アジ鯵
あじ/Japanese horse mackerel
流通でただ「アジ」と言えば、マアジのこと。光り物の代表格です。脂ののったものなら、ほどよい硬さに脂の甘さと、背の青い魚らしいうま味。腹の皮の下の脂は、舌の上でとろけます。以前はたいてい酢で締めていましたが、いまは塩をごく短くあて、酢にくぐらせる程度にとどめる店もあります。網で取れば大衆魚。関あじのような一本釣りなら、れっきとした高級魚です。
旬
アジ
旬は4月から8月。ただしこれは、脂ののった個体がたくさん、安定して取れる時季という意味です。産地によっては、それ以外の月にも脂ののったアジがいる。
旬 出回る時期
皿までなめる、なめろう


神奈川アジのたたきのルーツは、漁師料理の沖膾(おきなます)。全国に広まったのは1965年ごろです。新宿の高級料亭の板前が、小田原で漁師のたたきに感動して、自分なりに仕立て直したのがきっかけ。これでマアジの値段が跳ね上がった、という見方もあります。
「味がいいからアジ」を疑う
「味がいいからアジ」。よく知られた語源ですが、1980年代に市場で一度聞いただけの俗説だ、とする見方もあります。「あじ」自体は意味を持たない古い魚名で、延喜式にはすでに「阿遅」と出てくる。
漢字「鰺」のつくりの「参」は、旧暦3月(新暦の3月下旬〜5月初旬ごろ)のこと。この頃がマアジの旬だから、という読み解きもあります。
アジも小鰺も、夏の季語。
塩は数分、あとは酢にくぐらせるだけ
東京塩を振って置くのは、わずか数分。人形町「㐂寿司」の四代目は、表面に水分が浮いた頃合いで、もう酢にくぐらせます。塩は余分な水分と雑味を抜くためのもの。冷蔵技術が進んだいまは、生でも食べられるからです。同じ酢〆でも、江戸時代とは塩や酢の時間が目に見えて違います。
小ぶりなアジを選び、片身で1貫を握る店もあります。シャリにかませるのは、わさびではなく生姜と細かく刻んだあさつき。皮は握る直前にはぎ、身の上に飾り包丁を入れて煮切りを塗ります。
アジは古くから東京湾でもよく取れた魚です。塩を振って酢に漬ける「酢〆」は、江戸前寿司の古典的な仕事として広まりました。小田原名物の「小鯵の押し寿司」も、この流れに通じるもの。
生けすを上から見て値を決める

アジには、ブランドがいくつもあります。取れる場所や扱いで名乗るのが、愛媛県伊方町の「岬あじ(はなあじ)」と大分県の「関あじ」。取れる時期で名乗るのが、山口県萩市の「瀬付きあじ」。脂質を測って選ぶのが、島根県浜田市の「どんちっちあじ」。
兵庫夏に好んで使うのは淡路で取れたアジ、という店もあります。腹側だけでなく全体に脂がのって、身がほんのり白っぽい。ただし、その店でも優先するのは産地より品物の質です。
東は腹開き、西は背開き
値段
回転寿司
- くら寿司「あじ」(一皿110円からの店)200円2026-09-25 時点
- くら寿司「あじ(一貫)」(一皿110円からの店)110円2026-09-25 時点
- はま寿司「光り物三種盛り(あじ・とろいわし・しめさば)」(地域限定)231円2026-09-25 時点
大衆店
- 築地玉寿司 築地本店「真あじ」お好み1貫(税込)440円2026-09-29 時点
- 築地すし鮮「あじ」おこのみ1貫(税込)250円2026-09-29 時点
- すしざんまい「あじ」1個(グランドメニュー、税込)217円2026-09-29 時点
- 梅丘寿司の美登利「あじ」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)198円2026-09-29 時点
『江戸前の旬』では
アジは連載の早くから話の題になっています。第10話は「幻のアジ」、第56話は「キアジ」。6巻では、釣り船の船頭がこしらえたキアジのなめろうに旬が感心し、柳寿司に来たキアジにくわしい客に、なめろうの寿司を出します。なめろうの隠し味はノビル。109巻では、春から初夏の極上のタネの先頭にマアジがいます。
読者の感想を拾うと、1巻からおろし生姜を挟んだアジの握りが出てきます。24巻では自分で釣り上げたロウニンアジの握り、54巻ではキアジの握りに辛味大根、75巻では安くて旨い小アジの寿司。
単行本の後半にも、80巻の第1話「黄金アジ」、85巻の第1話「クロアジ」と、アジは巻の頭に置かれています。
土地の呼び名
| 呼び名 | 土地 | 種類・メモ |
|---|---|---|
| ジンダ | 神奈川県小田原市 | 幼魚。開き干しにもする |
| ジンタ/ジンタアジ | 千葉県館山市、関東の市場 | 10cm弱 |
| ゼンゴ | 関東の市場、愛媛県宇和島市、高知県、大分県中津市 | 10〜12cmの幼魚 |
| マメアジ(豆鯵) | 東京都、神奈川県など日本各地 | |
| トッカアジ/トッパク | 兵庫県南あわじ市沼島、徳島県 | 大型。『魚鑑』(1831)にも紀州の「とつか」、土佐の「とつぱ」が出てくる |
| オニアジ(鬼鯵) | 兵庫県尼崎市・明石・南あわじ市沼島 | 大型。沼島では1kgを超えるもの |
| シモクイアジ(霜くい鯵) | 相模湾 | 初冬の味の落ちた大アジ |
| アジゴ | 徳島県、高知県 | 小さいもの |
| ヒラアジ(平鯵) | 兵庫県南あわじ市沼島、徳島県鳴門市 | マルアジに対して |
| ジンタンアジ | 新潟県新潟市 | 全長10cmほど |
次に読みたくなる
アジとつながるタネ
同じころに旬を迎えるタネ
出てきた寿司ことば
- 光り物皮が光る魚に、酢で締める仕事をほどこす。江戸前寿司でいう光り物です。言葉は江戸時代の握り寿司で生まれ、その色合いと酢で締める仕事に由来します。代表はコハダ。
- 酢締め(酢〆)魚に塩をしてから酢に漬けて締める、江戸前寿司の仕事。コハダ・サバ・アジなどの光り物に施します。
- 江戸前もとは江戸城の目の前の海のこと。埋め立てで元の海が消えるにつれて範囲が広がり、いまは東京湾全体を指します。寿司の世界では、その海の魚介に仕事を施して握る流儀の名でもあります。
- おまかせ何をどの順で握るかを、職人に任せる頼み方。その日の仕入れを見て、職人が1貫目から最後までの流れを組み立てます。昭和の初めごろまでは、こちらが当たり前の頼み方でした。
- 寿司の屋台握りを江戸じゅうに広めたのは、屋台でした。客は立ったまま、手でつまんで食べた。昭和の初めに黄金期を迎えたあと町から消えますが、いまのカウンターは、その屋台を店の中に持ち込んだ形です。
- タネ寿司の材料、とくにシャリの上にのせる魚介のこと。漢字で書けば「種」。これをひっくり返して読んだのが「ネタ」です。
- 湯呑みの魚へん寿司屋の大きな湯呑みにびっしり並ぶ、魚へんの漢字。季節を映した字もあれば、中国ではまるで別の魚を指す字、日本で作った字もある。読めると、待ち時間が楽しくなります。
このページの出典(23件)
- マアジ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 光ものの概念が変わる「㐂寿司」の鯵。(2019年7月16日)(dancyu)2026-09-25 閲覧
- マアジの腹身(875貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-30 閲覧
- なめろう 千葉県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-25 閲覧
- さんが焼き 千葉県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-25 閲覧
- 大分県の特産品(関あじ・関さば)(大分県)2026-09-25 閲覧
- アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚生労働省)2026-09-25 閲覧
- [一皿110円〜店舗]メニューのご案内|くら寿司(くら寿司株式会社)2026-09-25 閲覧
- メニュー紹介|はま寿司(株式会社はま寿司)2026-09-25 閲覧
- 築地玉寿司 築地本店(お品書き)|築地玉寿司グループ(株式会社玉寿司)2026-09-29 閲覧
- おこのみ一貫|築地すし鮮(すし鮮)2026-09-29 閲覧
- すしざんまい|メニュー(グランドメニュー)(株式会社喜代村)2026-09-29 閲覧
- グランドメニュー|梅丘寿司の美登利(梅丘寿司の美登利)2026-09-29 閲覧
- 江戸前の旬 6巻(作品紹介)|コミックシーモア(コミックシーモア(NTTソルマーレ))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 109巻(作品紹介)|コミックシーモア(コミックシーモア(NTTソルマーレ))2026-10-11 閲覧
- 10話:幻のアジ【江戸前の旬】|ラブすぽ(ラブすぽ(日本文芸社))2026-10-11 閲覧
- 56話:キアジ【江戸前の旬】|ラブすぽ(ラブすぽ(日本文芸社))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 1巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 24巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 54巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 75巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 80巻(出版社内容情報・収録話)|紀伊國屋書店(紀伊國屋書店)2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 85巻(出版社内容情報・収録話)|紀伊國屋書店(紀伊國屋書店)2026-10-11 閲覧

