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品書き / 郷土寿司

笹寿司

ささずし/Bamboo-leaf sushi (Sasazushi)

クマザサの葉を器にした寿司です。新潟の上越や長野の飯山では、笹の上に一口のシャリを盛って山菜や錦糸卵をのせる。石川では、笹でシャリと魚を包んで押す。同じ名前で、形がまるで違います。始まりには、川中島へ向かう上杉謙信の話がついて回る。

新潟の笹寿司(笹を開いたまま出したもの)
新潟の笹寿司(笹を開いたまま出したもの)写真: Siriusplot(CC BY-SA 3.0)

謙信の軍に、笹の器で

長野・新潟天文22年(1553年)から12年にわたった川中島の合戦。信州と越後の境にある富倉峠は、上杉謙信の軍にとって大事な通り道でした。そこで謙信の軍勢にふるまわれたのが笹寿司の始まり、という話が残っています。富倉の村人が、器の代わりに笹を使い、ご飯に山菜をのせて出したのだと。笹には傷みを防ぐ力があり、謙信は戦に笹寿司を携えていった、という話もある。飯山市では、笹寿司を「謙信寿司」とも呼びます。
笹寿司には二つの形があります。新潟と長野の笹寿司は、クマザサの葉にシャリを盛り、味をつけた具と薬味を彩りよくのせたもの。石川の笹寿司は、シャリと魚を笹で包み、箱に詰めて押す押し寿司です。新潟・長野の笹寿司は、農山漁村の郷土料理百選にも選ばれています。
具を混ぜたシャリを笹で包んだもの(新潟県小千谷市)
具を混ぜたシャリを笹で包んだもの(新潟県小千谷市)写真: Siriusplot at Japanese Wikipedia(CC BY-SA 3.0)
新潟包み方もいろいろです。笹にのせただけのもの、片側だけ折って舟形にしたもの、三角に折ったもの、ちまきのように包んでイグサで束ねたもの。妙高市、上越市、糸魚川市などの上越地方では、笹を箕(み)の形に折って作り、「箕寿司(みずし)」と呼ぶ土地もあります。専用の木箱に重ねて作る土地もある。

上越と飯山は、笹にのせる

新潟のせるのは、山と里のもの。わらび、筍、きゃらぶき、ぜんまいといった山菜に、野沢菜漬け、大根の味噌漬け、くるみ、人参、ひじき。錦糸卵や田麩で色を足し、薬味は紅しょうが。サケのそぼろをのせる土地もあれば、具をシャリに混ぜ込んでしまう作り方もあって、土地ごと家ごとに少しずつ違います。
長野箸はいりません。笹寿司を手に持ち、笹を下へずらしながら、笹から離れたところを食べていく。直接笹の葉から食べるのが、本来の食べ方です。
信州木島平の笹ずし
信州木島平の笹ずし写真: くろふね(CC BY 4.0)
長野長野の飯山では、ぜんまい、たけのこ、しいたけ、くるみと山の幸を中心にのせ、錦糸卵や紅生姜で彩る。シャリにもち米を混ぜる家もあります。祝い事や祭りがあると笹寿司を作ってもてなすのが飯山の習わしで、平成19年には長野県の選択無形民俗文化財になりました。長野駅では笹寿司の駅弁も売られています。
新潟七夕は「笹の節句」とも呼ばれます。そこで糸魚川青年会議所は、7月7日を「糸魚川 七夕は笹ずしの日」として申請し、平成26年(2014年)に日本記念日協会に登録されました。糸魚川の中でも、具や作り方は地区ごと家ごとにさまざまです。
新潟お盆や祭りなど、人が大勢集まるハレの日の料理でしたが、手間がかかるので家で作ることは減ってきました。いまは寿司店のほか、農産物直売所やスーパーでも買えて、各地で地元の人が教える笹寿司づくりの体験もあります。上越市の「くびきの押しずし」は駅弁として、道の駅でも売られています。

加賀と白山は、笹で包んで押す

石川石川の加賀の笹寿司は、熊笹で包んだシャリと魚を、ひと晩押して寝かせたもの。米一升でおよそ50人前ができます。ひと昔前は近くの山から笹を取ってきて、何十人分もの笹寿司を一家総出でこしらえた。家で食べる分は、簡単に作る「おけらずし」ですませました。魚が手に入りにくい土地では、油揚げや塩くじらを使いました。
石川白山のふもとの笹寿司は、笹の葉で包んで押す押し寿司です。白山市には、十文字に重ねた笹の葉で寿司を包む土地があり、それが周りへ広まったと考えられている。旧鶴来町のあたりでは、祭りに親戚が集まると笹寿司でもてなしてきました。タネはサケ、マス、シイラ、タイ、サバ、ときには油揚げ。そこに山椒の葉、しょうが、レモンの薄切り、桜エビ、ゴマ、紺のりをあしらいます。紺のりは、テングサを青く染めたものです。
金沢の笹寿し(左が連子鯛、右がサケ)
金沢の笹寿し(左が連子鯛、右がサケ)写真: Tail furry(CC BY-SA 4.0)
石川金沢の寿司弁当の会社「芝寿し」の看板商品「笹寿し」は、創業者・梶谷忠司のひらめきから生まれました。白山比咩神社の参道で売られていた笹餅をヒントに、餅をご飯に置き換えたのが始まりです。

のせるか、包むか、家で作る

新潟新潟の家の作り方。米3合は少し硬めに炊き、砂糖大さじ1・塩小さじ1・酢大さじ4の合わせ酢でシャリにする。干しぜんまいはひと晩水で戻し、醤油と砂糖と塩で煮る。姫たけのこは柔らかいところだけを、醤油と砂糖とみりんで味つけ。サケは蒸して皮と骨を取り、甘酢に浸ける。野沢菜漬けは塩出しして刻み、油で炒めて煮る。卵は薄焼きにして千切りに。笹は湯に通して水気を切る。笹にシャリを30gほど小判形に広げ、具をのせて軽く押せばできあがり。好みでしょうがの酢漬けを添えて。
石川白山のふもと、旧鶴来の家の作り方。笹120枚に、米1升。笹は表も裏も洗って拭き、サケとシイラの切り身は酢で締める。大根は2cm角の薄切りにして、らっきょう酢にひと晩漬けておく。米はかために炊いてシャリにし、60個のおにぎりに。笹を60枚並べ、大根の酢漬けにシイラを、寿司しょうがにサケを重ねて20個ずつ、味つけしたいなり揚げを20枚置く。その上におにぎりをのせ、いりごまと桜エビを散らして笹で包む。寿司桶に並べて重石をし、ひと晩おけばできあがり。きれいな形に仕上げるコツは、桶に並べるときの丁寧さです。

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