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品書き / 魚卵・ウニ

とびこ飛子

とびこ/Flying fish roe (Tobiko)

トビウオの卵です。1973年、数の子の代わりとして兵庫県の会社が商品にしたのが始まり。イクラ高騰の北海道で火がつき、いまや海外でも引っぱりだこで、数の子をしのぐ値がつくほどになりました。ぷちぷちの食感と、自由に染められる色が武器です。

ハマトビウオ(トビウオの仲間)
ハマトビウオ(トビウオの仲間)写真: Dieno(Public domain)
色をつけたとびこの軍艦(黒・緑・橙・黄)
色をつけたとびこの軍艦(黒・緑・橙・黄)写真: roger jones(CC BY 2.0)

数の子の代わりに生まれて

とびこは、数の子の代わりとして生まれました。1968年、兵庫県芦屋の水産加工会社かね徳が、インドネシアでトビウオの卵に目をつける。現地のトビウオ漁では卵がほとんど使われていなかったのです。これを数の子のバラ子のように使えないかと試行錯誤し、1粒ずつばらして乾燥させ、味をつけた「とびっこ」を1973年に商品にしました。
北海道火がついたのは北海道です。ちょうどサケの不漁でイクラが高騰していた時期で、しょうゆ漬けが人気になり、そこから全国へ。いまでも消費量は北海道が段違いに多く、ご飯にしょうゆ漬けのとびこをかけて食べるほどの定番です。
「とびっこ」は、じつはかね徳の登録商標。そのため、ほかの会社の品は「とびこ」や「とびらん(飛卵)」の名で売られています。

ぷちぷちの正体

持ち味は、あのぷちぷち。直径1〜2mmほどの小さな粒で、魚卵のなかでは皮が固いから、噛むたびにはじけます。イクラより小粒で、数の子よりは大粒。魚卵には珍しく、有精卵でもあります。
緑に色づけしたとびこの軍艦巻き
緑に色づけしたとびこの軍艦巻き写真: Jeremy Keith(CC BY 2.0)
とれたての卵は、そのままでは味が薄い。だから味をつけ、色もつけます。オレンジや黄色だけでなく、青や緑に染めたものもある。黒く染めれば「人工キャビア」の出来上がりです。
店で見かける加工品は、鮮やかなオレンジに染められ、アミノ酸や砂糖でかなりきつい味がついています。では、本当のトビウオの子はどんな味か。ホソトビウオの卵巣を取り出し、塩をして2〜3時間。塩抜きしてから、酒と少しの味醂と醤油の地に一晩漬けると、なかなか味わい深い。
寿司ダネの「飛び子」は、もとはホソトビウオの卵巣でした。ホソトビウオは春から夏にかけて日本海などへ産卵にやってきて大量に揚がる、トビウオのなかでいちばん大事な種類。夏には卵巣そのものもよく食べられています。

代用品から高級魚卵へ

かつては脇役だったとびこが、いまや数の子やシシャモの卵をしのぐ高値です。原料価格は15年ほど前の3〜4倍。豊洲市場では2026年1月中旬、宮城県の業者が作った500gパックが二千数百円で、2000年ごろは900〜1000円だった品です。海外に買い負けて、数の子のバラ子やシシャモの卵に切り替える動きまで出ています。
数の子の代用として生まれたとびこが、いまでは高騰したイクラの代わりに使われることもある。代用品が、高級魚卵の仲間入りをしつつあるのです。
いま出回るとびこの多くは、インドネシアとペルーから。インドネシア産は小粒で皮が口に残らず、ペルー産は粒が大きいぶん皮も固く、歯ごたえが強い。原産国の人たちは、親のトビウオは食べても卵はほとんど食べず、ほぼ輸出に回します。
韓国のアルバプ(魚卵をのせたご飯)
韓国のアルバプ(魚卵をのせたご飯)写真: 장미의 뜰(CC BY 2.0 kr)
海外でも人気です。アメリカではカリフォルニアロールやサラダに、フランスではカナッペに。中国では鍋の具、韓国ではビビンバなどに入れて、どちらも家庭料理でたっぷり使われています。
よく似た代用品が「ししゃもっこ」。カラフトシシャモの卵で、「まさご(真砂子)」とも呼びます。回転寿司では、北海道以外ではカラフトシシャモの卵の「つぶっこ」、北海道ではとびこ、と地域でタネが分かれるチェーンもあります。

アゴと呼ばれる親

長崎九州や日本海側では、トビウオを「アゴ」と呼びます。焼いて干した長崎の「焼きあご」からは、琥珀色の香ばしいだしがとれる。島根の「あご野焼き」は、ホソトビウオのすり身を炭火で1本ずつ焼き上げた練りものです。
山形山形県酒田の飛島には、ホソトビウオやツクシトビウオの卵巣を煮つけた「とびうおのちんちん煮」が伝わります。

台所のとびこ

カロリーは100gあたり約65kcal。イクラの約194kcalに比べて、ずっと軽い。ご飯のおともはもちろん、ちらし寿司の桜でんぶの代わりやサラダのトッピングにも使えます。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • はま寿司「とびこ」(北海道の店舗のメニュー)176円2026-09-25 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「とび子」お好み1貫(税込)275円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「とび子」おこのみ1貫(税込)141円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「とびっこ」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)110円2026-09-29 時点

市場

  • 豊洲市場 宮城県の業者が作ったトビウオの卵 500gパック(2026年1月中旬)二千数百円

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
アゴ島根県、京都府親のトビウオ(ホソトビウオ)の呼び名
マルアゴ(丸あご)兵庫県但馬地方、島根県親のホソトビウオ

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