数の子数の子・鯑
かずのこ/Herring roe
ニシンの卵巣を、塩漬けや天日干しにしたもの。粒がとにかく多いので、子孫繁栄の縁起物として正月や婚礼の席を飾ってきました。北海道のニシンは1955年ごろを境に激減し、いまの数の子はほとんどがカナダやアラスカなどからの輸入原料です。身上は、なんといってもプチプチの歯ざわり。


旬
数の子
江戸時代の『本朝食鑑』では、師走から正月にかけて出回る品。原料のニシンの旬は、寒い時季から春にかけてです。
旬 出回る時期
黄色いダイヤになった年
北海道明治から昭和の初めまで、北海道ではニシン漁が盛んでした。ところが1955年ごろを境にニシンが激減し、数の子は一気に貴重品へ。1950年代のこの激減で、「黄色いダイヤ」と呼ばれるようになりました。
いまの数の子や子持ち昆布は、ほぼすべてが輸入原料です。なかでも卵質がいいのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州やアラスカ南部のもの。塩数の子に向いています。
北海道数の子の加工の中心は、北海道の留萌市です。地元でニシンが獲れなくなったいまは、カナダやアラスカなどから原料を仕入れて加工していて、塩数の子は全国の約半分を占めます。1963年には、留萌の水産加工会社が過酸化水素で漂白する技術を確立しました。
国産の数の子は、戦後まもなくまで、干し数の子がほとんどでした。ニシンの漁獲が激減して値が跳ね上がると、市場は塩数の子ばかりになる。いまでは干し数の子はほとんど作られていません。水で戻すのに時間がかかり、色も褐色になるからです。
かどの子か、数の子か
「かずのこ」は、もとは「かどの子」。近世までニシンを「カド」と呼んでいた名残で、それがなまったというのが通説です。
ただ、これに異を唱える説もある。室町・安土桃山時代の用例はどれも「かずのこ」で、「かどのこ」とは書かれていない。だから文字通り「数の子」だ、という見方です。なお「カド」をアイヌ語由来とする考えは、言語学者が否定しています。
ニシンの漢字「鯡」は、魚に「非(あらず)」。米のとれない松前藩が、ニシンを年貢の代わりに取り立てたことと結びつけて語られる字です。古書にはもうひとつ、面白い説明があります。「二親(にしん)」は父母のこと。人に子が多いのは父母あってのことで、ニシンの数の子の多さには、ほかの魚がとてもかなわないから、というのです。
秀吉の膳と、吉宗の三つ肴
「かずのこ」が膳に出た記録は古く、1568年の『朝倉亭御成記』に、足利義昭をもてなした膳として見えます。1594年、豊臣秀吉が前田家にもてなされた膳にも並びました。それまでほとんど名の見えなかった数の子が、権力者の祝いの膳に出はじめる。元禄のころには、庶民の正月の祝い膳にも欠かせないものになっていました。
数の子・ゴマメ・黒豆を「三つ肴」として、庶民も安く新年を祝えるよう勧めたのは徳川吉宗だった、という話が伝わっています。
粒の多さにあやかって、数の子は子孫繁栄を祝う品として、正月のおせち料理や婚礼で重んじられてきました。
江戸時代には、ばらばらになった卵を集めて型で固めた「寄せ数の子」も作られ、幕府への献上品になりました。
プチプチか、干したものか
数の子の売りは、プチプチした歯ざわり。だから歯ごたえにやや欠けるタイセイヨウニシンの卵は、主に味付け数の子や総菜に回ります。
北大路魯山人は、塩漬けや生よりも、一度干した数の子がうまいと絶賛しました。余計な味をしみ込ませてはならない、とも。
ニシンが昆布に卵を産み付けた「子持ち昆布」は、珍味として尊ばれてきました。高級寿司店では寿司ダネにもなりますが、値は張ります。

塩抜きは3回に分けて
北海道塩数の子は、塩抜きから。留萌の加藤水産が勧める手順はこうです。水1000ccに食塩小さじ1(約5g)の薄い塩水を作り、数の子300gを3〜4時間浸す。塩水を作り直してもう一度3〜4時間、さらにもう一度作り直して6〜8時間。大きさで抜け方が違うので、こまめに味を見ます。
塩を抜きすぎると、苦みが出ます。そうなったら、塩抜きのときより濃い塩水に1〜2時間浸せば、苦みは消える。薄皮は塩抜きの前にむいておくと、塩が抜けやすくなります。
味付けの基本の一例です。塩抜きした数の子300gに対し、薄口醤油大さじ5・だし汁3カップ・酒大さじ1/2を一度煮立てて冷まし、そこへ漬ける。密閉して、冷蔵庫でひと晩置きます。
値段
回転寿司
- くら寿司「かずのこ軍艦」1皿(一皿110円からの店)110円2026-09-25 時点
- スシロー「数の子」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)180円2026-09-29 時点
大衆店
- 築地玉寿司 築地本店「数の子」お好み1貫(税込)440円2026-09-29 時点
- 築地すし鮮「数の子」おこのみ1貫(税込)442円2026-09-29 時点
- すしざんまい「数の子」1個(グランドメニュー、税込)371円2026-09-29 時点
- 梅丘寿司の美登利「特大数の子」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)385円2026-09-29 時点
『江戸前の旬』では
読者の感想によれば、129巻には干しカズノコの回があります。
土地の呼び名
| 呼び名 | 土地 | 種類・メモ |
|---|---|---|
| カド | 秋田(ニシンの呼び名) | 秋田でニシンをカドといい、その子で「かどの子」から「かずのこ」になったとされる。 |
| 黄色いダイヤ | 全国(通称) | ニシン激減後、数の子が希少品になったことから。 |
次に読みたくなる
数の子とつながるタネ
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このページの出典(13件)
- 数の子(Wikipedia日本語版)2026-09-25 閲覧
- ニシン|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 数の子/ニシン|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 数の子とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『日本大百科全書』、平凡社『改訂新版 世界大百科事典』『百科事典マイペディア』、日外アソシエーツ『事典 日本の地域ブランド・名産品』ほか)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- 松前漬とは|コトバンク(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』、平凡社『世界大百科事典』)(コトバンク)2026-10-09 閲覧
- 塩数の子の塩抜き方法(株式会社加藤水産(北海道留萌))2026-09-25 閲覧
- [一皿110円〜店舗]メニューのご案内|くら寿司(くら寿司株式会社)2026-09-25 閲覧
- 巣本店のメニュー|スシローのメニュー(株式会社あきんどスシロー)2026-09-29 閲覧
- 築地玉寿司 築地本店(お品書き)|築地玉寿司グループ(株式会社玉寿司)2026-09-29 閲覧
- おこのみ一貫|築地すし鮮(すし鮮)2026-09-29 閲覧
- すしざんまい|メニュー(グランドメニュー)(株式会社喜代村)2026-09-29 閲覧
- グランドメニュー|梅丘寿司の美登利(梅丘寿司の美登利)2026-09-29 閲覧
- 江戸前の旬 129巻の感想(森本 高司)|読書メーター(読書メーター(森本 高司))2026-10-11 閲覧