寿司のデータベース

品書き / 赤身

マグロ鮪

まぐろ/Tuna

寿司屋の「まぐろ」は、魚の名前というより、呼び名です。クロマグロ(本マグロ)、ミナミマグロ(インドマグロ)、メバチ、キハダ、ビンナガなどをひっくるめた総称です。クロマグロの赤身は、かすかな酸味にたっぷりの旨み。脂の多いトロのうち、大トロまで取れるのは一部の種類だけです。スーパーでただ「マグロ」とあれば、たいていはメバチのこと。

クロマグロ(太平洋クロマグロ)
クロマグロ(太平洋クロマグロ)写真: California Department of Fish and Game(Public domain)
天然インドマグロ(上)と天然本マグロ(下)の大トロ・中トロ・赤身
天然インドマグロ(上)と天然本マグロ(下)の大トロ・中トロ・赤身写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

クロマグロ(本マグロ)
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ミナミマグロ(インドマグロ)
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メバチ(メバチマグロ)
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キハダ(キハダマグロ)
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ビンナガ(ビンチョウマグロ)
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クロマグロの旬は冬、ミナミマグロは晩春〜夏、キハダは夏。同じ「まぐろ」でも、種類で旬はばらばらです。

旬 出回る時期

種類

クロマグロ(本マグロ)

別名 本マグロ、ホンマ、シビ

マグロ類でいちばん北まで回遊し、いちばん大きくなる種。赤身・中トロ・大トロと、脂の強さで呼び名が変わります。天然ものなら中トロ・大トロになるのは1尾の15パーセント前後。大トロはその5分の1前後しか取れない。

旬は冬。10kg以下の若魚「めじまぐろ」も、寒い時季が旬です。

関連することば 赤身

ミナミマグロ(インドマグロ)

別名 インドマグロ、ゴウシュウマグロ

揚がるのは南半球だけ。クロマグロと同じく大トロが取れる高級種です。「インドマグロ」の名は、かつてインド洋でたくさん取れたことから。近ごろはオーストラリアの養殖ものがよく目につきます。

北半球のマグロの旬は秋〜冬。ところがこちらは、晩春〜夏に旬を迎えます(天然もの)。

メバチ(メバチマグロ)

別名 バチ、メブト

大きく丸い、鉢のような目をしているから「メバチ」。漁獲・輸入量はクロマグロの5〜7倍もあり、「マグロの刺身」といえばまずこれです。中トロは取れても、大トロの部分は基本的に無い。

国内で取れるものは晩秋〜冬が旬。とはいえ冷凍が多いので、旬はあまり気にしなくていい。

キハダ(キハダマグロ)

別名 ハツ、イトシビ

鰭も体色も黄色いから「キハダ」。量も資源も、マグロ類でいちばん多い種です。高知・三重・九州などの産地に近い関西で、よく食べられてきました。味はあっさり、軽やか。

旬は一応、夏。ただ冷凍などもあって、はっきりしません。

ビンナガ(ビンチョウマグロ)

別名 びんちょう、トンボ、ビントロ

長い胸鰭を鬢(びん)に見立てた名前。マグロ類でいちばん安く、ツナ缶の原料にもなる魚です。それが、脂ののった時期のものを冷凍して「ビントロ」として売り出してからは、回転寿司の定番に。

旬は冬。

5億1030万円のマグロを握ると

競りの前にマグロを見定める買い手(2014年、築地市場)
競りの前にマグロを見定める買い手(2014年、築地市場)写真: Joe deSousa(CC0)
クロマグロ(本マグロ)・青森2026年1月5日、豊洲市場の初競りで、青森県大間産の243kgのクロマグロに5億1030万円の値が付きました。史上最高値です。それまでの記録は2019年の3億3360万円。
クロマグロ(本マグロ)では、このマグロを握ったら1貫いくらになるのか。寿司ダネ1貫を10〜15gとして単純に計算すると、原価は1貫2〜3万円。それでも落札したすしざんまいは、いつもと同じ398〜598円で出すとしました。

しび、恵比寿鮨、仙台鮪

「鮪」は、古くは「しび」と読みました。「まぐろ」と呼ばれるようになるのは江戸時代後期。
クロマグロ(本マグロ)標準和名は、かつて単に「マグロ」でした。「クロ」が付き始めたのは1950年代後半からです。
東京マグロが初めて寿司ダネになったのは江戸後期。天保年間(1830〜1844年)に、江戸・馬喰町の「恵比寿鮨」が使ったのが最初だという話が残っています。
天保年間の末には江戸でマグロが大漁になり、寿司屋が捨て値で仕入れて握ったマグロの寿司が大流行しました。そのころのマグロは、醤油に漬けるヅケ。ところが一流を名乗る寿司屋は、マグロを握るのを嫌いました。ヅケの切り身からは醤油の汁がしたたり落ち、白いシャリが茶色く染まってしまうからです。
東京天保3年(1832年)の春、マグロが大漁で日本橋の魚河岸にあふれました。滝沢馬琴の日記には、三尺のマグロが二百文とあります。
宮城明治初年ごろから、三陸の漁場のマグロが東京に出回り、「仙台鮪」と呼ばれました。ところが東京に届くまでに鮮度が落ちてしまい、うまくない鮪の代表にされていたのです。
マグロが本格的にもてはやされるのは戦後のこと。最初の主流は輸入のインドマグロ、通称「インド」でした。近海の生の本マグロが日の目を見るのは、各地と築地市場を結ぶ高速道路が整ってから。

ヅケにしない店もある

静岡マグロの赤身を「ヅケ」と呼ぶことがあるのは、古くは赤身こそがうまいもので、保存のために醤油に漬けたから。静岡県では、これを「べっこう」と呼びます。
赤身をヅケにしない店もあります。生の高品質なマグロを求めるからこそ、よほどのことがない限り、煮切り醤油に漬け込む「ヅケ」は作らない。ヅケは江戸前の仕事の代表なのに、店によってここまで扱いが分かれる。
東京赤身の最高級は「背ナカ」。5〜10kg前後の塊を、3〜5日に1回、同じ仲卸から仕入れる店もあります。産地は季節で移り、冬は津軽海峡、春は壱岐や佐渡、夏は紀州勝浦や銚子、秋は塩釜。
同じ赤身でも、部位ごとに切りつけ方と握り方を変える店もあります。味の濃い「血合いぎし」はやや分厚く切り、玉子と同じ「鞍掛け」で握る。赤身のトロと呼ばれる柔らかい「ヒレ下」は、薄く削ぐように切って、シャリをくるむように握ります。
人形町「㐂寿司」の見立てでは、マグロの旬は1月いっぱい。1月も半ばを過ぎれば、いちばんいい時季は終わりに近い。先代は、納得できないのに必要に迫られて手がける仕事を「逃げる仕事」と呼びました。満足のいく品物がない夏場のマグロは、その筆頭です。

本ハツ、ビントロ、海の鶏

キハダ(キハダマグロ)・大阪大阪では、キハダを「本ハツ」と呼びます。クロマグロより漁場が近く、鮮度のよいものが手に入ったからです。
ビンナガ(ビンチョウマグロ)ビンナガは、古くは缶詰用の魚でした。流れが変わったのは、脂ののった時期のものを冷凍して「ビントロ」として売り出してから。生で食べる魚として知られるようになり、回転寿司の定番のタネにまでなりました。
脂が少なく身が白っぽいキハダやビンナガを、アメリカでは「海の鶏(シーチキン)」と呼んで好んだ。昭和初期〜中期の日本の本に出てくる話です。
ミナミマグロ(インドマグロ)ミナミマグロは本来、大型延縄船が1年以上も航海して取ってくる冷凍マグロでした。それが近年は、ニュージーランドやオーストラリアから養殖ものや釣りものが入ってきます。
クロマグロ(本マグロ)クロマグロの完全養殖、つまり採卵から出荷までを成功させているのが近畿大学です。

ひゅうが丼と、台所のヅケ

ひゅうが丼(大分県津久見市の郷土料理)
ひゅうが丼(大分県津久見市の郷土料理)写真: 大分帰省中(CC BY-SA 4.0)
大分大分県津久見市保戸島の「ひゅうが丼」は、すりごまに砂糖・卵黄・酒・みりん・醤油を合わせたたれに、薄く切ったマグロの赤身を入れて、熱いご飯にのせる丼。生みの親は、マグロ遠洋漁業の基地の漁師。漁の合間に、手早く栄養をとるための工夫でした。
家でヅケにするなら、醤油だけに漬けるのは避けたいところ。塩辛くなります。醤油大さじ2に、電子レンジで煮切ったみりん・酒を各小さじ1。このたれに刺身を4〜5分漬け、途中で1〜2度返す。シャリと合わせれば、上品な仕上がりに。
マグロも、アニサキスと無縁ではありません。厚生労働省は、アニサキスが寄生する魚介類の例にマグロも挙げています。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • はま寿司「まぐろ」132円2026-09-25 時点
  • はま寿司「とろびんちょう」110円2026-09-25 時点
  • くら寿司「熟成まぐろ」(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点
  • スシロー「厳選まぐろ赤身」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)150円2026-09-29 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「まぐろ」お好み1貫(税込)330円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「本まぐろ」おこのみ1貫(税込)421円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「バチ・キハダ」1個(グランドメニュー、税込)140円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「本鮪 赤身」1個(グランドメニュー、税込)382円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「まぐろ赤身」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)220円2026-09-29 時点
  • 芦屋 波沙鮓「赤身(本鮪)」にぎり1貫(税込。本体価格800円)880円2026-09-30 時点
  • 富山 蛇の目寿司「まぐろ」にぎり1個(税込。その日の仕入れや季節で変わる)440円2026-09-30 時点

市場

  • 2026年1月5日 豊洲市場の初競り 青森県大間産クロマグロ243kg510,300,000円1尾5億1030万円(1kgあたり約210万円)。史上最高値
  • 国産クロマグロ(生)の市場価格の目安1kgあたり1万円以上することも普通(時期の記載なし)

『江戸前の旬』では

連載の3話目にして、もう題は「マグロのヅケ」。江戸前の仕事が、早くも話の真ん中に置かれています。

39巻には、喜寿を迎える父に、四十年前に銀座で食べた「シロマグロ」の握りを食べさせたい、という客が北海道からやって来ます。旬には正体が分からず、尋ねられた鱒之介は「シロカワ」との勘違いでは、と話す。117巻の北海道物産展編に出てくるのは、松前の海で獲れるマグロの中にまれにいるという「幻のチュウボウ」。小型なのに大トロまである極上品です。106巻は、希少な本マグロの部位を握る話を収めています。

マグロの種類を題にした話も並びます。84巻に「メバチマグロ」、86巻に「ビンナガマグロ」、87巻に「コシナガマグロ」。87巻には「ヅケ」と題した話もあります。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
ホンマ/ホンマグロ関東の市場クロマグロ(本マグロ)。関東の市場ではこう呼ばれることが多い
メジ(メジマグロ)千葉・東京・神奈川、山形県鶴岡市、富山県高岡市クロマグロ(本マグロ)。小型
ヨコワ鹿児島県種子島クロマグロ(本マグロ)。若魚
シビコ→ヨコワ→ヒッサゲ→シビ京都府宮津市・伊根町クロマグロ(本マグロ)。成長につれて呼び名が変わる。10kgを超えるとヒッサゲ
オオシビ京都府丹後地方クロマグロ(本マグロ)
カツオ熊本県熊本市クロマグロ(本マグロ)。小型のもの。カツオがあまり取れないため、本物のカツオは「マガツオ」と呼ぶ
インドマグロ全国(流通名)ミナミマグロ(インドマグロ)。古くはインド洋でたくさん揚がったためとみられる
バチ宮城県仙台、千葉県銚子、東京、神奈川県三崎、愛知県豊橋、高知メバチ(メバチマグロ)
ダルマ/ダルマシビ東京、埼玉、千葉、群馬、静岡、三重、和歌山県太地メバチ(メバチマグロ)。全長1m以下の若魚
メッパ和歌山県新宮市・太地・白崎メバチ(メバチマグロ)
マグロ三重県伊勢市・四日市市キハダ(キハダマグロ)。伊勢地方・北勢地方で単にマグロと言えばキハダのこと
コビン→ビンタ→ビントク→メジ→キハダ高知県土佐清水キハダ(キハダマグロ)。成長につれて呼び名が変わる。30kg以上でキハダ
イトシビ三重県熊野浦、和歌山県、宮崎県、高知県キハダ(キハダマグロ)。大型は背鰭と尻鰭の先が糸状に伸びるため
トンボ神奈川県、東京都、三重県、和歌山県、高知県室戸ビンナガ(ビンチョウマグロ)
ハニシビ沖縄県ビンナガ(ビンチョウマグロ)。翼鮪・羽鮪

次に読みたくなる

マグロとつながるタネ

出てきた寿司ことば

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