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品書き / 白身

サワラ鰆

さわら/Japanese Spanish mackerel

魚へんに春。瀬戸内海に春の産卵でどっと入ってくる魚だから、この字が当てられました。ところがいまでは1年中とれ、旬の区切りはほぼ消えています。身は淡白でも、うま味は皮と皮の下にある。だから寿司屋は皮目をあぶって握る。そこがこの魚のいちばんうまいところです。

サワラ
サワラ写真: re_nebel(CC BY 4.0)
サワラの握り
サワラの握り写真: takaokun(CC BY 2.0)

旬

旬と言える区切りはなくなっています。国内のあちこちから、1年を通して味のいい個体が届く。大ぶりのものは2〜3月、東京湾では秋にも脂ののったものが揚がります。

旬 出回る時期

種類

サゴシ(サゴチ)

別名 狭腰

小型の若魚。1年を通して入荷が多く、味もあまり変わりません。脂は控えめで、総菜向き。

ヤナギ

50〜70cmほどの中型。大きさの境目は地域によって違い、高知では30cm前後までを指します。

サワラ

成魚。2kgを超えると、安定した高級魚になります。

うま味は皮の下にある

サワラの弱点は、味が平たくクセがなく、うま味が薄いこと。だから幽庵焼きや西京漬けに向く。その平たさを破るうま味が、皮と皮の下にあります。皮目をあぶって握れば、香ばしさと一緒に、シャリの上でとろっと溶けていく。
東京2013年の10月、11月には東京湾産のサワラが続けて入り、どれも脂がのっていました。皮目をあぶると、皮の下から脂がしみ出して粒が踊るのが見える。冷めないうちに握って、すぐ口へ。表面がとろりととろけ、あぶった香りが鼻に抜けます。
脂ののった大ぶりのサワラは、とろっとして甘い。シャリと合わさりながら、脂がまた溶け出してくる。ところが関東では長く、高いだけの魚と見られてきました。足が速いうえ、昔はいいサワラが手ごろな値で手に入らなかった。市場の寿司職人でさえ、握るのはこれが初めてでした。
サゴシ(サゴチ)若魚のサゴシも、皮目をあぶってそぎ切りにし、シャリにのせると実にいい。薬味はわさびより、しょうがのほうが合います。
島根サワラといえば瀬戸内海を思い浮かべがちですが、島根県松江市も国内有数の産地です。秋でも島根半島まわりのサワラには脂がのる。松江の寿司屋では、あぶったサワラが、一かんで完結した料理として出てきます。

春の魚、ではなくなった

魚へんに春の「鰆」は、瀬戸内海や関西で生まれた字でしょう。このあたりでは、産卵のために瀬戸内に入ってくる春が、いちばんサワラのとれる時期でした。春の季語にもなっている。ただし春は味の旬というより、魚屋にあふれるほど並んで安くおいしい時期です。
昔は西日本の魚でした。2000年前後までは、瀬戸内海で春の産卵回遊をとるのが中心。それがいまでは東京湾でも揚がり、東北でも水揚げが増え、日本海で大量にとれるようになった。本州から南のどこでもとれ、スーパーでも普通の魚です。「鰆」の字も、春の季語も、実態には合わなくなりました。
大阪江戸時代の大坂では、端午の節句の焼きものに塩ざわらを使った、と『浪花の風』に書かれています。
中国のスーパーに並ぶサワラ
中国のスーパーに並ぶサワラ写真: Micromesistius(CC BY-SA 3.0)
北海道から朝鮮半島、中国の東シナ海、台湾まで見られる大型魚で、日本だけでなく韓国や中国、台湾でも大事な食用魚です。国産のほか輸入もされ、需要の高い魚の代表格。

狭い腹、狭い腰

古い標準和名は「サハラ」。漢字にすれば「狭腹」「小腹」で、ほっそりした体を表した名前と見られます。小型を呼ぶ「サゴシ」も「狭腰」。腹も腰も細い魚です。
大きくなるにつれて、サゴシ、ヤナギ、サワラと名前が変わる出世魚。サゴシの名は、1712年の『和漢三才図会』にも出てきます。
石川ややこしいのが金沢。ここではマカジキのことを「サワラ」と呼ぶので、本物のサワラは「ヤナギサワラ」と呼び分けます。

相場は岡山で決まる

岡山とりわけサワラ好きなのが岡山県。刺し網の漁獲が減ったいまも好んで食べられ、「サワラの相場は岡山で決まる」。そんな言葉まであるほどです。魚屋やスーパーには、切り身、5mmほどの厚さに切って塩を振ったものなど、いろいろな形で並びます。
岡山岡山県日生(ひなせ)の「さわらのこうこずし」は、明治の中ごろから豊漁を祝い、漁の安全を願って作られてきた寿司です。そぎ切りにしたサワラに塩をして5〜6分、酢に30分ほど漬ける。シャリに、そのサワラと、せん切りのたくあん(こうこ)、グリーンピースを混ぜ、木の芽を飾ります。しょうぶの節句、祭り、船おろしには必ず作る。
香川春の瀬戸内海でとれたサワラの卵巣は、からすみになります。香川県の名物です。
大分大分県の「りゅうきゅう」は、生の魚の切り身を、すりごまとしょうゆ、みりんなどのたれに漬けて、ご飯にのせる料理。佐伯市などでは、熱いご飯にのせるので「あつ飯」と呼びます。サワラもその魚のひとつ。
徳島徳島県では、冠婚葬祭の吸いものにサワラやハマチを入れます。すまし汁で煮るとほろほろ崩れて、甘味がある。

中落ちも白子も

家でいちばんおすすめなのは、皮目をあぶる焼霜造り。三枚に下ろし、小さいものは血合い骨を抜き、大型は血合いを切り取る。皮目をあぶって冷水で粗熱を取り、水気をよく拭いて切ります。皮がやわらかくうま味があるので、小型のサゴシなら刺身よりうまいくらい。
上等のサワラは中落ちまでうまい。中骨まわりの身をスプーンでかき取り、ねぎ、みょうが、青じそと叩くだけ。包丁を少し入れるだけで、うま味がぐんと増します。
サワラの西京焼き
サワラの西京焼き写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
西京漬けは、白みそなら切り身に塩を振って、出てきた水分を拭いてから漬け込む。漬け地はみそと酒に、好みで砂糖やみりん。焦がさないよう、じっくり焼き上げます。
白子と真子も捨てないで。白子は血管を取って片栗粉をまぶして揚げ、だしをかければ揚げ出しに。表はさくっ、中はクリーミー。真子は酒・砂糖・しょうゆ・水の煮汁に落として、短時間で煮上げると、ほくほくになります。

値段

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市場

  • サワラ(市場)大きいほど高く、大型は高級魚。若魚のサゴチは1年を通して入荷が多い(年の記載なし)

『江戸前の旬』では

読者の感想に挙がるサワラの仕事は、34巻の鰆の箱寿司、56巻の、鰆の握りに炙った鰆の唐墨をまぶす一品、68巻の鰆の昆布締め。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
サゴシ和歌山県、島根県西部、徳島県阿南市、高知県宿毛市、鹿児島県種子島サゴシ(サゴチ)。小型魚・若魚
サゴチ(狭腰)関東サゴシ(サゴチ)。1kg弱
サゴセ徳島県海部郡海陽町サゴシ(サゴチ)。1kg弱
ヤナギ徳島県阿南市、高知県ヤナギ
ヤナギサワラ(柳鰆)石川県金沢金沢ではマカジキを「サワラ」と呼ぶのに対して
ホンサワラ(本さわら)東京都北区、島根県東部他のサワラ類と分けて
サーラ沖縄県南城市
カマチ福岡県玄海
グッテリ愛媛県川之江
オキサワラ長崎県対馬

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