寿司のデータベース

品書き / 郷土寿司

鯖寿司

さばずし/Mackerel sushi (Sabazushi)

若狭でひと塩したサバが、鯖街道を越えて京に着くころ、ちょうどいい塩加減になっている。その塩サバを酢で締め、棒にしたシャリにのせて竹の皮で包んだのが京都の鯖寿司です。祭りの日のごちそうで、同じ鯖寿司でも、甘めの京都と酢と塩をきかせる高知とでは味の組み立てがまるで違う。

京都「いづ重」の鯖寿司(奥は昆布で包んだまま)
京都「いづ重」の鯖寿司(奥は昆布で包んだまま)写真: Kykk wiki(CC0)
鯖の姿寿司(広島県安芸高田市)
鯖の姿寿司(広島県安芸高田市)写真: Naocchi(CC BY-SA 4.0)

京に着くころ、ちょうどいい塩

鯖街道の終着点近くの店「花折」の鯖寿司
鯖街道の終着点近くの店「花折」の鯖寿司写真: Kykk wiki(CC0)
京都若狭湾でとれたサバに塩をして、鯖街道を京へ運ぶ。都に着くまでの2日から3日で、ちょうどいい塩加減に仕上がる。この塩サバで作ったのが鯖寿司で、生まれは江戸時代と伝わります。冷蔵のない時代、傷みの早いサバを長く食べるための工夫が、そのまま京のごちそうになりました。
京都鯖寿司は、もとは京の町衆が家でこしらえるハレの日のごちそうでした。若狭から鯖街道を人の足で運ばれてくるひと塩のサバは、それだけで大変な御馳走。めでたい日には家ごとに鯖寿司を作り、皆で食べた。その庶民の味を料理人の技で磨き、専門店の品にしたのが、天明元年(1781年)創業の祇園「いづう」です。祇園石段下の「いづ重」は明治の創業で、そのころからほとんど変わらない製法で作り続けています。
京都京都では、鯖寿司は祭りの日のごちそう。いまも葵祭・祇園祭・時代祭の三大祭や、府内各地の秋祭りに鯖寿司を食べる風習が残っています。祭りの時期になると家ごとに作って、自慢の味で客をもてなす。店だけでなく、スーパーや魚屋でも買えます。
お盆にも、鯖寿司を食べる習わしが各地にあります。仏教では食事のとき、ご飯粒を少し小皿に取り分ける。この世に生まれてこられなかったものたちへの施しで、このご飯を「生飯(さば)」と呼びます。盆は、日ごろ世話になっている人に顔を見せ、手みやげを持ってあいさつに行くとき。その手みやげを生飯に見立てて、盆には魚のサバを持っていくものだとされました。生ぐさものを嫌う仏教と、生ぐさい魚の代表のサバが、こうしてつながります。尾頭つきの立派な姿寿司もあれば、酢サバを切ってシャリに混ぜただけの、手軽なちらしもあります。

甘い京都、酢と塩の土佐

高知京都の鯖寿司は甘め。高知の鯖寿司は酢と塩をきかせる。この違いは、サバの種類から来ています。京都で使うマサバは脂が多く、高知でよくとれるゴマサバは、マサバほどこってりしていない。脂の多い魚には甘さを、さっぱりした魚には酢と塩を合わせているわけです。
高知高知の鯖寿司は姿ずし。宴会を土佐弁で「おきゃく」といい、そこで出る直径36〜39cmほどの大皿盛り「皿鉢料理」の定番です。背開きにして酢で締めたサバの腹に、シャリをぎっしり詰める。切り分けたら、頭と尾を立てて豪快に盛るのが正調。シャリにはしょうがとごまが入り、酢は柚子酢や米酢と土地によって変わります。残った頭と尾は、翌日焼いて食べる。
広島広島の県北や、内陸の東広島市西条あたりでも鯖寿司は根強い人気で、多いのは姿寿司。酢で締めたサバの内臓を抜いたところに、シャリを詰め込みます。海苔の代わりに広島菜漬で巻いたものもあります。

姿か、棒か、握りか

兵庫同じ鯖寿司でも、形は三つあります。姿寿司は、頭と尾を残したまま開いた塩サバを酢で締め、シャリを挟んで形を整えたもの。棒ずしは、頭と尾を落とした半身を酢で締め、シャリにのせて棒にし、竹の皮で包む。握りは、酢に漬けたサバを一口大にそぎ切りにしてのせます。兵庫では、田植えを終えたお祝いの「さなぶり」に、この握りを作ってきました。
兵庫鯖街道は京都へ向かう道だけではありません。西の鯖街道は丹波篠山へ続き、塩漬けのサバは篠山に着くころ、やはりちょうどいい塩加減になっていた。収穫を祝う秋祭りには、新米で炊いたシャリに酢で締めた塩サバをのせ、竹の皮で包んだ棒ずしを作ります。
岡山岡山県北部の山あいでも、鯖寿司は秋祭りのごちそうです。生の魚が手に入りにくい山村へ、塩サバは山陰の鳥取から運ばれてきました。秋祭りには一軒で大量にサバを買い込み、たくさん作って親類や知人に配る。祭りが終わると稲刈りなので、多めに作っておいて作業の合間にもつまみました。塩サバは合わせ酢に1〜2日漬け、型箱で押して竹の皮に包み、一昼夜寝かせます。
岡山新見のあたりでは、鯖寿司は備中の名物です。海の幸の流通が発達していない時代、山陰でとれて塩漬けにされたサバが、はるばる中国山地を越えて運ばれてきた。そのサバで作る棒寿司は、祭りや祝いの日のごちそうで、いまも受け継がれています。新見の寿司店「寿司一」の「金棒すし・さば包み」は、丸のままのサバを上下に1匹ずつ使って、シャリをサンドウィッチのように挟んだ一品。

祇園の鯖姿寿司

京都祇園の「いづう」は、天明元年(1781年)の創業。初代いづみや卯兵衛の頭の字を取って屋号にしました。始めからお茶屋への出前を商いにしてきた店で、名物の鯖姿寿司は、脂ののったマサバと特選米のシャリを北海道産の昆布で包んだもの。切り口は兎をかたどっています。
京都いづうの鯖姿寿司は、1本(2人前)6,480円、1人前(6貫)3,240円(いずれも税込)。青身の部分を取り除いて白身の部分だけで作る「みさばずし」もあって、こちらは1本7,776円。青魚が苦手な客の求めから生まれた品です。

竹の皮で包んで、ひと晩

京都京都の家の作り方。塩サバ1尾に米4合、合わせ酢は酢80cc・砂糖60g・塩小さじ2/3。塩サバを3枚におろして血合いと小骨を取り、酢水で洗ってから、かぶるくらいの酢に30〜40分漬ける。皮目を上にして、頭のほうから薄皮をむきます。身の厚いところをそいで尾のほうへ回し、厚さをそろえる。棒状にしたシャリをのせてフキンで包み、巻きすで形を整えたら、竹の皮に包んで5か所ほどひもでくくる。皿くらいの軽い重しをして、翌日が食べごろ。何もつけずに食べられますが、醤油をつけてもいい。サバとシャリのあいだにガリを挟む作り方もあります。
鯖寿司は、サバとシャリで作る寿司の総称です。棒寿司、姿寿司、押し寿司、なれ寿司と形はさまざまで、名物は全国にある。京都の棒寿司、大阪のバッテラ、和歌山の押し寿司やなれ寿司がよく知られたところ。食べる習慣は九州から中国、四国、近畿、北陸まで広く、なかでも山陰から山間部に多い。へしこをのせたへしこ寿司も、鯖寿司の仲間です。
宮津の料亭の焼き鯖寿司
宮津の料亭の焼き鯖寿司写真: 漱石の猫(CC BY-SA 4.0)
運ぶ時間を気にしなくてよくなったいまは、保存のための昔の作り方にこだわらない鯖寿司も増えました。焼いたサバをシャリにのせた焼さば寿司、八戸前沖のサバ(通称とろ鯖)を使った「とろ鯖棒寿司」がその例です。

値段

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高級店

  • 京都祇園「いづう」鯖姿寿司 1本(2人前)税込6,480円2026-09-29 時点

『江戸前の旬』では

127巻に来るのは、サバの棒寿司ではなく、バッテラを食べたいという女性の客。紹介文は、バッテラは関西の押し寿司で、作り方も難しい、と書きます。挑むのは、みどりと郁人です。

93巻にも、「サバのバッテラ」と題した話があります。

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