寿司のデータベース

品書き / 白身

スズキ鱸

すずき/Japanese sea bass

古事記や延喜式にも名が出てくる、筋金入りの高級魚。育つにつれて呼び名が変わる出世魚でもあります。河川や内湾の汚れで、一時は安い魚の代表にまで落ちましたが、夏の活け締めにはいま再び高値が付く。平清盛の出世の故事から、縁起物にも数えられます。

スズキ(東京近郊の売り場)
スズキ(東京近郊の売り場)写真: Nesnad(CC BY 4.0)
スズキの握り(東京・上野の立ち食い寿司店)
スズキの握り(東京・上野の立ち食い寿司店)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

成魚の旬は5月〜10月くらいまでで、産地によって違います。秋、産卵を前に深場へ移る大型の「腹太」も美味。

旬 出回る時期

清盛の船に飛び込んだ魚

縁起の話は、平清盛にさかのぼります。伊勢から熊野へ向かう海路で、大きなスズキが船に飛び込んできた。清盛はこれを吉事として自ら食べ、家来にも食べさせ、その後出世した、という故事です。
歌川広重「魚づくし」のスズキとキンメダイ
歌川広重「魚づくし」のスズキとキンメダイ写真: 歌川広重(メトロポリタン美術館蔵)(CC0)
奈良時代の古事記(712年)にも、平安時代の延喜式(927年)にも登場する。スズキは、それほど歴史のある高級魚です。
江戸時代の『鸚鵡籠中記』には、婚礼の膳や引き出物に「すずきのわた吸物」が登場します。
『和漢三才図会』(1713年)には「川鱸は脂が多く味がよい、海鱸は脂が少なく味が淡い」とあります。川のスズキと海のヒラスズキは、古くから分けて見られていた。

奉書紙に包んで焼く

島根島根県の宍道湖・中海周辺には「奉書焼き」があります。スズキに塩をして、奉書紙で包んで焼いたもの。
島根松江の「スズキの奉書焼き」には、始まりの話が残っています。漁師がたき火の灰で蒸し焼きにしていたスズキを、松江藩七代藩主・松平治郷が所望した。灰が付いたままではお粗末なので、奉書紙に包んで差し上げた。
島根奉書焼きの作り方の一例。スズキの鱗とエラを取り、つぼ抜きで内臓を出します。苦玉(胆のう)だけを除いて内臓は戻し、全体に塩を振る。水で濡らした奉書紙で2〜3重に包んで、天火で蒸し焼きに。
島根島根県・鳥取県の中海周辺の「煮なます」は、スズキの内臓が主役。大根のけん、酢、砂糖、しょうゆで煮上げます。
島根スズキは、シジミ、ワカサギ、シラウオ、ヨシエビ、コイ、ウナギとともに「宍道湖七珍」の一つ。宍道湖のスズキの旬は、秋から初冬です。

「迷ったら白身から」の夏

初夏になると、寿司屋にスズキの木札が登場します。鯛が、カレイやスズキに入れ替わる季節です。江戸前の寿司屋には「迷ったら白身から頼め」という言葉があります。
東京人形町「㐂寿司」が寿司ダネにするのは、フッコより少し大きな型。これより大きくなると、身が荒れておいしくない。カレイより淡白で身質が柔らかく、噛むうちに鯛に似た甘みが出てきます。
千葉汽水域にいるスズキには、独特のクセを感じることがあります。そこで古くから好まれたのが「洗い」。削ぎ切りにした身をさっと氷水に落とし、酢味噌で食べます。江戸時代、東京湾のいちばん奥、千葉・船橋で取れたスズキは初夏のご馳走でした。
千葉昔は身近な淡水域や内湾で取れて、人気の高い魚でした。ところが河川や内湾が汚れて高級魚の座を追われ、安い魚の代表に。それが近年、東京湾内房で鮮度を高める工夫が進み、夏の個体は再び高級魚になりつつあります。

10月の雷と、落ちスズキ

島根山陰では、冬にとどろく雷を「鱸落とし」と呼びます。10月に鳴り始めると、宍道湖からスズキが海へ逃げる、という言い伝えもあります。
東京東京湾などでは、秋に深場へ移るスズキを「落ちスズキ」と呼びます。産卵を控えて真子を持つので、「腹太スズキ」とも。
俳句の季語では「秋」です。

もとは「ススキ」

室町期の茶会記などでは「すすき」と書かれていて、実際の音もどうやら「ススキ」だった。1938年の『日本産魚類検索』でも、まだ「ススキ」と表記されています。
語源の候補は、一つにしぼれません。すすいだように身が白いから。口の大きさに比べて尾鰭が小さい(すす=小)から。古い名前の「スヂユキ」が転じて、雪のような白さを表したから。ほかにも見方がある。
漢字の「鱸」は中国・明代のもので、正確にはタイリクスズキを指します。

値段

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市場

  • スズキの市場での値の付き方野締めは安く、ときに非常に安い。夏の活けもの・活け締めは高値で、神奈川県や兵庫県明石の活け締めは安定して高い(金額の記載なし)

『江戸前の旬』では

読者の感想によれば、12巻には1メートルほどもある大きなスズキが、39巻には「夏魚の王」としてのスズキの洗いが出てきます。88巻には「スズキ」と題した話があります。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
コッパ→セイゴ→フッコ→スズキ→オオタロウ東京近郊『さかな異名抄』。オオタロウは1mにもなる老大魚
セイゴ→マダカ→ナナイチ愛知県小型をセイゴ、中型をマダカ、30cmくらいをナナイチ
ハクラコ→ハクラ→ハネ→ススキ佐賀県有明海周辺約20cmまでハクラコ、40cmまでハクラ、60cmまでハネ、60cm以上ススキ
セイゴ→マタカア→オオマタ→コチウ→チウイオ→オオチウ→オオモノ静岡県浜名湖
ミズセ徳島県徳島市吉野川河口周辺10cm前後
ハネ島根
セッパ宮城県石巻市若魚
アカンバクラ有明海幼魚

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