寿司のデータベース

品書き / 貝など

ホヤ海鞘

ほや/Sea squirt (Hoya)

「ホヤ貝」と呼ばれることもありますが、ホヤは貝ではありません。子どものころはオタマジャクシのように泳ぎ、脊索まで持つ、人間と同じ脊索動物の仲間です。甘・塩・酸・苦・旨の五つの味がそろう「海のパイナップル」。ただし鮮度が落ちるのが早いので、産地で食べるのがいちばんです。

マボヤ(築地市場)
マボヤ(築地市場)写真: bifyu(CC BY-SA 2.0)
ホヤの握り
ホヤの握り写真: Nesnad(CC BY-SA 4.0)

旬

初夏から盛夏。3月ごろから水揚げが始まり、春から夏にかけて餌をたくさん食べておいしくなる。

旬 出回る時期

種類

マボヤ

別名 真ぼや

宮城で養殖されるのはこちら。殻にいぼ状の突起があって、ときに角のようにとがる。身は黄色く、内臓がとりやすい。

アカボヤ

別名 赤ほや

北海道で水揚げされる、オレンジ色のホヤ。殻にいぼ状の突起がない。泥をかんでいるものが多く、食用に出回る量は少ない。

ホヤは貝ではない

ホヤの変態。上がオタマジャクシ形の幼生、下は岩に付いて親の形になっていく様子
ホヤの変態。上がオタマジャクシ形の幼生、下は岩に付いて親の形になっていく様子写真: The Cambridge Natural History(Kowalevsky ほかの図を改変)(Public domain)
ホヤは貝ではありません。俗に「ホヤ貝」と呼ばれても、貝の仲間とは分類がまるで違う。ホヤが属するのは脊索動物門で、人や魚、カエルと同じ「門」です。子どものホヤはオタマジャクシのような姿で泳ぎ回り、目の役をする眼点、背中を走る神経、脊索まで持っている。背骨のない動物のなかではいちばん進化していて、脊椎動物に近い生きものです。
泳いでいた幼生は、やがて海の底の岩にくっついて、二度と動かなくなる。親のホヤは、植物と見まちがえるような姿です。くっつく岩は海面より暗い海底にあるので、幼生は光を避ける性質を持っています。
ホヤは、体の中でセルロースを作ることができる、いま知られているただひとつの動物です。殻の6割ほどがセルロース。1990年代には、このホヤのセルロースを使ったスピーカーの振動板まで作られました。
研究者にも愛されています。2001年にマボヤから見つかった、筋肉を作る細胞を決める遺伝子の名前は「macho-1」。「マボヤのチョーおもしろい遺伝子-1」の略で、「マッチョマン」に似た読みになるように-1を付けた。2番はありません。

五つの味、海のパイナップル

名前の由来は二つ。ランプの火を覆うガラスの「火屋(ほや)」に形が似ているから。または、ヤドリギのことも「ほや」と呼び、その形に似ているから。昔は「老海鼠」「保夜」とも書きました。マボヤは、でこぼこした見た目から「海のパイナップル」。
ホヤ好きがまず挙げるのが、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五つの味がひとつにそろっていること。マボヤの身には、うま味のもとのグルタミン酸と、もうひとつのうま味成分の5'-GMPが、うま味を強め合う割合で含まれています。

握ってはみたけれど

握りにしてみた人もいます。市場でマボヤを手に取ると、仲買に「そんなもん握りでくえねぇだろ」。それならと寿司屋に持ち込み、割って身を取り出し、内臓をのぞいて、紙で巻いて水気を取ってから握ってもらった。味見した職人はしばらく黙り、「まあ、好きじゃないけど、面白いかもね」。持ち込んだ本人の感想は、どうにもおいしくない、でした。ホヤは寿司ダネとしては、かなりの変わり種です。
殻に盛ったホヤの刺身(千葉県市川市の寿司店)
殻に盛ったホヤの刺身(千葉県市川市の寿司店)写真: Jpatokal(CC BY-SA 4.0)
やはり本領は刺身。殻の中の水、「ホヤ水」にも独特の香りがあって、刺身を作るときはこのホヤ水で身を洗う。香りの好きな人は、醤油のかわりにホヤ水にワタを溶いてつけます。ワタを取って料理すれば、独特の匂いはぐっと抑えられる。醤油、三杯酢、塩、どれでもよく、柑橘との相性がとてもいい。このわたと一緒に塩辛にしたものは「莫久来(ばくらい)」と呼ばれます。

鮮度がすべて

ホヤは鮮度がすべて。新しいうちはあまり匂わないのに、時間がたつと、金属のような、ガソリンのような、とたとえられる強い匂いが出てくる。遠くへ運ばれたホヤが嫌われやすいのはこのためで、首都圏に出回るものは鮮度が落ちて匂いが強まっていることが多い。冷たい海水に浸しておくと、鮮度が落ちにくくなります。だからこそ、産地で食べてほしい食材です。
旬は初夏から盛夏。冬至のころから早春に産卵し、3月ごろから水揚げが始まって、春から夏にかけて餌をたくさん食べて太ります。夏のホヤは、冬に比べてグリコーゲンが8倍にもなります。

宮城の8割と、韓国の禁輸

宮城全国のホヤの約8割は宮城産。養殖は明治のころ、気仙沼で、船の錨綱に使っていたヤマブドウのつるにマボヤがついていたのを採ったのが始まりです。いまはカキの殻をロープにつけて海に下げ、ホヤの子をつけて、間引きしながら3年ほど育てる。牡鹿半島の北側が特に盛んです。
宮城震災の前、宮城のホヤの7割ほどは韓国へ輸出され、キムチの具や刺身になっていました。2011年の東日本大震災で三陸の養殖施設はほぼ全壊。施設は建て直されたものの、韓国は2013年に東日本の太平洋側の県の水産物の輸入を止め、2016年には宮城で育った約1万3,000トンのうち7,600トンが焼却処分されました。そこから国内への売り込みが本格化し、震災前は年2,000トン前後だった国内出荷は、2016年には約5,500トンに増えています。
宮城昔からホヤを食べてきたのは三陸で、石巻漁港を抱える宮城では酒の肴の定番。北海道でも普通に出回ります。東京圏で広く食べられるようになったのは近年のことで、中部から西では2020年になっても、ほとんど見かけません。宮城の石巻には、干しホヤのだしで作る「ほや雑煮」まであります。
ホヤは紀貫之の『土佐日記』にも出てくる、1000年以上前から食べられてきた食べものです。4月8日は、仙台の料理店が定めて日本記念日協会に登録された「ホヤの日」。気仙沼市の観光キャラクターは「ホヤぼーや」です。

台所のホヤ

殻付きのホヤをさばくには、まず水を吸う口と吐く口、二つの突き出たところを切り落とす。そこから包丁を入れて殻をむき、身を取り出したらワタを取って水で洗う。これで刺身にも酢の物にもできます。
宮城宮城の定番は、同じころに旬を迎えるきゅうりと合わせた酢の物。ホヤは1cm幅に切り、きゅうりは蛇腹切りにして塩を振り、しんなりしたら絞る。しょうが、みょうが、青じそを千切りにして、醤油と酢とみりんを混ぜた合わせ酢で和えます。
宮城生の匂いが苦手なら、蒸しほやから。口と根を落として縦半分に切り、黒い内臓を取って塩水で洗う。殻を下にして鍋に並べ、少しの水で強火で蒸し煮にし、湯気が立ったら酒を振って中火に。身がくるっと丸まったらできあがりです。蒸すと独特の匂いが抑えられて、食べやすくなります。

値段

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市場

  • マボヤの卸値(1個)養殖もので1個100円前後、天然もので200円ほど。重さではなく1個単位で売られる。

『江戸前の旬』では

読者の感想によれば、30巻に、ホヤの塩辛と胡瓜を合わせた巻き寿司が出てきます。

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