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品書き / 白身

白魚

しらうお/Japanese icefish

生きているうちは透きとおっていて、死ぬと白くなるから「白魚」。4〜5本を束ねて海苔の帯を巻く握りは、江戸前の古い技です。佃島の沖で篝火を焚いてすくった、江戸の冬から春の風物詩。ほろ苦さと甘味が一緒にやってくる、寿命1年の小さな魚です。

生きているシラウオ(サハリン)。透きとおっている
生きているシラウオ(サハリン)。透きとおっている写真: Sagavlad(CC BY-SA 3.0)
白魚の軍艦巻き
白魚の軍艦巻き写真: Arashiyama(CC BY-SA 3.0)

旬

旬は冬から早春。ただし1年を通して味がよく、同じ「しろうお」でもハゼ科のシロウオと違って旬が長い。

旬 出回る時期

種類

イシカワシラウオ

三陸から九十九里にかけて、外洋に面した淡水の影響のない海で春にとれる。流通ではシラウオとあまり区別されず、どちらも味がよく高値です。

月もおぼろに、白魚の篝

東京「月もおぼろに白魚の篝もかすむ春の宵」。河竹黙阿弥の歌舞伎『三人吉三廓初買』で、お嬢吉三が口にする名せりふです。この篝火こそ白魚漁の火。春、産卵のために大川(隅田川の河口から千住大橋あたり)へ集まる白魚を、火をかかげてすくっていました。
歌川広重『名所江戸百景』「永代橋佃しま」(安政4年)
歌川広重『名所江戸百景』「永代橋佃しま」(安政4年)写真: 歌川広重(国立国会図書館デジタルコレクション)(Public domain)
東京江戸での漁の盛りは、冬から春の佃島の沖。夜に篝火を焚いて魚を寄せ、四つ手網ですくい上げた。歌川広重の『名所江戸百景』「永代橋佃しま」には、その白魚舟が描かれています。同じ百景の「八ツ見のはし」、いまの日本橋の一石橋あたりにも白魚舟がいる。東京駅の北で、白魚をとっていたわけです。江戸前の白魚は、昭和の初めまでとれていました。
江戸時代には、白魚を贈り合う風習もありました。隅田川をかなり上まで遡り、千住でもとれた。神田、上野、深川、本所と、江戸の庶民が暮らす町の魚だったのです。
関東の人は、白魚の旬を冬だと思い込んでいます。江戸の漁の盛りが冬から春だったから。ところが北海道では、冬になると白魚のすむ汽水域が氷に閉ざされてしまう。漁は春と秋の2回です。

海苔の帯を締めて

4〜5本を束ねて握り、海苔の帯をかける。これが江戸前の古くからの技です。細すぎて帯では握れない小さなものは、軍艦巻きになる。「もっと大きくなって、海苔帯くらいのほうがいい」と、軍艦を嫌う職人もいます。
白魚の苦みは、うま味と同時にやってくる。苦みには甘みがついてくるから、シャリと合わさって、口いっぱいに広がります。舌にのせたとたん、海苔の風味をものともしない独特の香り。
死ぬと少しずつ白くなるので、皮肉にも「白魚」でないほうが新しい。夏から初秋には、春に生まれた稚魚が4cmほどに育ちます。透きとおった小ぶりを軍艦にして、薬味はしょうが。プリッとした食感が心地いい。
生の軍艦はぷちぷちとして、うま味とかすかな苦み。短時間塩ゆでして釜揚げにすると、苦みが薄れて甘味が増します。

白魚と素魚は別の魚

ややこしいのが「白魚(シラウオ)」と「素魚(シロウオ)」。白魚はサケ目シラウオ科、素魚はスズキ目ハゼ科で、まったくの別物です。春先に川を上る素魚は、躍り食いにするのが主。さらに琵琶湖の稚アユ「ひうお」や、色の抜けた稚魚の「しらす」とも、昔からよく取り違えられてきました。
漢字で「鱠残魚」とも書きます。『和漢三才図会』は、身は箸のように丸く、銀のように白く、鱗がなく、すでに鱠(なます)にしたような魚だ、と書く。目に黒い点が二つあるだけ。うまい見立てです。
寿命はたった1年。2月から5月に産卵して、そのまま死んでしまう。だから産卵期が近づくほど大きくなり、雌のほうが大きく育ちます。最大で10cmほど。
白魚は「一ちょぼ、二ちょぼ」と数えます。樗蒲(ちょぼ)はサイコロの目を全部足した21から1を引いた、20尾のこと。

桑名の芭蕉、頭の葵

桑名の白魚の紅梅煮(佃煮の一種)
桑名の白魚の紅梅煮(佃煮の一種)写真: Antenna-taro(CC BY-SA 4.0)
三重「明ぼのやしら魚しろきこと一寸」。松尾芭蕉が『野ざらし紀行』の旅で、桑名の本統寺に泊まり、まだほの暗い浜に出て詠んだ句です。桑名の白魚は江戸時代、将軍家にも献上されていました。
白魚の頭には葵の紋がある、という話が伝わっています。家康の故郷・三河の白魚が家康について江戸まで来て、隅田川に放たれた恩で頭に葵がついた、と。当時の文献はなく、どう見ても葵には見えない、まったくの俗説です。
島根島根県の宍道湖には「宍道湖七珍」と呼ばれる名物があります。コイ、あまさぎ(ワカサギ)、ウナギ、スズキ、しじみ、もろげえび(ヨシエビ)、そして白魚。松江の冬の名物「蒸し寿し」は、錦糸卵を散らしたシャリを器ごとせいろで蒸して温めたもので、上には白魚も並びます。
茨城茨城県の霞ヶ浦周辺では、揚がったばかりの白魚を塩ゆでして干した煮干しや、しょうゆと砂糖と水あめで甘辛く煮た佃煮が作られます。白魚は強く煮ても硬くならない。
内湾の埋め立てや護岸で、漁獲は減ってきました。春の魚の顔をしていても入荷は1年中あり、値段はやや高めで安定。時期によっては非常に高くなります。ふつうのスーパーには並ばない魚です。

天ぷら、卵とじ、昆布締め

生で食べるときに知っておきたいのが、横川吸虫の幼生がついていることがある点。腹痛や下痢を起こすことがあります。
東京では、寿司ダネより天ぷら種としてのほうがはるかに大事な魚です。塩水で洗って水気をきり、小麦粉をまぶす。4〜5尾の尾をつまんで衣をつけ、高温で短く揚げます。さくっとした衣の中に柔らかな身、卵巣が甘くて、最後にほろ苦さ。
卵とじもいい。かつお節のだしを酒と薄口しょうゆで味つけし、白魚を入れてひと呼吸。溶き卵を流し入れます。火の通し加減は好みで。
大きめのものは昆布締めに。塩水で洗い、水気をきって戻した昆布に挟めば、2〜3時間で食べられます。柑橘を軽く搾るか、わさびをのせて。おいしい状態が長もちするので、数日かけて少しずつ楽しめる。

値段

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市場

  • シラウオ(市場)入荷が少なく、小型でもやや高値。大きく型のそろったものは非常に高い(年の記載なし)

『江戸前の旬』では

連載の第49話と、83巻の第4話は、どちらも題が白魚(シラウオ)。読者の感想には、白魚の手のひらづけ、10巻の白魚の桜蒸し、43巻の福岡での勝負に旬が出す蒸し白魚が挙がります。73巻では、白魚の握りが、筏の形をした求肥の和菓子「隅田川」の手がかりになります。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
シロウオ和歌山県新宮、大阪、伊勢湾ハゼ科のシロウオとは別の魚
シラオ北海道厚岸
シロイヨ富山県射水・氷見
アマサギ富山県射水市放生津潟・新湊
シラユオ岡山県各地
シラユ新潟県佐渡
フ島根県出雲
スベリ石川県今江潟・木場潟
メソゴリ石川県河北潟
シロヨ秋田県八郎潟・男鹿

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白魚とつながるタネ

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