手こね寿司
てこねずし/Hand-mixed bonito sushi (Tekonezushi)
醤油だれに漬けたカツオやマグロの赤身を、シャリと合わせて青じそや海苔を散らした、三重の志摩の寿司です。漁の合間に船の上で、刺身とご飯を手でこねて食べたのが名前の由来。ただ、米が貴重だった土地の暮らしを見ると、もとは大漁の祝いのごちそうだった、という読み方もできます。
船の上の即席めしか、大漁の祝いか

三重ところが、船の上の即席めしという話には、突っ込みどころがあります。志摩では、昭和16年(1941年)4月に米の配給が始まるまで、米はハレの日にしか食べないものでした。明治の中ごろまでのカツオ漁は手漕ぎの船で沿岸や近海に出るだけで、とれたらすぐ港へ戻って水揚げしていたから、船で食事をとる必要もない。そこで出てくるのが、もとは大漁の祝いに船主が船員にふるまったハレの食事だった、という見方です。漁のかたちが変わって船の上で食べるようになり、陸ではハレのごちそうとして残った。船上の話は、由来が忘れられてから聞き取られたもの、というわけです。
三重地元の商工会が語る筋書きは、もっと人間くさい。忙しいのに、とれた魚にいちいち醤油をつけるのは面倒だ。まとめて醤油に漬けてしまえ。ご飯には日持ちするように酢を合わせて、全部混ぜれば即席の寿司になる。こうして魚とご飯と醤油を手でこねる寿司が生まれ、そういう寿司をみな「てこね」と呼ぶようになった。
手こね寿司は、ちらし寿司の一種です。なかでも三重の志摩地方の郷土料理として知られ、「伊勢手こね寿司」「志摩のてこね寿司」とも呼ばれる。「手ごね寿司」と書くこともあります。ここで話しているのは、志摩地方の南部で長く親しまれてきたものです。
カツオの国の寿司
三重三重はカツオの漁獲量が全国4位(令和元年)。熊野灘では一本釣りと曳き縄釣りがさかんで、マグロの養殖でも主要な産地です。新鮮な魚が手に入るから、生で食べる機会が多い。手こね寿司が根づいたのも、その流れの上です。
カツオやマグロの赤身を刺身に引き、醤油などのたれに漬け込む。飯切り(木の桶)に広げたシャリの上にそれを並べ、青じそや海苔を散らします。最近は、白身のタイで作る手こね寿司も出てきました。

三重農山漁村の郷土料理百選と、ふるさとおにぎり百選に選ばれています。令和7年度には、文化庁の「100年フード」の伝統部門(江戸時代から続く郷土の料理)に認定され、審査した有識者の評価がとくに高かった3件に贈られる「有識者特別賞」も受けました。
志摩で食べる、家で混ぜる
三重志摩の手こね寿司は、土地によって材料も作り方もさまざま。志摩市商工会は、市内の20軒の店を集めた「志摩のてこね寿司」のマップを作っています。伊勢・志摩を中心に、多くの料理店の品書きに並ぶ一品です。

三重手早く作れておいしいので、共働きの家や子育て中の家でも喜ばれます。人が集まる日には、家でも木桶を出して作り、宴会の席にも上がる。
4人分で、カツオ1/4身、米1と1/2カップ(240g)。米は昆布10cmを入れ、1割増しの水で炊き、沸く直前に昆布を取り出す。炊けたら砂糖大さじ3・酢大さじ4・塩小さじ1を合わせてシャリにし、冷ましておく。醤油大さじ5とみりん大さじ2を煮立てて冷まし、そぎ切りにしたカツオを5〜30分漬ける。時間はカツオの鮮度で加減します。シャリに漬け汁をふりかけてカツオをのせ、千切りの青じそ8枚、しょうが1かけ、海苔1/2枚を散らせばできあがり。
『江戸前の旬』では
読者の感想によれば、16巻でカツオの寿司を頼まれた旬が作るのが、手こね寿司。酒盗を使ったヅケ地に漬け、上にタタキと万能ネギをたっぷりのせます。45巻にも、カツオの手こね寿司が出てきます。
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このページの出典(8件)
- てこねずし 三重県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 【てこね寿司】が文化庁「100年フード」に認定!!(志摩市プレスリリース)(志摩市)2026-09-29 閲覧
- 手こね寿司|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- てこね寿司特集!志摩地方の郷土料理を楽しめる4店舗をご紹介|観光三重(三重県観光連盟)2026-10-09 閲覧
- 御食つ国の漁師めし“志摩のてこね寿司”が食べられるお店MAP(志摩市商工会)2026-09-29 閲覧
- 手こね寿司とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉プラス』)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- 江戸前の旬 16巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
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