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品書き / 白身

甘鯛

あまだい/Horsehead tilefish

京都で「ぐじ」と呼ばれ、京料理に欠かせない魚。鯛と付いても、タイ科ではなくアマダイ科です。身は水分が多くてやわらかく、骨と鱗は硬い。扱いの難しさゆえに関東では長く見向きもされなかったのに、いまではkgあたり1万円を超えることも珍しくない、魚のなかでも指折りの高級魚になりました。

アカアマダイ(京都水族館)
アカアマダイ(京都水族館)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
炙った甘鯛の握り
炙った甘鯛の握り写真: Mikkabie(CC BY-SA 4.0)

旬

旬は秋から春。寒い時期のものは脂がのってやわらかい。

旬 出回る時期

種類

アカアマダイ

3種のなかでいちばん水揚げが多く、ふつう甘鯛といえばこれ。釣りものをていねいに仕立てたものは、魚のなかでもいちばん高いほどです。

シロアマダイ

3種のなかでいちばん浅いところにすむ。昔は最高値の扱いでしたが、近年はアカアマダイと変わりません。

キアマダイ

いちばん深いところにすむ珍しい種。評価は定まっていないものの、これも高級魚です。

関東では干物にされていた

関東いまや関東でも最高級の魚ですが、少し前まではまるで違いました。相模湾では1980年ごろまで、アカアマダイの価値をほとんど知らず、あまり使っていなかった。1975年の本には、ほとんどがみそ漬けか開き干しに加工される、とあります。身がやわらかく水分が多くて、扱いに熟練が要るからです。関西料理が東へ進出するのと一緒に、高級魚の座にのぼりました。
神奈川相模湾で甘鯛が釣りの対象になったのは、1980年代の後半からと見られます。それまでは冬のマダイ釣りの外道でした。
白身ですが水分が多くてもろく、手荒に扱うと崩れる。水分を抜いて料理するのが基本です。そのうえ鱗と骨は硬い。骨の硬さと身のもろさが、下ろすのを難しくしています。鱗は、ふつうは包丁ですき引きにする。

京都の「ぐじ」

京都京都では「ぐじ」。産地の若狭から一塩で届いたものを、とても珍重してきました。京都は鮮魚より一塩ものを好むほどで、いまもぐじをいちばん大量に扱うのは京都だと見られています。京都で普通に見られる一塩のぐじは、関東にはほとんど来ない。
福井一塩ぐじは、若狭から山陰にかけて作られます。開いたアカアマダイに塩をしたもので、塩が均一になじんでいる。基本は焼きものですが、刺身にも昆布締めにもなり、汁もの、蒸しもの、揚げものと使い道が広い。「若狭ぐじ」は福井県の名物です。
京都「若狭焼き」は、一塩のぐじを鱗をつけたまま、皮目に甘口の日本酒を塗りながら焼く料理。身は練り絹のようになめらかで、頭の皮がことのほかうまい。鱗は引いてもかまいません。
京都冬の京都なら「かぶら蒸し」。一晩塩をしたぐじに熱湯をかけて鱗をこそげ、蒸し碗に入れる。泡立てた卵白とすりおろした聖護院かぶらをのせて蒸し、とろみをつけただしを張って、わさびをのせます。材料はぐじとかぶらだけ。

あぶると、とける

kgあたり1万円以上するぐじの鱗を取り、皮つきのまま切りつけてあぶる。脂がのっているので表面が溶けて、口に入れるとトロッととろける。甘味が強く、シャリともよく合います。
握りでよく見るのは皮霜造り。鱗を包丁ですき取り、皮に湯をかけて切りつける。寒い時期のものは脂がのってやわらかく、湯をかけたところがとろっととろけています。
生で握ると、マダイのような食感で、甘みはもっと強い。生の甘鯛を決めているのは甘み。島根県大田市で釣って活け締めにした1kg以上のものなら、築地に着いてからでも刺身にできます。

甘い鯛、尼の鯛、興津の鯛

アカアマダイの横顔
アカアマダイの横顔写真: ふうけ(CC BY-SA 3.0)
「甘鯛」の由来は、身に甘みがあるから。練りものにしても甘い。もうひとつの書き方「尼鯛」は、横顔が頬かむりをした尼さんに似ているから。
静岡駿河では「興津鯛(おきつだい)」。静岡の興津の名産だから、という説と、おきつという奥女中が徳川家康に献上して喜ばれたから、という話が残っています。
静岡明治43年、伊豆の大仁の旅館で、夏目漱石は甘鯛の頭付きで粥を二椀食べた、と日記に書いています。
大阪大阪府の泉州では、正月の祝い鯛が町ごとに違います。貝塚市では甘鯛、堺市では焼いた真鯛。

赤、白、黄の三兄弟

日本の沿岸で食べる甘鯛は、シロ、アカ、キの3種。すむ深さもこの順に深くなります。昔はシロが最上位の扱いでしたが、近年はアカと値段が変わらない。古くからの順位づけは、いまでは当てはまりません。かつては学者のあいだでも、3種か2種か1種かで意見が割れていました。
水深30〜140mの砂泥地で、小山のようになったあたりに巣穴を掘り、餌を待ちかまえる。集団で巣穴を作り、縄張りを持つ魚です。1歳で16〜19cm、4歳で30cmあまり。雄のほうが大きく、最大で60cm弱。

家では一日寝かせて

若狭焼きは熟練が要るので、家なら塩焼きから。切り身に塩を振って1時間以上、できれば1日以上寝かせてから焼く。皮から甘い香りが立ち、身はふんわり柔らかく、口の中でほどけます。
生で食べるなら昆布締めがいい。皮を引いて切り、戻した昆布にのせて締める。昆布が余分な水分を抜いて、ほどよい食感に。甘鯛の甘味に昆布のうま味が重なります。
アカアマダイの煮付け
アカアマダイの煮付け写真: mdid(CC BY 2.0)
小ぶりのものは煮つけに。鱗を引いて鍋に入る大きさに切り、酒・砂糖・しょうゆで甘辛く。酒と塩でさっぱり煮てもおいしい。
天ぷらは皮のうまさを楽しむ料理。三枚に下ろして弱めに塩を振り、出てきた水分を拭いてから、衣をつけて高温で短く揚げます。揚げたての香りが実にいい。

値段

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大衆店

  • 築地すし鮮「甘だい炙り」おこのみ1貫(税込)459円2026-09-29 時点

市場

  • アカアマダイ(関東の市場)kgあたり1万円以上も珍しくない(年の記載なし)
  • 一塩ぐじ(京都)1尾1万円を超えるものがある(兵庫県津居山のもの。年の記載なし)

『江戸前の旬』では

第55話は、題がそのまま「アマダイ」。121巻では、夏から秋にかけての旬のタネの一つにアマダイが入っています。

読者の感想によれば、18巻には白板昆布で締めた白皮甘鯛の握り、75巻には甘鯛の砂糖締めが出てきます。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
グジ京都、大阪アカアマダイ
クジ石川県、京都府丹後地方アカアマダイ
オキツダイ(興津鯛)静岡県駿河湾アカアマダイ
コビル鳥取県、島根県松江アカアマダイ
クズナ徳島県徳島市アカアマダイ。『和漢三才図会』にも「方頭魚(くずな)」とある
コズナ愛媛県宇和島・伊予アカアマダイ
アカクズナ長崎県、京都府丹後、鹿児島県アカアマダイ
スナゴ愛媛県松山アカアマダイ
バトウ山口県長門アカアマダイ
アマデェ静岡県網代アカアマダイ

次に読みたくなる

甘鯛とつながるタネ

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