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品書き / 白身

シマアジ縞鯵・島鯵

しまあじ/White trevally (Striped jack)

アジの仲間でいちばんの高級魚。寿司屋のシマアジは、いまやほとんどが養殖です。天然ものは1kgを超えると、市場でkgあたり1万円、ときに2万円。同じ名前でも、天然と養殖は脂の質からして別物。食べ比べられるのが、このタネの面白さです。

シマアジ(体側に黄色い縦縞が1本走る)
シマアジ(体側に黄色い縦縞が1本走る)写真: Roberto Pillon(CC BY 3.0)
シマアジの握り(東京・池袋の立ち食い寿司店)
シマアジの握り(東京・池袋の立ち食い寿司店)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

シマアジ
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これまでの見立ては晩春から秋。ですが近年は真冬や早春にも脂ののった個体が揚がり、旬の輪郭がぼやけてきています。小型は1年を通して美味。

旬 出回る時期

種類

天然シマアジ

伊豆諸島、鹿児島県、高知県など太平洋側が主な産地。漁獲は少なく、1kg以上はめったに揚がらない。消費地のスーパーに並ぶことはまずありません。

養殖シマアジ

市場に並ぶシマアジのほとんどがこちら。産地は愛媛県、大分県、熊本県、長崎県。味に季節の波が少なく、値段も安定していますが、ときどき大きく値崩れします。

「旬はありません」と職人は言った

「シマアジの旬は」と聞かれて、寿司職人のたかさんの答えは「ありません」。その心は、養殖しか使えないから。天然を握るなら1かん1000円以上、という値付けも同じ職人の口から出ています。
寿司屋のタネに求められるのは、何より「安定」。天然は当たり外れが大きく、仕入れのたびに出来がぶれるようでは商売にならない。養殖を使うのは、値段のためだけではありません。
養殖シマアジ養殖されている大型のアジ類はブリ、カンパチ、シマアジの三つ。なかでもシマアジがいちばん高い。ただ、養殖ものは脂が強い。口に入れるととろりと溶ける半面、舌にはどうしても重さが残ります。天然本来のよさは、ほどよい脂とうま味、それに後口の軽さにあります。
養殖シマアジかつては、養殖シマアジの大量の脂を嫌って、氷水で締めてから使う料理人も少なくなかった。身は繊維質が少なく、ねっとり舌にからみついて、後味まで強い。天然とはまったく別種の味です。
天然シマアジ天然を握ると、切りつけた身のきめが細かく、身の間に脂が混ざり込んでいる。かすかな口溶けが甘味に感じられて、しかもシコシコと歯ごたえがいい。何かんでも飽きない握りになります。
刺身用のアジ類で値段を比べると、シマアジ、カンパチ、ブリの順。養殖が広まって少しは下がったとはいえ、天然ものが消費地のスーパーに並ぶことはありません。
アジの名が付いても、東京では古くから高級な白身として扱われてきた魚です。刺身にすると、白身と背の青い魚のちょうど中間。両方のいいところを持っています。

島から来たアジ、縞のあるアジ

「島鯵」の島は、伊豆諸島のこと。江戸の町には、伊豆諸島から押送船で運ばれてきました。明治になって西洋式の動物学が入ってくると、日本橋の魚河岸で使われていたこの呼び名が、そのまま標準和名になります。
一方で、「縞鰺」と書く流れもある。和歌山県や高知県では、体高があって黄色い縞のあるアジ科の魚をまとめて「シマアジ」と呼びます。魚類学者の田中茂穂も、この魚を縞鯵としました。江戸の本草学の時代から「島鯵」だったのに、です。
1712年の『和漢三才図会』に、もう「島鯵」の名で出てきます。アジに似て少し平たく、横に模様があり、三、四月に出る。これが江戸の図鑑の見立てです。
シマアジは鳴く魚です。釣り上げると、ぎゅうぎゅう。静岡の「ギュウギュウ」、鹿児島県松ヶ浦の「ウタゴ(唄魚)」と、鳴き声からついた呼び名が各地に残っています。
釣りの世界ではスーパースター。関東の釣り人は、80cmを超える大物を「オオカミ」と呼びます。これを釣るのが夢、という人は少なくない。ただ唇が薄いので、針が外れやすいのが泣きどころです。

寝かせるほど、うまくなる

大きければうまい、とは限りません。4kgまでを食べ比べると、安定しておいしいのは1kg以上3kg前後までです。体長37cmで体に丸みのあるものが、ベストサイズです。
アジの仲間なのに、シマアジは時間とともにうま味が増します。釣り上げた翌日の刺身はすでに素晴らしい。その翌日の夜、腹側は脂もうま味もさらに強くなった。処理がよければ、3日続けて刺身を楽しめます。
0.5kgくらいから、背と腹に分けて血合い骨を切り取れるようになる。腹は明らかに脂が多く、好む人も多い。背は端正な味で、ほんのりした甘味のあとからうま味が追いかけてきます。

黄色い一本線と、突き出す口

シマアジの幼魚の群れ(オーストラリア)
シマアジの幼魚の群れ(オーストラリア)写真: Richard Ling(CC BY-SA 2.0)
目印は体の横を走る黄色い縦縞。幼魚でははっきりしていて、育つにつれて薄れていきます。ところがカニやエビなど栄養のあるものを食べていると、成魚になっても黄色い線が現れる。
口を筒のように前へ突き出せるのも、この魚の特徴。泳ぐ小魚を追うだけでなく、海底の砂を口で掘って、砂の中に潜む小さな生き物を吸い込んで食べます。

一尾買ったら、皮もあらも

家で一枚上に仕上げるなら焼霜造り。三枚に下ろして背と腹に分け、腹の皮目をあぶって氷水へ。粗熱が取れたら布に挟んで水気を取り、刺身に切ります。アジの仲間は、皮そのものより、あぶった皮がうまい。皮の下の脂が固まりきらないうちに食べてください。
刺身をとったら、あらは潮汁に。湯通しして冷水に落とし、残った鱗とぬめりを洗い流す。水気をよくきって昆布だしで煮出し、酒と塩で味をつけます。仕上げにゆずのせん切りや山椒を。天然の上物なら、目が覚めるほどの汁になる。
頭や中骨はあら煮もいい。湯通しして鱗とぬめりを取り、酒・砂糖・しょうゆでこってり甘辛く。頭の皮は厚く、ゼラチン質がぷるんとして甘い。酒と塩だけであっさり煮てもおいしい。
大晦日の肴に、天然シマアジの西京漬け。切り身に塩をして1時間ほど置き、水気を拭く。西京みそにみりんだけを足した地に漬け込み、焦がさないよう、つききりで焼きます。脂がのっているので焼いても硬くならず、箸を入れるとほろりとほぐれる。養殖ものが値崩れしたときに漬けておくのも手です。

宇和海、蒲江、鹿児島

養殖シマアジ・愛媛養殖の生産量日本一は愛媛県。宇和海で1980年代の中ごろに始まりました。卵からかえした稚魚に配合飼料を与え、約2年で1.5kgほどに育てて、主に活魚で出荷します。
養殖シマアジ・大分大分県では、佐伯市蒲江を中心に養殖が行われています。
天然シマアジ・鹿児島暖流を好む魚で、房総半島から南に多い。鹿児島は、北上する暖流が東西に分かれる分かれ目にあたり、天然シマアジの産地です。

値段

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大衆店

  • 梅丘寿司の美登利「しまあじ(季節商品)」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)330円2026-09-29 時点

市場

  • 天然シマアジ 1kg超(市場)1尾のkg単価で1万円、ときに2万円(年の記載なし)
  • 養殖シマアジ(市場)kg単価2000〜3000円。ときどき大きく値崩れする(年の記載なし)
  • 11月の鹿児島産天然シマアジ(築地場内の仲卸)kgあたり5000円(空輸で荷が少なかった日。年の記載なし)

『江戸前の旬』では

94巻に、「シマアジ」と題した話があります。

読者の感想によれば、64巻では、めったに手に入らない天然のシマアジが出てきます。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
オオカミ東京都(東京市場・伊豆大島・八丈島)超大型魚の呼び名
ギュウギュウ静岡釣り上げると、ぎゅうぎゅうと鳴くからか
ウタゴ(唄魚)鹿児島県松ヶ浦鳴く(唄う)からか
コセ三重県西部・和歌山県、高知県宿毛市幼魚
コセアジ高知県
ウシシマジ高知県宿毛市鵜来島・柏島超大型魚。牛のように大きなシマアジ
シマイサギ東京都、神奈川県三崎、新潟県寺泊幼魚。金色の縦縞が目立つため
シマイオ(縞魚)静岡県浜名湖幼魚
ヌクモメ東京都小笠原小型魚
バケシマ東京都八丈島大型魚
カツオアジ鹿児島県
ヒラアジ福岡県、熊本県大型で平たいアジ類の混称

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