまま。塩漬けは「塩切り」、ご飯に漬け直すのは「本漬け」と呼びます。1年から2、3年、飯に漬けておくこともある。
- 鮒寿司滋賀江戸時代の近江では、春にとれる鮒のほかに、秋から冬の「紅葉鮒」でも鮒寿司を作っていました。ところが紅葉鮒の寿司は、発酵を進める夏の暑さを越えないぶん、なかなか熟れない。しだいに作られなくなり、いまの鮒寿司は春の鮒で漬けます。
- 鮒寿司滋賀高島の「喜多品老舗」の始まりは、江戸初期の元和5年(1619年)。伊勢から大溝藩主として勝野(高島市)に入った分部光信の賄い方、山形屋九右衛門が作った鮒寿司です。いまも天然のニゴロブナを木桶で仕込む。基本は「千日漬け(百匁百貫千日)」で、春に揚がった鮒を2年塩漬けにし、飯に漬け替えてさらに1年。蔵に江戸時代から棲みつく乳酸菌が、発酵を受け持ちます。
- 鮒寿司滋賀発酵で生まれる乳酸が、骨を柔らかくする。だから鮒寿司は骨まで食べられます。増えた乳酸菌はお腹の調子も整える。滋賀では昔から、お腹が痛いときや体の調子が悪いときに、薬の代わりに鮒寿司を食べてきました。滋養をつける食べものでもあります。
- 鮒寿司滋賀薄く切って皿に盛り、そのまま酒の肴にしても、お茶漬けにしてもいい。切り口に見える卵の部分は、チーズのような香りと食感です。ハレの日の祝いの席や、正月など人が集まる日に出てきます。
- 鮒寿司滋賀滋賀のなれずしは、フナだけではありません。ウグイ、ハス、モロコ、アユ、ハイ、ビワマス、コイ、ドジョウ。そのなかの代表が鮒寿司で、五穀豊穣を願う神社の祭礼に供えられることも多い。平成10年(1998年)には、滋賀のなれずしが県の無形民俗文化財「滋賀の食文化財」に選ばれました。
- 鮒寿司滋賀主役のニゴロブナは琵琶湖だけにすむフナで、昔から鮒寿司の材料でした。珍重されるのは、卵をたっぷり抱えたメス。4〜6月に内湖や入江のヨシ帯で卵を産み、生まれて2〜3年で全長25〜35cmになります。ゲンゴロウブナで作る鮒寿司もあります。
- 鮒寿司滋賀そのニゴロブナが減っています。漁獲量は昭和40年ごろに500トンほどあったものが、平成元年に178トン、平成9年には18トン。外来魚、産卵場のヨシ帯の減少、瀬田川洗堰の操作で産卵期に湖の水位が急に下がり、稚魚のすむヨシ帯が干上がることが原因に挙げられています。県は稚魚の放流やヨシ帯づくりを続けていますが、令和元年の漁獲量は36トン。鮒寿司に向く2〜3歳、300gほどの魚が少ないのも悩みです。
- 鮒寿司滋賀かつては家ごとに漬けた保存食でしたが、ニゴロブナが減って、漬ける家も減ってきました。いま家で作るなら、魚屋や漁師から塩漬けのフナを買って、本漬けだけを自分で行う家が多い。桶に水を張る昔ながらの漬け方のほかに、ポリ袋で密封する手軽な漬け方も広まり、新しく手作りを始める人も増えています。鮒寿司の飯(いい)を使ったお菓子まで出てきました。
- 鮒寿司滋賀一から漬けるなら、20リットルの桶一つにフナ10kg(生の重さ)、米4〜8升、塩切り用の塩10kg。フナはうろこ、エラを取り、卵を包む膜を傷つけないよう内臓を抜いて、苦玉(胆嚢)と浮き袋も取る。口と腹に塩を詰め、全体に塩をまぶして桶に並べ、重石をして2か月以上。本漬けでは、炊いたご飯に塩(1升に40〜80g。入れない家も多い)を混ぜて冷まし、手水には酒か酢を使う。塩切りのフナを洗って水を切り、ご飯、フナ、ご飯と重ねて空気を押し出す。重石は中身の倍が目安。漬け床が締まったら桶に水を張り、半年以上おけば骨まで柔らかくなります。暑すぎると発酵が進みすぎるので、桶を冷やします。
滋賀県の寿司ばなし
このページの出典(16件)
- 近畿地方 滋賀県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-30 閲覧
- アユのなれずし(1202貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 鮎のこけらずし(1555貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- かんぴょう|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-25 閲覧
- かんぴょうの基礎知識|栃木県干瓢商業協同組合(栃木県干瓢商業協同組合)2026-09-25 閲覧
- 沢庵漬け|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-25 閲覧
- 鮨(すし)とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』、平凡社『普及版 字通』『世界大百科事典』)(コトバンク)2026-10-04 閲覧
- 鮒寿司|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- 鮒鮨とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- ふなずし|滋賀県ホームページ(滋賀県)2026-09-29 閲覧
- ふなずし 滋賀県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 紅葉鮒とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- 喜多品老舗の歴史|四〇〇年鮒寿し 総本家 喜多品老舗(喜多品老舗)2026-09-29 閲覧
- 四〇〇年鮒寿し 総本家 喜多品老舗|滋賀県観光情報(びわこビジターズビューロー)2026-09-29 閲覧
- ニゴロブナ|滋賀県ホームページ(滋賀県)2026-09-29 閲覧