寿司のデータベース

品書き / 光り物

アジ鯵

あじ/Japanese horse mackerel

流通でただ「アジ」と言えば、マアジのこと。光り物の代表格です。脂ののったものなら、ほどよい硬さに脂の甘さと、背の青い魚らしいうま味。腹の皮の下の脂は、舌の上でとろけます。以前はたいてい酢で締めていましたが、いまは塩をごく短くあて、酢にくぐらせる程度にとどめる店もあります。網で取れば大衆魚。関あじのような一本釣りなら、れっきとした高級魚です。

マアジ(神戸須磨シーワールド)
マアジ(神戸須磨シーワールド)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
アジの握り(ホノルルのSushi Sho)
アジの握り(ホノルルのSushi Sho)写真: T.Tseng(CC BY 2.0)

旬

旬は4月から8月。ただしこれは、脂ののった個体がたくさん、安定して取れる時季という意味です。産地によっては、それ以外の月にも脂ののったアジがいる。

旬 出回る時期

皿までなめる、なめろう

アジのなめろう
アジのなめろう写真: Hykw-a4(CC BY-SA 3.0)
千葉千葉県房総の「なめろう」は、揺れる船の上で漁師が作った料理。醤油ではこぼれてしまうので、味噌を使いました。皿をなめるほど旨い、だから「なめろう」。家で作るなら、三枚におろして皮を引いたアジを1cm幅に切り、味噌・長ねぎ・しょうが・しそをのせて、形がほとんど無くなるまで包丁でたたきます。
アジのさんが焼きを海苔で包んだ握り(すし銚子丸)
アジのさんが焼きを海苔で包んだ握り(すし銚子丸)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)
千葉なめろうを焼くと「さんが焼き」になります。名前の由来は二つ。漁師が山仕事に持って行き、アワビの殻に入れて山小屋で焼いたので「山の家(さんが)」の料理。千葉県に伝わる話です。もう一つは、千葉市の「寒川」でよく作られたから。
神奈川アジのたたきのルーツは、漁師料理の沖膾(おきなます)。全国に広まったのは1965年ごろです。新宿の高級料亭の板前が、小田原で漁師のたたきに感動して、自分なりに仕立て直したのがきっかけ。これでマアジの値段が跳ね上がった、という見方もあります。

「味がいいからアジ」を疑う

「味がいいからアジ」。よく知られた語源ですが、1980年代に市場で一度聞いただけの俗説だ、とする見方もあります。「あじ」自体は意味を持たない古い魚名で、延喜式にはすでに「阿遅」と出てくる。
漢字「鰺」のつくりの「参」は、旧暦3月(新暦の3月下旬〜5月初旬ごろ)のこと。この頃がマアジの旬だから、という読み解きもあります。
アジも小鰺も、夏の季語。

塩は数分、あとは酢にくぐらせるだけ

東京塩を振って置くのは、わずか数分。人形町「㐂寿司」の四代目は、表面に水分が浮いた頃合いで、もう酢にくぐらせます。塩は余分な水分と雑味を抜くためのもの。冷蔵技術が進んだいまは、生でも食べられるからです。同じ酢〆でも、江戸時代とは塩や酢の時間が目に見えて違います。
小ぶりなアジを選び、片身で1貫を握る店もあります。シャリにかませるのは、わさびではなく生姜と細かく刻んだあさつき。皮は握る直前にはぎ、身の上に飾り包丁を入れて煮切りを塗ります。
アジは古くから東京湾でもよく取れた魚です。塩を振って酢に漬ける「酢〆」は、江戸前寿司の古典的な仕事として広まりました。小田原名物の「小鯵の押し寿司」も、この流れに通じるもの。

生けすを上から見て値を決める

関あじの刺身(大分市佐賀関産)
関あじの刺身(大分市佐賀関産)写真: 大分帰省中(CC BY-SA 4.0)
大分「関あじ」を名乗れるのは、大分市佐賀関沖の速吸瀬戸で一本釣りされ、佐賀関に水揚げされたものだけ。売り買いは「面買い(つらかい)」で、生けすの魚を水面から見て、重さと品質を見極めて値を決めます。そして活け締めにして出荷。
アジには、ブランドがいくつもあります。取れる場所や扱いで名乗るのが、愛媛県伊方町の「岬あじ(はなあじ)」と大分県の「関あじ」。取れる時期で名乗るのが、山口県萩市の「瀬付きあじ」。脂質を測って選ぶのが、島根県浜田市の「どんちっちあじ」。
兵庫夏に好んで使うのは淡路で取れたアジ、という店もあります。腹側だけでなく全体に脂がのって、身がほんのり白っぽい。ただし、その店でも優先するのは産地より品物の質です。

東は腹開き、西は背開き

静岡アジの開き干しは、東日本なら腹開き、西日本なら背開きが多い。生産量日本一は静岡県沼津市で、使うのは主に山陰から九州のマアジです。
大分大分県の「あつ飯」「りゅうきゅう」、福岡県の「茶漬け」。どれも生の切り身をすりごま・醤油・みりんなどのたれに漬け、ご飯にのせて食べるもので、アジでもよく作られます。
アジ、サバ、イワシ、サンマなどには、アニサキス幼虫が寄生していることがあります。ふだんの料理で使う食酢や塩漬け、醤油やわさびでは死にません。防ぐには、-20℃で24時間以上の冷凍か、加熱を。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • くら寿司「あじ」(一皿110円からの店)200円2026-09-25 時点
  • くら寿司「あじ(一貫)」(一皿110円からの店)110円2026-09-25 時点
  • はま寿司「光り物三種盛り(あじ・とろいわし・しめさば)」(地域限定)231円2026-09-25 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「真あじ」お好み1貫(税込)440円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「あじ」おこのみ1貫(税込)250円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「あじ」1個(グランドメニュー、税込)217円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「あじ」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)198円2026-09-29 時点

『江戸前の旬』では

アジは連載の早くから話の題になっています。第10話は「幻のアジ」、第56話は「キアジ」。6巻では、釣り船の船頭がこしらえたキアジのなめろうに旬が感心し、柳寿司に来たキアジにくわしい客に、なめろうの寿司を出します。なめろうの隠し味はノビル。109巻では、春から初夏の極上のタネの先頭にマアジがいます。

読者の感想を拾うと、1巻からおろし生姜を挟んだアジの握りが出てきます。24巻では自分で釣り上げたロウニンアジの握り、54巻ではキアジの握りに辛味大根、75巻では安くて旨い小アジの寿司。

単行本の後半にも、80巻の第1話「黄金アジ」、85巻の第1話「クロアジ」と、アジは巻の頭に置かれています。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
ジンダ神奈川県小田原市幼魚。開き干しにもする
ジンタ/ジンタアジ千葉県館山市、関東の市場10cm弱
ゼンゴ関東の市場、愛媛県宇和島市、高知県、大分県中津市10〜12cmの幼魚
マメアジ(豆鯵)東京都、神奈川県など日本各地
トッカアジ/トッパク兵庫県南あわじ市沼島、徳島県大型。『魚鑑』(1831)にも紀州の「とつか」、土佐の「とつぱ」が出てくる
オニアジ(鬼鯵)兵庫県尼崎市・明石・南あわじ市沼島大型。沼島では1kgを超えるもの
シモクイアジ(霜くい鯵)相模湾初冬の味の落ちた大アジ
アジゴ徳島県、高知県小さいもの
ヒラアジ(平鯵)兵庫県南あわじ市沼島、徳島県鳴門市マルアジに対して
ジンタンアジ新潟県新潟市全長10cmほど

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