寿司のデータベース

品書き / 光り物

イワシ鰯

いわし/Japanese sardine

注文を受けてから腹を開く店があるほど、足の早い魚。苦労のわりに値が取れないので、扱いたがる寿司屋は多くありません。寿司のイワシはふつうマイワシで、大きさによって小羽・中羽・大羽と呼び分けます。味の盛りは梅雨どき。この時期の「入梅いわし」は一年でいちばん脂がのり、皮目に真っ白な脂がびっしり。身は柔らかく、生臭さを感じさせません。

マイワシ(アクアマリンふくしま)
マイワシ(アクアマリンふくしま)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
イワシの握り。おろし生姜とあさつきをのせて(立喰 さくら寿司 池袋)
イワシの握り。おろし生姜とあさつきをのせて(立喰 さくら寿司 池袋)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

地域ごとに旬があり、国内全体で見ると旬は無い。あえて言えば一年中。地域を限らなければ、8月後半から早春が安定します。関東では梅雨の「入梅鰯」がうまく、日本海側では春にもいいものが揚がる。

旬 出回る時期

扱いたがる寿司屋は少ない

足が早いので、イワシだけは仕入れ先を決めず、市場を歩いて良いものを探す「拾い買い」をする店もあります。苦労のわりに値が取れない。だから扱いたがる寿司屋は少ないのです。
東京イワシは、注文を受けてから腹を開く店もあります。それまでは氷を入れた塩水ごと容器に入れ、しっかり冷やし込んでおく。開いたら塩をあてて10分ほど。ため水で塩を流し、布巾で水気をとります。少量の醤油を加えた酢にくぐらせ、飾り包丁を入れて握る。
人形町「㐂寿司」のイワシは、1尾15cm前後の「小羽」と決まっています。先代が、脂の乗った大きいイワシを嫌ったから。それで脂の乗り過ぎない小鰯を握るようになりました。片身2枚を合わせて、1尾で1貫。中には、おろし生姜とあさつきを忍ばせます。

紫式部の鰯

紫式部が夫の留守に鰯を焼いて食べていたら、帰ってきた夫に「卑しいものを」と叱られ、歌で言い返した。そんな話が残っています。宮中の女房言葉では、鰯を「御紫(おむら)」「紫(むらさき)」と呼びました。
語源の候補は二つ。陸に上げるとすぐ弱るので「よわし」が転じた、というもの。それから、「卑しい(いやしい)」がなまった、というもの。
「鰯の頭も信心から」は、鰯の頭のようにつまらないものでも、信心すればありがたく思えるという意味。空に広がる巻積雲の「鰯雲」は、鰯の大漁の前触れと考えられていました。
琉球列島を除けば、日本の「いわし」はマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの3種。どれも、ただ「いわし」と呼ばれます。

辞書にない「入梅鰯」

千葉梅雨どきのイワシは「入梅鰯」と呼ばれ、うまい。ところがこの言葉、国語辞典にも歳時記にも見当たらない、という指摘があります。背景にあるのは、千葉県で6月に漁獲量も脂も急に増えることではないか、という見立てです。
イワシは秋の季語。ただ日本海側では、春から初夏に対馬暖流に乗って来ます。だから北陸では「春鰯」とすべきだ、という指摘もある。

九十九里の地引網

九十九里の浜で網を引く漁師たち(歌川広重『六十余州名所図会』上総)
九十九里の浜で網を引く漁師たち(歌川広重『六十余州名所図会』上総)写真: 歌川広重(サンディエゴ美術館蔵)(Public domain)
千葉九十九里浜のイワシ漁は、江戸時代から盛んでした。急速に伸びたのは、紀州の漁師が移り住んで地引網漁を始めてからです。
千葉千葉県九十九里町の「背黒いわしのごま漬け」。カタクチイワシに塩を振って5時間ほど置き、水洗いして調味液に7時間ほど漬けます。それをごま・しょうが・赤唐辛子と重ねて、重石をする。作るのは、旬の冬です。
千葉千葉県九十九里地域の「いわしの卯の花漬け」は、イワシに塩を振って一晩置き、塩を洗って調味料に1日漬けてから、おからで漬け込んだもの。正月のおせちにも並びます。

包丁いらずの手開き

イワシは身が柔らかいので、包丁を使わず手で開けます。エラに親指を入れて頭を折り取り、指で内臓をかき出して洗い、水気をふく。腹に両親指を入れ、背骨の上をなぞるように頭側・尾側へ動かして身を開いたら、背骨をはがして尾のところで折ります。
手開きしたら、水気は必ずふき取ること。ふかないと身が水を吸って、傷みやすくなります。調理まで時間を置くなら、なおさらです。
イワシにもアニサキス幼虫が寄生していることがあり、酢や塩、醤油では死にません。生で食べるなら、-20℃で24時間以上の冷凍を。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • はま寿司「宮城県産とろいわし」176円2026-09-25 時点
  • くら寿司「真いわし」(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点
  • スシロー「天然いわし」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)180円2026-09-29 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「いわし」お好み1貫(税込)330円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「いわし」おこのみ1貫(税込)250円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「いわし」1個(グランドメニュー、税込)217円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「いわし」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)198円2026-09-29 時点

市場

  • 春の高値のときのマイワシ卸値1kgあたり3800円になることがあり、小売店では1尾1000円前後になる(年の記載なし)

『江戸前の旬』では

連載の第17話は「マイワシ」、第40話は「カタクチイワシ」。同じイワシでも、別々の話の題になっています。125巻では、初夏の思い出の味として入梅イワシが握られ、2007年には総集編『イワシ編』が出ています。

読者の感想に挙がるイワシは、4巻のほっかぶり寿司、69巻の京丹後の金樽鰯、89巻のなめろうをシャリなしで巻いた海苔巻き。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
コバイワシ(小羽鰯)→チュウバイワシ(中羽鰯)→オオバイワシ(大羽鰯)一般に大きさによる呼び名。「㐂寿司」の説明では、15cm前後を小羽(しょうば)、20cm前後を中羽(ちゅうば)、25cm大を大羽(おおば)と読む
ヒラゴ(平子鰯)青森県、日本海、三重県東紀州、徳島県由岐町
コベラ(小平)徳島県海陽町宍喰5〜8cmの若魚
ナナツボシ(七つ星)関東の市場
キンタロウ/キンタル(金樽)京都府宮津天橋立周辺
キンタロウイワシ(金太郎いわし)大阪大阪湾で揚がるもの
ツユイリイワシ(梅雨入りイワシ)関東周辺もしくは太平洋側の一部
ヤシ福島鰯の語源を「いやし(卑しい)」とする説から「い」を略した
モロクチ(諸口)東北地方カタクチイワシに対して

次に読みたくなる

イワシとつながるタネ

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