石川県
石川の冬は、発酵の寿司の季節です。かぶらずしと大根ずし、奥能登のひねずし。能登の寒ブリ、金沢港の甘エビ、石川沖のノドグロが、約300年続く近江町市場に並びます。
ふだんの大根ずし
奥能登のひねずしと、いしる
奥能登の輪島、穴水、能登町には「ひねずし」があります。塩漬けの魚を米と一緒に漬け込んで熟成させた寿司で、“すしの元祖”とも言われます。土地によっては「すす」とも呼ぶ。むかしは川でとれるアユやウグイを使いましたが、いまはアジやサバが主流です。春に塩漬けにしておいたアジを、ご飯、山椒の葉、赤唐辛子と一緒に専用のずんどう桶に詰め、1〜2か月。夏祭りや秋祭りのころに、ちょうど食べごろになります。家ごとに作り方が違い、同じ人が漬けても塩加減や天気で味が変わる。落としぶたを開けるその瞬間まで、中の出来はわかりません。アジサバ鮎
寒ブリ、甘エビ、ノドグロ
能登の冬はブリ。富山湾に面した珠洲市から七尾市にかけての内浦では、戦国時代の末から定置網が続いているとされます。漁港から漁場まではわずか1〜2km。11月から2月にとれる7kgを超えるブリが「天然能登寒ぶり」です。脂身の脂は30%を超え、刺身が醤油をはじくほど。ブリ
甘エビも石川を代表するタネです。金沢港を中心に、橋立、富来、輪島、蛸島の港から船で3時間ほど。水深300m前後の漁場で底びき網を引きます。揚げたらすぐ船の上で2℃の冷たい海水で締め、子持ち・大・中・小に分け、氷詰めにして、港に着いたらセリへ。ここまでを日帰りで済ませるのが、甘さの秘密です。地元のおすすめは、産卵に向けてふくよかになる9月から12月。殻ごと煮る「具足煮」は石川の郷土料理で、JFいしかわはこれまでに、金沢市内の小中学校へ4万食の甘エビを給食で届けています。エビ
ノドグロ(アカムツ)が揚がるのは、暖流の対馬海流と寒流のリマン海流がぶつかる石川沖。加賀の橋立から、金沢、能登の富来、輪島、蛸島まで、定置網、刺網、延縄、底びき網と、いろいろな漁でとれます。白身なのに体脂肪は20%以上で、脂ののりはトロに負けない。秋口のものが特にいい。ノドグロ

石川県での呼び名
| 呼び名 | 一般には | 出典での土地の書き方 |
|---|---|---|
| クジ | アカアマダイ | 石川県、京都府丹後地方 |
| ジャハム(蛇はむ) | 鱧 | 石川県 |
| キミ | ホウボウ | 石川県宇出津 |
| シシツボ | ホウボウ | 石川県輪島 |
| バクチコキ | カワハギ | 福井県鷹巣、石川県七尾 |
| ヤナギサワラ(柳鰆) | サワラ金沢ではマカジキを「サワラ」と呼ぶのに対して | 石川県金沢 |
| スベリ | 白魚 | 石川県今江潟・木場潟 |
| メソゴリ | 白魚 | 石川県河北潟 |
| ハナアカ(鼻赤) | チダイ(花鯛)成魚 | 石川県宇出津 |
| スズ | サヨリ | 和歌山県、徳島県海部郡海陽町、石川県、大阪府堺 |
| 花見魚 | サヨリ春に旬を迎えるため | 石川 |
| 加能ガニ | ズワイガニ石川県産の雄。 | 石川県 |
| 香箱ガニ・甲箱ガニ | ズワイガニズワイガニの雌。 | 石川県 |
| くもこ(雲子) | マダラの白子(真だち) | 関東の料理店、石川県、関西 |
石川県の食べ方・名産
- ブリ石川石川・富山の、かつての前田家の領地には、娘が嫁ぐとその年の暮れに、嫁ぎ先と仲人へ大きなブリを1尾ずつ送るならわしが今も残っています。
- サワラ石川ややこしいのが金沢。ここではマカジキのことを「サワラ」と呼ぶので、本物のサワラは「ヤナギサワラ」と呼び分けます。
- カニ石川石川県では、資源を守るため、香箱ガニ(ズワイガニの雌)の漁期を11月6日から12月29日までに限っています。
- カニ石川香箱ガニは、ゆでて二杯酢で。これが定番です。
- トリガイ石川石川県七尾市では、湾内でとれるトリガイを珍重していて、値も高い。
- かぶらずし石川石川を代表する冬の寿司が、かぶらずしです。塩漬けにしたかぶらで塩漬けのブリを挟み、麹で作った甘酒をのせて1週間から10日ほど漬け込みます。シャリで握る寿司ではなく、漬物に近いなれ寿司の仲間。熟れたものを、何もつけずにそのまま食べます。「かぶらずしがないと正月が始まらない」という地元の人もいるほどで、年の暮れが近づくと、スーパーやデパートに並びます。
- かぶらずし石川始まりの話はいくつもあります。金沢の金石町の漁師が、豊漁と海の安全を祈って正月に食べ始めた。前田の殿様が湯治に訪れた温泉宿でふるまわれた。いちばん切ないのは、ブリを食べたい庶民の話です。江戸時代、とれたての「御用ブリ」はまず藩主に献上され、「ブリ一本、米一俵」というほどの高級品。そこで、かぶらに挟んで食べた、というもの。少なくとも江戸時代には食べられていて、年末に魚屋や八百屋が、得意先へ通い帳を替えに行くあいさつの手土産にしたことで広まりました。
- かぶらずし石川初冬の北陸では、「ブリおこし」と呼ばれる雷が鳴ります。これが鳴り響くと、ブリの定置網漁が本番。大きさで名前を変えるブリは昔から縁起物で、加賀藩から徳川将軍家へも贈られていました。そのブリ料理のなかでも、高級品とされるのがかぶらずしです。
- 柿の葉寿司石川石川の加賀では、柿の葉寿司は押しずしの一種です。広げた柿の葉に魚をのせ、その上にシャリ。魚をシャリの下にして、上に紺のりと桜エビを散らすのが本来の作り方です。魚はサバ、サケ、小ダイ、ブリ。一部の土地では鯨の皮も使います。葉は7〜8月ごろに取れるものが緑が濃く香りも高いので、この時期にまとめて取って冷凍し、1年分を蓄える家もあります。
- 柿の葉寿司石川加賀の柿の葉寿司には、前田利家の金沢城入城を祝って領民が献上したのが始まり、という話が残っています。いまもお盆や祭り、田植えのころ、人が集まるときのもてなしの寿司です。
- 笹寿司石川石川の加賀の笹寿司は、熊笹で包んだシャリと魚を、ひと晩押して寝かせたもの。米一升でおよそ50人前ができます。ひと昔前は近くの山から笹を取ってきて、何十人分もの笹寿司を一家総出でこしらえた。家で食べる分は、簡単に作る「おけらずし」ですませました。魚が手に入りにくい土地では、油揚げや塩くじらを使いました。
- 笹寿司石川白山のふもとの笹寿司は、笹の葉で包んで押す押し寿司です。白山市には、十文字に重ねた笹の葉で寿司を包む土地があり、それが周りへ広まったと考えられている。旧鶴来町のあたりでは、祭りに親戚が集まると笹寿司でもてなしてきました。タネはサケ、マス、シイラ、タイ、サバ、ときには油揚げ。そこに山椒の葉、しょうが、レモンの薄切り、桜エビ、ゴマ、紺のりをあしらいます。紺のりは、テングサを青く染めたものです。
- 笹寿司石川金沢の寿司弁当の会社「芝寿し」の看板商品「笹寿し」は、創業者・梶谷忠司のひらめきから生まれました。白山比咩神社の参道で売られていた笹餅をヒントに、餅をご飯に置き換えたのが始まりです。
- 笹寿司石川白山のふもと、旧鶴来の家の作り方。笹120枚に、米1升。笹は表も裏も洗って拭き、サケとシイラの切り身は酢で締める。大根は2cm角の薄切りにして、らっきょう酢にひと晩漬けておく。米はかために炊いてシャリにし、60個のおにぎりに。笹を60枚並べ、大根の酢漬けにシイラを、寿司しょうがにサケを重ねて20個ずつ、味つけしたいなり揚げを20枚置く。その上におにぎりをのせ、いりごまと桜エビを散らして笹で包む。寿司桶に並べて重石をし、ひと晩おけばできあがり。きれいな形に仕上げるコツは、桶に並べるときの丁寧さです。
- かにかま石川かにかまは、クラゲになりそこねた食べ物です。1960年代の後半、中国産のクラゲの輸入が激減し、困った珍味業界から能登のスギヨに「人工クラゲ」の注文が来た。見た目も食感もいったんは再現できたのに、醤油をつけるとコリコリ感が消えて柔らかくなってしまう。
- かにかま石川試行錯誤のうちに、刻んだ失敗作を束ねて食べてみたら、カニの脚の身にそっくりだった。カニが身近な能登で育った人の発見です。味や色を付けやすいように本業の練り物の原料・すり身を使うことにしてから開発は順調に進み、1972年、世界初のかにかま「かにあし」が生まれました。ほぐしたカニの身のような、フレーク状でした。
石川県の寿司ばなし
このページの出典(34件)
- かぶらずし 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 大根ずし 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- ひねずし 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 近江町市場|ほっと石川旅ねっと(石川県観光連盟(ほっと石川旅ねっと))2026-09-29 閲覧
- いしる鍋 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- さわらの昆布じめ 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 天然能登寒ぶり|石川県|全国のプライドフィッシュ(全国漁業協同組合連合会(プライドフィッシュ))2026-09-29 閲覧
- いしかわの甘えび|石川県|全国のプライドフィッシュ(全国漁業協同組合連合会(プライドフィッシュ))2026-09-29 閲覧
- いしかわのノドグロ|石川県|全国のプライドフィッシュ(全国漁業協同組合連合会(プライドフィッシュ))2026-09-29 閲覧
- アカアマダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ハモ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ホウボウ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- カワハギ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- サワラ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- シラウオ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- チダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- サヨリ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ズワイガニ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 香箱ガニ|旬のさかな(JFいしかわ(石川県漁業協同組合))2026-09-25 閲覧
- マダラ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 白子の食べ方4選と白子の下処理|銀座渡利(銀座渡利)2026-09-25 閲覧
- ブリ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- トリガイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 押しずし 石川県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 柿の葉寿司|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- 石川県「柿の葉寿し」JA加賀女性部|旬を味わう(JAグループ)2026-09-29 閲覧
- 石川県「柿の葉寿し」JA加賀女性部|旬を味わう(JAグループ)2026-09-29 閲覧
- 笹寿司とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉プラス』、講談社『日本の郷土料理がわかる辞典』)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- 石川県「笹寿司」JA白山女性部|旬を味わう(お手軽レシピ)|JAグループ(JAグループ)2026-10-09 閲覧
- 笹寿司|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- 芝寿し物語|芝寿し(芝寿し)2026-10-09 閲覧
- カニカマ誕生50周年 生みの親・スギヨ 4/20からキャンペーン(プレスリリース、2022年4月19日)(株式会社スギヨ)2026-09-29 閲覧
- カニカマ物語② 誕生編「かにあし」(2023年8月9日)(株式会社スギヨ(note))2026-09-29 閲覧
- スギヨの歴史(株式会社スギヨ)2026-09-29 閲覧