寿司のデータベース

品書き / 赤身

ネギトロ

ねぎとろ/Minced tuna with scallion (Negitoro)

マグロの中落ちやすき身を叩いて、ネギと合わせたもの。1964年、浅草の寿司屋で偶然から生まれた、意外と新しいタネです。よく聞く「語源は『ねぎ取る』」には、はっきり否定する日本語学者もいる。スーパーのねぎとろには、また別の歴史があります。

マグロの中落ちと海苔(鳥取県米子)
マグロの中落ちと海苔(鳥取県米子)写真: ノボホショコロトソ(CC BY 4.0)
ネギトロの軍艦巻き
ネギトロの軍艦巻き写真: Lombroso(Public domain)

「ねぎ取る」は本当か

「ネギトロの語源は『ねぎ取る』。骨のまわりの身をこそげ取るから」。テレビでも紹介されて広まったこの話は、説が割れています。市場魚貝類図鑑の説明では、江戸では骨についた身をかき取ることを「ねくとる」「ねきとる」と言い、この「ねきとる」が「ねぎとろ」に変わった。一方、日本語学者の飯間浩明さんは「ねぎ取る」説をはっきり否定しています。Wikipediaによれば、「ねぎ取る」という言葉が使われた例は、この説を唱える文章のほかに見当たらず、説を書いたいちばん古い文献は2007年7月18日のメルマガ。建築用語の「根切り」と結びつけた話は、2017年のテレビ番組からです。
では本当の由来は何か。いちばん素直なのは、ネギとマグロのトロを合わせたから。もうひとつ、発祥の店の社長は、当時浅草で人気だったとろろ麦飯の店「麦とろ」にあやかって「ねぎとろ」にした、と語っています。

1964年、浅草の偶然

東京ネギトロ巻きが生まれたのは1964年、最初の東京オリンピックの年です。発祥の店は、大正13年(1924)創業、浅草に本店がある「金太楼鮨」。三ノ輪の店で、鉄火巻きに使う中落ちやすき身にネギを加えてみたら、マグロの脂っぽさが消えた。それを客に出したら評判になり、本店の品書きに載りました。
誕生の場面は、語る人によって少しずつ違います。賄いで食べていた手巻きから、という話。鉄火巻きの上に刻んだネギをうっかりばらまいてしまった、という当時の社長の証言。叩いたら歯ごたえがなくなって商品化をあきらめたマグロの筋を、麺類用に用意したネギの中に落としてしまった、という話。どれも「偶然」から始まっているのがおもしろい。
銀座の「鮨さゝ木」が考えたという説もあります。
はじめは東京のごく少数の店で、頼めば出してくれる裏メニューでした。マグロとネギと海苔の相性のよさで女性客を中心に人気が出て、1970年代には海苔の広告に手巻き寿司の具として「ネギトロ」の文字が登場。巻き寿司の人気調べでは、1981年に全国7位だったのが、1992年には全国1位になります。
1980年代には、握りに使えない切れ端のトロやすき身を香味野菜と合わせた新顔が次々に出ました。三つ葉と合わせた「みつとろ」、山芋と合わせた「やまとろ」。生き残ったのがネギトロです。

中落ちと、スーパーのねぎとろ

使うのは、マグロの中骨に残る「中落ち」や、皮の裏に残った身をすき取った「すき身」。これをネギなどと一緒に叩いて細かくします。狭い意味のトロ(腹の身)でなくても、脂の多い部位はトロと呼ばれることがあります。
そもそも脂が多くて日持ちしないトロは、昔は捨てられていました。昭和に入り、運ぶ技術と冷やす技術が進んで、ようやくトロを食べるのが当たり前になった。その余りものの身から生まれたのが、ネギトロです。
群馬スーパーのネギトロには、別の歴史があります。群馬県渋川市の赤城水産が、刺身にできずに捨てられていた部分を生かして「ねぎとろ」の製造販売を始めたのが1987年。翌1988年には東京都中央卸売市場で売り出しました。Wikipediaは、中落ちやすき身をミンチにして油脂を加えた商品で、築地で一大ブームになったと説明しています。ネギの入っていないネギトロがあるのは、このためです。
トロを使わない量産品には「ネギトロとは名ばかり」「植物性油脂を入れているのに表示がない」と批判も出ました。その後、赤身に油脂を加える製法でも、マグロから抽出した油を使ってDHAやEPAを多く含む商品が作られ、消費はさらに広がりました。

トロたく、スパイシー・ツナ、マンゴー

北海道ネギトロとたくあんを芯にして巻く「トロたく」は、北海道の寿司屋が考えた、という話が伝わっています。
海の向こうの親戚が、スパイシー・ツナ・ロール。チリソースとマヨネーズで味をつけた、ネギの入らないマグロのたたきをシャリで巻き、海苔は内側に巻き込む裏巻き。1980年代にロサンゼルスの「マネキレストラン」で生まれ、アメリカじゅうに広まりました。
東京2026年には、東京や埼玉のスーパー「東武ストア」がネギトロとマンゴー、キュウリを巻いたのり巻きを売り出しました。6月下旬に一部の店で始め、8月には40店以上に広げています。水産物の値上がりのなかで、売値を抑えながら見栄えのする品を、という発想からです。
回転寿司では、品名に「ねぎとろ」を使わないチェーンもあります。くら寿司では「ねぎまぐろ」が110円、「ねぎまぐろ軍艦」が120円、「ねぎまぐろ鉄火」が130円。はま寿司では「まぐろたたき軍艦」が110円、「まぐろたたき巻」が176円です(いずれも税込、2026年9月確認)。

台所のネギトロ

ネギトロ丼(国立国会図書館の食堂)
ネギトロ丼(国立国会図書館の食堂)写真: 毒島みるく(CC0)
家で作るなら、中落ちや皮の裏の身をすき取り、刻んだ長ねぎやあさつきと一緒に包丁で叩くだけ。軍艦や細巻きにしてもいいし、シャリか白いご飯にたっぷりのせればネギトロ丼です。ネギトロ丼は「中落ち丼」とも呼ばれます。
パックのネギトロを買うときは、原材料の表示を見てみてください。キハダやメバチ、ビンナガなどの赤身に、植物油脂やショートニング、調味料などを加えた量産品もあります。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • くら寿司「ねぎまぐろ」(一皿110円からの店)110円2026-09-25 時点
  • くら寿司「ねぎまぐろ軍艦」(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点
  • くら寿司「ねぎまぐろ鉄火」(一皿110円からの店)130円2026-09-25 時点
  • はま寿司「まぐろたたき軍艦」110円2026-09-25 時点
  • はま寿司「まぐろたたき巻」176円2026-09-25 時点
  • スシロー「ねぎまぐろ軍艦」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)120円2026-09-29 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「ねぎとろ巻」手巻1本(税込)550円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「ねぎとろ」細巻1本(税込)888円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「本鮪 ねぎとろ」1個(グランドメニュー、税込)547円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「ねぎとろ巻」(グランドメニュー、税込)660円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「ねぎトロ」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)220円2026-09-29 時点
  • 芦屋 波沙鮓「ねぎトロ」軍艦1貫(税込。本体価格1,000円)1,100円2026-09-30 時点
  • 芦屋 波沙鮓「ねぎトロ」細巻1本(税込。本体価格2,300円)2,530円2026-09-30 時点
  • 富山 蛇の目寿司「ねぎとろ巻」巻寿し1本(税込。その日の仕入れや季節で変わる)1,100円2026-09-30 時点

『江戸前の旬』では

読者の感想によれば、29巻ではネギトロのブレンドが、89巻では混ぜもののないネギトロが取り上げられます。

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出てきた土地

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