寿司のデータベース

品書き / 赤身

カツオ鰹

かつお/Skipjack tuna (Bonito)

同じカツオでも、季節で味はまるで変わります。春〜初夏に北上してくる「初鰹」と、秋に南下してくる脂ののった「戻り鰹」。江戸っ子は初鰹に熱狂し、1812年には歌舞伎役者が1本3両で買った記録まで残っています。江戸時代に「刺身」といえば、表面をあぶったもの。今のたたきです。

カツオ(かごしま水族館)
カツオ(かごしま水族館)写真: タウナギ(CC0)
カツオの握り
カツオの握り写真: Zheng Zhou(CC BY-SA 4.0)

旬

初鰹(上り鰹)
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戻り鰹(下り鰹)
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旬は、初鰹(春〜初夏)と戻り鰹(秋)の2回。ただ近年は温暖化で初鰹の輪郭がぼやけ、年間を通して水揚げがあります。脂がのるのは、どちらかといえば秋。

旬 出回る時期

種類

初鰹(上り鰹)

別名 上りガツオ

北上する時期の、その年初めてのカツオ。脂が少なく、さっぱりした味わいです。食品業界では、漁獲の多い高知県の初鰹の時期(4〜6月ごろ)を、その年の初鰹としています。

高知県の初鰹の時期。港によってずれます。

戻り鰹(下り鰹)

別名 下りガツオ、秋鰹

秋に三陸沖などから南下してくるカツオ。低い海水温で脂がのり、質のいいものはマグロのトロにも負けません。

9〜10月。港によってずれがあります。

初鰹に3両

初鰹(上り鰹)・東京文化9年(1812年)旧暦3月25日、江戸に初鰹が17本入りました。6本は将軍家へ、1本は料理屋の八百善へ。魚屋から1本3両で買い取って、芝居小屋でふるまったのが三代目中村歌右衛門です。
初鰹(上り鰹)庶民にとって、初鰹は高嶺の花。「女房を質に入れても初鰹」と川柳にまでなりました。「女房を質に置いても」と言うようになったのは、江戸時代も半ば以降のことです。
歌川広重「魚づくし」の鰹と桜
歌川広重「魚づくし」の鰹と桜写真: 歌川広重(メトロポリタン美術館蔵)(CC0)
初鰹(上り鰹)「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」。江戸時代前期の俳人・山口素堂の、あまりにも有名な一句です。
初物を食べると75日長生きする。そんな信仰があって、江戸の町人はカツオに限らず、「初」「若」「早」の付く食べ物をこぞって求めました。
もっとも、初鰹の騒ぎは江戸だけの話。全国的なものではありませんでした。海辺や地方都市では、江戸時代より前から、ふつうにカツオを生で食べていた可能性が高い。産地で好まれたのは、水揚げの多い夏と秋のカツオです。

江戸の「たたき」は塩辛だった

江戸時代にカツオの「刺身」と言えば、表面をあぶったもの。今でいう「たたき」です。では当時の「たたき」は何かというと、今のカツオの塩辛のこと。同じ言葉が、いまとは別のものを指していました。
カツオの刺身は、本来は皮付きで作る「芝造り」。これをからし醤油で食べるのが、古い江戸の風俗でした。いまは生姜やにんにくを薬味にすることが多い。
江戸っ子は、カツオをたたきにして大葉や生姜を添える、という食べ方はしませんでした。刺身に辛子。「初がつお 銭と辛子で 二度落涙」という、作者不明の川柳が残っています。
もともと東京には、カツオを炙って「たたき」にする慣習はありませんでした。いまは状態を見て串を打ち、皮目だけを遠火で炙って、火が入りすぎないうちにすぐ水をかけて冷やす店もあります。握りには、わさびではなく、細かく刻んだ青ねぎと生姜をかませる。
カツオのたたき(高知県)
カツオのたたき(高知県)写真: ノボホショコロトソ(CC BY 4.0)
高知高知県の「土佐造り(たたき)」は、カツオの皮を藁などの炎であぶり、ねぎやにんにくなどをのせて、ポン酢をかけ、手でたたいてなじませる。塩と柚子の果汁で叩く「焼き切り」もあります。

100本に1匹

カツオは個体差が激しく、目利きが難しい魚です。豊洲の仲卸の言葉を借りれば、「100本やって、いいのが1匹出るかでないか」。身の一部が石のように硬く変質した「ゴリ」に当たることもあります。
寿司屋には、カツオを「忙しい(足が速い、傷みやすい)」種として嫌う向きもあります。
東京カツオは足が早い。だから1尾(マル)ではなく、半身や4分の1で仕入れる店もあります。皮の硬い部分を取り、腹と背に分けて血合いや筋を除き、切り付けた身に隠し包丁を入れる。
宮城北上から南下に転じる宮城県・金華山沖では、初鰹でも脂がのっています。だから西日本ほど、季節で味が変わりません。
山陰・若狭湾・能登・富山湾など、日本海で取れるカツオは「迷いガツオ」と呼ばれ、高値が付きます。けれど実際は、対馬暖流に乗ってふつうに回遊するようになっている。迷っているわけではないのです。

勝つ魚、堅い魚

海で取れたカツオは、海辺で硬く干して都へ送られました。この干したものを「堅魚(かたうお)」と呼び、それが「かつお」になった。
属名Katsuwonusは、動物学者の岸上鎌吉が、和名の「カツオ」から付けたもの。学名にまで日本語が入っているのです。
神奈川北条氏綱が小田原で舟遊びをしていたら、舟にカツオが飛び込んできた。「勝つ魚だ」と喜んで、以後は出陣の酒肴にカツオを用いた、という話が残っています。結納品にも「勝男節(かつおぶし)」があるほどです。
鰹節と削り器
鰹節と削り器写真: サフィル(CC BY-SA 4.0)
高知今のかつお節は、延宝2年(1674年)、土佐の甚太郎が始めたもの。ゆでてから焙乾するなど、工夫を重ねてできあがりました。

かつお飯、茶ずまし、フライパンのたたき

静岡静岡県焼津市の「かつお飯」は、甘辛く煮たなまり節を、炊きたてのご飯に混ぜたもの。
徳島徳島県の「茶ずまし」は、汁椀にカツオの刺身を入れ、熱い煎茶を注いで、醤油で吸い物ほどに味をつける。即席のすまし汁です。
焼いていないカツオを家でたたきにするなら、まず冷蔵庫でしっかり冷やします。塩は皮目だけに、しっかりと。油をひいたフライパンを強火で熱し、皮目から焼いて、ほかの面はさっと焼く。氷水に入れると水っぽくなるので、氷水で冷やしたキッチンペーパーを身にかけて冷まします。
市販のポン酢だけでは、味が薄くなりがち。ポン酢大さじ3・醤油大さじ1と1/2にかつお節を入れて5分以上なじませ、こしたたれをかけます。
カツオも、アニサキスが寄生することがある魚の1つ。酢や醤油、わさびでは死にません。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • くら寿司「ゆず塩かつおたたき」(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点

大衆店

  • 芦屋 波沙鮓「かつお」にぎり1貫(税込。本体価格700円)770円2026-09-30 時点

『江戸前の旬』では

第6話と第7話は、前編と後編で「初ガツオ」です。

109巻は春から初夏の極上のタネにカツオを入れ、111巻の紹介文は、秋になって極上の旨さになった魚の筆頭にカツオを挙げます。春と秋、二つの巻に顔を出します。

96巻は、1冊の中に「ハツガツオ」と「戻りガツオ」の両方の題を収めています。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
マンダラ北陸地方、富山県新湊・四方・富山、新潟県出雲崎、北海道
マガツオ兵庫県豊岡市竹野、熊本県熊本市、鹿児島県種子島
ホンガツオ熊本県熊本市、長崎県単に「カツオ」と言うとソウダガツオ類を指すことがあるため
ブエンカツオ(無塩鰹)鹿児島県枕崎塩をしたカツオや乾物が基本だった時代に、生で食べられる新鮮なものをこう呼んだ
カチュー/カッチウ沖縄県本島・八重山・宮古
トサガツオ山口県萩市・長門市・阿武町
ヘソモタシ三重県志摩市大王町「へそ」は心臓のこと
コヤツ/ビンゴ→ヤタ宮城県仙台若魚がコヤツ・ビンゴ、成魚がヤタ
ハランボ高知県部位名。腹の薄い部分。千葉・静岡ではハラモ
チチコ高知県部位名。心臓。静岡県焼津ではヘソ、鹿児島県枕崎ではチンコ(漢字では「珍子」と書く)

次に読みたくなる

カツオとつながるタネ

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