寿司のデータベース

品書き / 寿司ばなし / しずまえ

静岡

しずまえ

江戸前があるなら、しずまえもある。静岡市は、駿河湾に面した自分たちの前浜をそう呼び、名前を商標にして、子どもたちに新聞を配っています。その前浜の魚は、寿司の椀にもなりました。用宗、清水、由比の三つの港と、日本一深い湾の話です。

江戸前があるなら

「江戸前みたいですね!」。静岡市は、自分のホームページでそう書いています。しずまえは、駿河湾に面した市の沿岸につけた愛称で、陸の市域と海のエリアの両方を指す。名前を売り出すPRが始まったのは、山あいの「奥静岡」を呼ぶ「オクシズ」より4年あと。平成22年に始まったオクシズを追いかける形でした。市の計画は、二つは川でつながっている、と書きます。オクシズの自然を守り育てることが、しずまえの海の恵みを生むのだ、と。
この名前は、静岡市の登録商標です。商標登録は令和4年1月20日。使うには市への届出が要り、使用料は無料。基準は細かくできています。魚なら、しずまえで揚がったもの。加工品なら、原料の水産物がすべてしずまえのもの。ただし焼津漁港で揚がって市内で加工したマグロは含めてよく、練り製品は水産物原料の50%以上で足ります。寿司屋が品書きに「しずまえ」とつけるなら、水産物の具材が全部この基準を満たしていること。客に聞かれたら、産地の書かれた納品書などを見せて説明する決まりです。

三つの港と、日本一深い湾

三つの港には、それぞれ看板があります。用宗のしらす、清水のマグロ、由比・蒲原の桜えび。清水港は冷凍マグロの水揚げ日本一で、由比漁港は桜えびの水揚げ日本一。用宗漁港のまわりには、しらすを加工して売る店が集まっています。おもしろいのは、清水港に揚がる遠洋漁業の冷凍マグロも、市がしずまえ鮮魚として売り出していること。前浜でとれた魚だけでなく、前浜の港に揚がった魚まで、この名前の内側に入っています。
その魚を育てる駿河湾は、いちばん深いところで水深2,500メートル。日本一深い湾です。標高3,776メートルの富士山との高低差は6,000メートルを超える。海底は急に落ち込み、湾の奥では海岸からわずか2キロメートルほどで水深500メートルに達します。だから陸のすぐ近くに、太平洋深層水をはじめとする三種類の深層水がある。冷たく、きれいで、栄養に富んだ水です。

しずまえを、ひと椀に

寿司の側からも、しずまえに手が伸びました。寿司酢のミツカンが運営する「すしラボ」の「湾椀すし」は、湾ごとの土地の味をひとつのお椀に映す企画です。決まりは、シャリにその土地の食材を使うこと、湾前でとれた魚介に里の恵みを合わせること、手軽に作れてお椀で食べること。第1弾の富山湾に続く第2弾が、静岡市の駿河湾でした。2025年11月1日、寿司の日に、清水区のエスパルスドリームプラザで開かれたトークショーで発表されています。
この椀は、まずシャリが変わっています。合わせ酢に、静岡の特産のみかんの果汁を加える。その上にマグロの刺身とたたき、アジ、タイ、釜揚げしらす、素干しの桜えび。ツナ缶も使い、ゆで卵は濃いめの緑茶と白だしに漬けた「だし茶玉子」。みかんの缶詰が二粒、わさびも添えます。そして醤油ではなく、塩とオリーブオイルをかけて食べる。具は季節で替わるものとして考えられています。
発表の舞台になったドリームプラザには、寿司屋が並ぶ「清水すし横丁」があり、その2階は「日本唯一のすし博物館」とうたう清水すしミュージアム。名誉館長は、寿司の研究で知られる日比野光敏です。

子どもたちに

名前を根づかせる相手は、子どもたちです。市は「しずまえ新聞」を、市立の全小学校の児童と全中学校の生徒に配っています。年に2回、約5万人。これまでに24回。紙面には桜えび秋漁の解禁、しらすのせりの流れ、マグロの尾切り選別、それに新しくしずまえ鮮魚の仲間入りをした「三保サーモン」「三保松さば」「三保松はぎ」「三保松ひらめ」が登場します。市民意識調査でしずまえを知っている人は、平成30年度の50.7%から令和4年度の62.2%へ。令和12年度の目標は80%です。
すしラボの「駿河湾しずまえからの挑戦状」は、遊びながら学ぶ企画です。静岡市とドリームプラザと組んだ、駿河湾の迷路です。桜えびゾーン、まぐろゾーン、しらすゾーンを抜け、アマダイ、タチウオ、カワハギ、ヤマトカマス、サワラのそばを通って、由比漁港、清水港、用宗漁港のどれかにたどり着けばゴール。前浜の魚の名前を、遊びながら覚えていく仕掛けです。

次に読みたくなる

ほかの寿司ばなし

このページの出典(9件)