鱧
はも/Daggertooth pike conger
小骨がびっしり並ぶ長い魚を、皮一枚残して一寸(約3cm)に23〜24本の包丁を入れる。この「骨切り」があって初めて食べられる、関西の夏の魚です。江戸前の職人にとっては長く未知のタネでしたが、湯に落とした「落とし」や、焼いて棒寿司にした「はも寿司」は、シャリとよく合う。

旬
鱧
旬は産卵前の6〜8月、または産卵を終えて脂がのる10〜11月。京都・大阪では夏祭りに欠かせない魚です。
旬 出回る時期
一寸に二十四の包丁
鱧は、骨切りをしなければ食べられない魚です。身にびっしり小骨が並んでいるので、開いて皮を下にし、皮一枚を残して細かく包丁を入れる。その数、一寸(約3cm)に23〜24本。この技が京都と大阪にしかなかったから、長いあいだ関西だけの味でした。いまは骨切りの機械ができ、技術も上がって、ほかの土地でも扱いが増えています。
口には鋭い歯が並び、気性が荒い。水揚げされても暴れ回り、人に噛みついてくる。だから「食む(はむ)」「咬む(はむ)」、あるいは「歯魚(はも)」。古名も「はむ」です。「鱧」の字は当て字。
食べるのは基本的に雌。雄は70cm前後で止まるのに、雌ははるかに大きく育ち、2m近くになるものもいる。色も違って、雌は赤銅色、雄は黄色がかった青。徳島では赤はも、青はもと呼び分けます。60cm以下の青っぽいものは雄なので、選ばないこと。
江戸前の職人が知らなかったタネ
東京で修業し、東京で店を開いた江戸前の職人にとって、鱧は未知のタネでした。骨切りは包丁がだめになると断られ、市場で頼んだ人の腕はいまひとつ。それでも金串を打って直火であぶり、握ってみると、脂でふわっとして、身には甘味がある。生じょうゆより詰めを塗ったほうが、握りとして完成します。
骨切りして湯に落とした「落とし」を握りにするなら、しょうゆとわさびより梅肉。脂がのった鱧は口の中でほろりと崩れ、甘味が強い。主に西日本の握りですが、近年は関東でも出す店が増えてきました。
山口産地の山口県では、寿司屋でちゃんと鱧が出てきます。骨切りした身が湯の中で牡丹の花びらのように開き、口に入れるとふわっとほどける。上には梅肉と青じそ。
京都京都や大阪でよく見かけるのが「はも寿司」。骨切りした鱧をつけ焼きにして、棒寿司にしたものです。焼いた香りと、酢の穏やかなシャリがよく合う。棒寿司にすると、不思議といくつでも食べられます。
夏が旬の鱧も、秋になると「名残の鱧」。まだ脂がのってうまいのに、季節の終わりが近い。鱧好きには寂しい時期です。
祭りの鱧は高い
京都京都の祇園祭は7月1日から31日まで続く長い祭りで、別名「はも祭り」。ちょうど鱧の旬と重なり、「祭鱧(まつりはも)」という言葉もあります。行事食として鱧料理がふるまわれる。
大阪大阪の天神祭にも鱧を食べます。ただし始末屋の関西人は言う。「7月いっぱいの鱧は買うな、8月になってから買え」。祭りまでは高く、値が落ちてから食べればいい、というわけです。
京都生命力がとにかく強い。内陸の京都まで運んでも、まだ生きていた。それで京都でも盛んに食べられるようになりました。いま京都で食べる鱧の多くは、瀬戸内や玄界灘でとれたものです。
京都1803年に京都を旅した滝沢馬琴も、高瀬川の生け簀料理屋で、若狭から来た鱧を食べています。
昔は関西で高く、関東で安い魚でした。いまは関東でも高値です。大阪ではスーパーに骨切りした鱧が並ぶ庶民の味でも、関東ではまだ料理店で食べるもの。韓国や中国からの輸入も多くあります。
玉ねぎと鱧、皮まで売る大阪
大阪「泉州玉ねぎが出たら、鱧も出る」。大阪南部の泉州は玉ねぎの一大産地で、新玉ねぎが出るころに走りの鱧が揚がり始めます。泉州のハモ鍋は、鱧の頭と骨でだしをとり、玉ねぎとじゃがいもを入れるのが決まり。すき焼き風に甘辛く煮る「はもすき」もあります。
大阪大阪では鱧のすり身でかまぼこを作り、残った皮まで売り物にします。味をつけて焼いた「鱧の皮」を細く切り、湯通ししてきゅうりもみに加えれば「ざくざく」。すり身を板にのせてそのまま焼いた「焼通し」は、かまぼこの最上級品です。
広島京都・大阪の「落とし」「ちり」と同じものを、徳島や広島では「湯引き」と呼びます。広島では比較的小ぶりの鱧を使うので手ごろな値段で、スーパーにも普通に並び、酢みそで食べるのが基本。
京都京都の「はもの焼き物」は、しょうゆベースのたれをつけた照り焼きや塩焼き。鱧は身が薄いので、強火で焼くとパサついて硬くなる。焼き加減が肝心です。京都の魚屋では普通に並んでいます。
骨切り済みが手に入ったら

「ぼたんはも」は吸いものの種。焼いた骨と昆布でだしをとり、酒と塩で吸い地を作る。骨切りした身に葛粉をまぶして湯に落とし、椀に入れます。
近ごろは関西以外でも、骨切り済みの鱧が売られていることがあります。見つけたら「はもすき」を。市販のすき焼きのたれで、玉ねぎと一緒に煮るだけ。鍋にした翌朝は、残りがご飯のおかずになる。
7月の中ごろには、鱧の卵巣が出回り始めます。卵の粒が細かくしっとりして、非常にうまい。浮き袋や胃袋、肝も一緒に煮ものにします。
値段
市場
- ハモ(市場)夏に入荷が多く値も高い。雄は安く雌が高い。釣りの活け締めが高く、底引き網ものは安い(年の記載なし)
『江戸前の旬』では
2014年には『京都・ハモの握り編』という総集編が出ています。115巻の紹介文でも、夏のタネとして、ショッコ、ヒラメと並んでハモの名前が挙がります。
読者の感想によれば、12巻の京都で、旬は大吾と鱧寿司で腕を比べます。旬は蒸し煮、大吾は葛打ちしてから蒸す。34巻には「奇跡の鱧寿司」と、再び銀座へ来る大吾。65巻では京都の太一が鱧寿司に挑みます。
土地の呼び名
| 呼び名 | 土地 | 種類・メモ |
|---|---|---|
| アカハモ(赤はも) | 徳島県 | 雌 |
| アオハモ(青はも) | 徳島県 | 雄 |
| ビリハモ | 京都府(京都中央市場) | 小ぶりで値のつかないもの |
| タツバモ(竜ばも) | 京都府 | |
| バッタモ | 京都府丹後宮津 | |
| アナゴ | 京都府丹後地方 | |
| ジャハム(蛇はむ) | 石川県 | |
| ウミウナギ(海鰻) | 北九州 | |
| ゴンギリ | 長崎 | |
| ハモブエ(鱧笛) | 長崎県雲仙市 | 浮き袋のこと |
| トウヘイ | 島根県 |
次に読みたくなる
鱧とつながるタネ
同じころに旬を迎えるタネ
このページの出典(13件)
- ハモ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ハモ(635貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- はも寿司(1387貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ハモ鍋 大阪府|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-25 閲覧
- 鱧押し寿司/ハモ(222貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- はもの焼き物 京都府|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-25 閲覧
- はも落としの握り(1388貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 鱧/ハモ(793貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 江戸前の旬 115巻(作品紹介)|コミックシーモア(コミックシーモア(NTTソルマーレ))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬スペシャル 京都・ハモの握り編(2014年)|国立国会図書館サーチ(国立国会図書館)2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 12巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 34巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 65巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧