寿司のデータベース

品書き / 郷土寿司

めはり寿司目張り寿司

めはりずし/Takana-wrapped rice ball (Meharizushi)

高菜の漬物の葉で、大きなおにぎりをくるりと包んだもの。熊野の山仕事や漁の合間に食べる弁当として広まりました。もとは麦飯をソフトボールほどに握ったもので、かぶりつくと目まで見開く、というのが名前の由来のひとつです。

熊野の駅弁「めはり寿司」
熊野の駅弁「めはり寿司」写真: NY066(CC BY-SA 3.0)

目を見張る、大きなおにぎり

名前の由来は三つ。大きなおにぎりに大口を開けてかぶりつくと、つられて目も見開くから。目を見張るほどおいしいから。そして、おにぎりに目張りをするように、葉ですっかり包み込むから。土地によっては千貼り寿司、大葉寿司、高菜寿司、芭蕉葉寿司とも呼びます。
和歌山漁業と林業の盛んな和歌山の南部で、忙しい漁や山仕事の合間に手早く食べられる弁当として広まりました。昔は麦飯を、ソフトボールほどの大きさに握った。米が貴重な時代で、白米より麦を多く入れたのです。一つで一食分のおにぎりを、崩れないよう高菜でくるんだのが始まりと見られます。いまは食べやすく、小さく握るのが主流です。
三重熊野市には、歌舞伎につながる話が残っています。『伊勢音頭恋寝刃』に登場する油屋お紺は、江戸中期、熊野の五郷町寺谷の庄屋の娘。遊女として伊勢へ旅立つ娘に、父は大好物の「たかなのにぎりずし」を持たせた。

外の葉から1枚ずつ摘む高菜

畑の高菜
畑の高菜写真: ‘Uncle Carl’ (カールおじさん).(CC BY-SA 3.0)
和歌山包む高菜は、冬から春先に収穫します。日当たりが悪くても育つので、平地の少ない紀南の山あいでさかんに作られてきました。新宮の高菜は葉が大きくやわらかい。紀州の高菜は、外側の葉から1枚ずつ摘んでいき、株は植えたままにして半年ほど収穫を続けます。この摘み方の葉で包むのが、めはり寿司の本流です。摘んだ葉は1〜2月に樽で塩漬けにする。だんだん茶色くなりますが、秋までもちます。
三重三重の熊野市で漬けるのは「赤大葉たかな」。添加物は使わず、塩とトウガラシだけで漬けます。にじみ出る紫色の汁は天然の色で、ピリッとした辛さも、この品種の持ち味です。昔は長く漬け込んで酸味の立った「べっこう漬」が中心でしたが、いまは塩分を控えた新漬けの青漬けに仕上げます。
三重三重ではたかな寿司とも呼び、炊きたてのご飯を、二杯酢で味をつけた高菜漬けで包む。添えるのはイワシのすぼし。熊野を歩く日の昼ごはんの定番です。東紀州にはめはり寿司を出す店が17店あり、2014年には店舗マップも作られました。
中に穴子を混ぜ込んだめはり寿司
中に穴子を混ぜ込んだめはり寿司写真: woinary from Osaka International Airport(CC BY-SA 2.0)
和歌山中のご飯は、白いままでもシャリでも、好みでかまいません。醤油をつけた焼き魚を入れることもあり、那智勝浦町の下里では、川でとれるシラウオを甘辛く煮てご飯に混ぜ込み、高菜で包んでいました。いまは刻んで醤油で味をつけた高菜の軸、カツオ節、梅干し、シラスと具もいろいろ。食べるときは酢醤油が普通ですが、マヨネーズと醤油で食べる人もいます。

春まなで包む村、十津川を母村と呼ぶ町

奈良奈良の下北山村には、高菜ではなく「下北春まな」の漬物で包む「まなめはり」があります。下北春まなは大和の伝統野菜で、作っているのは下北山村だけ。寒さの厳しい土地で育つので葉が肉厚で甘く、収穫できるのは2か月だけという、幻の野菜です。高菜の辛みがなく、形もやや小ぶり。同じ奈良でも、十津川のほうでは高菜のめはり寿司を食べます。
北海道遠く北海道の新十津川町でも、めはり寿司を食べます。この町は、明治22年8月の大水害で村の多くが水没した奈良の十津川村から、600戸2,489人が移り住んで開いた町。いまも十津川村を「母村」と呼んでいます。

新宮で握りたてを

和歌山新宮の「総本家めはりや」は1962年の創業で、めはり寿司を初めて商品にした店です。米は金芽米、高菜は和歌山県産の葉。店では作り置きをせず、注文を受けてから握ります。和歌山駅の近くにも店があります。
和歌山のめはり寿司の弁当
和歌山のめはり寿司の弁当写真: m-louis(CC BY-SA 2.0)
和歌山かつては新宮駅の駅弁「めはり寿し」がとりわけ有名でした。ゴマを混ぜたシャリを小さめの俵形に握った、列車の中で食べやすい作り。売っていた会社が撤退し、2017年の時点で和歌山県内の駅で買えるのは、紀伊勝浦駅のさんま寿司との詰め合わせ「紀の国」と、和歌山駅のものだけになりました。関西国際空港では「紀州めはりずし」として売られ、和歌山県の推薦優良土産品にもなっています。
和歌山家で作るなら、米2合に高菜の塩漬け5枚。高菜漬けは洗って水気をよく絞り、醤油大さじ1とみりん小さじ1/2を合わせた調味液をふって軽くもみ、しばらくなじませる。ご飯は普通に炊く。葉の軸はみじん切りに。葉を広げてご飯をのせ、刻んだ軸を芯に入れて、葉でくるみながら形を作ります。余った高菜漬けの芯は、細かく刻んで茶がゆにふりかけてもおいしい。

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