寿司のデータベース

品書き / 白身

鱧

はも/Daggertooth pike conger

小骨がびっしり並ぶ長い魚を、皮一枚残して一寸(約3cm)に23〜24本の包丁を入れる。この「骨切り」があって初めて食べられる、関西の夏の魚です。江戸前の職人にとっては長く未知のタネでしたが、湯に落とした「落とし」や、焼いて棒寿司にした「はも寿司」は、シャリとよく合う。

ハモ(台湾で採集された標本)
ハモ(台湾で採集された標本)写真: James Lin(CC BY 3.0)
スーパーの握りの詰め合わせ。下の段の中央が鱧の軍艦、その右がタチウオ
スーパーの握りの詰め合わせ。下の段の中央が鱧の軍艦、その右がタチウオ写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

旬は産卵前の6〜8月、または産卵を終えて脂がのる10〜11月。京都・大阪では夏祭りに欠かせない魚です。

旬 出回る時期

一寸に二十四の包丁

鱧は、骨切りをしなければ食べられない魚です。身にびっしり小骨が並んでいるので、開いて皮を下にし、皮一枚を残して細かく包丁を入れる。その数、一寸(約3cm)に23〜24本。この技が京都と大阪にしかなかったから、長いあいだ関西だけの味でした。いまは骨切りの機械ができ、技術も上がって、ほかの土地でも扱いが増えています。
口には鋭い歯が並び、気性が荒い。水揚げされても暴れ回り、人に噛みついてくる。だから「食む(はむ)」「咬む(はむ)」、あるいは「歯魚(はも)」。古名も「はむ」です。「鱧」の字は当て字。
食べるのは基本的に雌。雄は70cm前後で止まるのに、雌ははるかに大きく育ち、2m近くになるものもいる。色も違って、雌は赤銅色、雄は黄色がかった青。徳島では赤はも、青はもと呼び分けます。60cm以下の青っぽいものは雄なので、選ばないこと。

江戸前の職人が知らなかったタネ

東京で修業し、東京で店を開いた江戸前の職人にとって、鱧は未知のタネでした。骨切りは包丁がだめになると断られ、市場で頼んだ人の腕はいまひとつ。それでも金串を打って直火であぶり、握ってみると、脂でふわっとして、身には甘味がある。生じょうゆより詰めを塗ったほうが、握りとして完成します。
骨切りして湯に落とした「落とし」を握りにするなら、しょうゆとわさびより梅肉。脂がのった鱧は口の中でほろりと崩れ、甘味が強い。主に西日本の握りですが、近年は関東でも出す店が増えてきました。
山口産地の山口県では、寿司屋でちゃんと鱧が出てきます。骨切りした身が湯の中で牡丹の花びらのように開き、口に入れるとふわっとほどける。上には梅肉と青じそ。
京都京都や大阪でよく見かけるのが「はも寿司」。骨切りした鱧をつけ焼きにして、棒寿司にしたものです。焼いた香りと、酢の穏やかなシャリがよく合う。棒寿司にすると、不思議といくつでも食べられます。
夏が旬の鱧も、秋になると「名残の鱧」。まだ脂がのってうまいのに、季節の終わりが近い。鱧好きには寂しい時期です。

祭りの鱧は高い

京都京都の祇園祭は7月1日から31日まで続く長い祭りで、別名「はも祭り」。ちょうど鱧の旬と重なり、「祭鱧(まつりはも)」という言葉もあります。行事食として鱧料理がふるまわれる。
大阪大阪の天神祭にも鱧を食べます。ただし始末屋の関西人は言う。「7月いっぱいの鱧は買うな、8月になってから買え」。祭りまでは高く、値が落ちてから食べればいい、というわけです。
京都生命力がとにかく強い。内陸の京都まで運んでも、まだ生きていた。それで京都でも盛んに食べられるようになりました。いま京都で食べる鱧の多くは、瀬戸内や玄界灘でとれたものです。
京都1803年に京都を旅した滝沢馬琴も、高瀬川の生け簀料理屋で、若狭から来た鱧を食べています。
昔は関西で高く、関東で安い魚でした。いまは関東でも高値です。大阪ではスーパーに骨切りした鱧が並ぶ庶民の味でも、関東ではまだ料理店で食べるもの。韓国や中国からの輸入も多くあります。

玉ねぎと鱧、皮まで売る大阪

大阪「泉州玉ねぎが出たら、鱧も出る」。大阪南部の泉州は玉ねぎの一大産地で、新玉ねぎが出るころに走りの鱧が揚がり始めます。泉州のハモ鍋は、鱧の頭と骨でだしをとり、玉ねぎとじゃがいもを入れるのが決まり。すき焼き風に甘辛く煮る「はもすき」もあります。
大阪大阪では鱧のすり身でかまぼこを作り、残った皮まで売り物にします。味をつけて焼いた「鱧の皮」を細く切り、湯通ししてきゅうりもみに加えれば「ざくざく」。すり身を板にのせてそのまま焼いた「焼通し」は、かまぼこの最上級品です。
広島京都・大阪の「落とし」「ちり」と同じものを、徳島や広島では「湯引き」と呼びます。広島では比較的小ぶりの鱧を使うので手ごろな値段で、スーパーにも普通に並び、酢みそで食べるのが基本。
京都京都の「はもの焼き物」は、しょうゆベースのたれをつけた照り焼きや塩焼き。鱧は身が薄いので、強火で焼くとパサついて硬くなる。焼き加減が肝心です。京都の魚屋では普通に並んでいます。

骨切り済みが手に入ったら

鱧の落とし(塩、辛子酢味噌、梅肉を添えて)
鱧の落とし(塩、辛子酢味噌、梅肉を添えて)写真: サフィル(CC BY-SA 4.0)
骨切りした鱧が手に入れば、家でも落としが作れます。食べよい大きさに切り、塩を加えた湯に落として、冷水にとるだけ。梅肉酢をつけて。冷やしてもおいしい。
「ぼたんはも」は吸いものの種。焼いた骨と昆布でだしをとり、酒と塩で吸い地を作る。骨切りした身に葛粉をまぶして湯に落とし、椀に入れます。
近ごろは関西以外でも、骨切り済みの鱧が売られていることがあります。見つけたら「はもすき」を。市販のすき焼きのたれで、玉ねぎと一緒に煮るだけ。鍋にした翌朝は、残りがご飯のおかずになる。
7月の中ごろには、鱧の卵巣が出回り始めます。卵の粒が細かくしっとりして、非常にうまい。浮き袋や胃袋、肝も一緒に煮ものにします。

値段

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市場

  • ハモ(市場)夏に入荷が多く値も高い。雄は安く雌が高い。釣りの活け締めが高く、底引き網ものは安い(年の記載なし)

『江戸前の旬』では

2014年には『京都・ハモの握り編』という総集編が出ています。115巻の紹介文でも、夏のタネとして、ショッコ、ヒラメと並んでハモの名前が挙がります。

読者の感想によれば、12巻の京都で、旬は大吾と鱧寿司で腕を比べます。旬は蒸し煮、大吾は葛打ちしてから蒸す。34巻には「奇跡の鱧寿司」と、再び銀座へ来る大吾。65巻では京都の太一が鱧寿司に挑みます。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
アカハモ(赤はも)徳島県雌
アオハモ(青はも)徳島県雄
ビリハモ京都府(京都中央市場)小ぶりで値のつかないもの
タツバモ(竜ばも)京都府
バッタモ京都府丹後宮津
アナゴ京都府丹後地方
ジャハム(蛇はむ)石川県
ウミウナギ(海鰻)北九州
ゴンギリ長崎
ハモブエ(鱧笛)長崎県雲仙市浮き袋のこと
トウヘイ島根県

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鱧とつながるタネ

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