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品書き / 白身

ホウボウ魴鮄

ほうぼう/Bluefin searobin (Red gurnard)

胸びれを広げると、青い翼。その下の指のような3本で海底を歩き、浮き袋でグッグッと鳴く。見た目も暮らしぶりも変わり者ですが、身は上質な白身で、江戸時代には「君の魚」と呼ばれて上流の人が食べるものでした。刺身や握りで食べるようになったのは、わりあい最近のことです。

ホウボウ(鶴岡市立加茂水族館)。胸びれの内側が青い
ホウボウ(鶴岡市立加茂水族館)。胸びれの内側が青い写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
ホウボウの握り(金沢)
ホウボウの握り(金沢)写真: takaokun(CC BY 2.0)

旬

ホウボウ
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年の瀬から少しずつ脂をため込み、3〜5月の産卵とともに味が急に落ちます。産卵期は産地によって違い、旬もずれる。

旬 出回る時期

歩いて、鳴く魚

胸びれの下の「指」で海底に立つホウボウ(仙台うみの杜水族館)
胸びれの下の「指」で海底に立つホウボウ(仙台うみの杜水族館)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
ホウボウは海底を歩きます。胸びれの下の3本の軟条が、指のように一本ずつ動く。これで砂の中の獲物を探り、そのまま歩いて進む。子どものうちは真っ黒で海中をただよい、大きくなると赤くなって、底で暮らすようになります。
そして、うるさいほど鳴く魚です。水揚げされると「ググ、ググ」。喉ではなく、筋肉に包まれた大きな浮き袋を強く伸び縮みさせて音を出しています。
名前の由来は一つに決まりません。浮き袋の鳴き声が「ほうぼう」と聞こえるから。頭が四角い(方)から。胸びれの下で歩くので「這う魚(はうさかな)」がなまった、という見方も。鳥取や島根の「コト(琴)」、富山や福井の「ホウホウ」も鳴き声からの名です。
魴鮄は冬の季語です。「魴鮄の髯脚立てて貌そろう」(秋山牧車)。

江戸では「君の魚」

川原慶賀が描いたホウボウ(1823〜1829年、シーボルト・コレクション)
川原慶賀が描いたホウボウ(1823〜1829年、シーボルト・コレクション)写真: 川原慶賀(Naturalis Biodiversity Center 所蔵)(Public domain)
上質な白身で、江戸時代には「君の魚」と呼ばれ、上流の人々が食べるものでした。胸びれが赤いので、赤ちゃんのお食い初めの魚にも使われます。滝沢馬琴の日記には、ホウボウの開きが出てくる。白身でくせがないので、見舞いやお返しの品にされていました。
東京谷崎潤一郎が振り返る子どものころの東京の食卓では、魚はたいてい煮つけ。焼くのは蒸し鰈、ホウボウ、鰯、飛魚くらいでした。東京のホウボウは、焼き魚の側だったわけです。
関東の市場では定番の魚で、入荷は多く、値段は安定して安め。決まった産地はなく、全国から届きます。ただ、大きなものは昔からの高級魚です。

くすんだ色が、脂の印

握りにすると、一見くすんだ色合い。期待せずに口に入れると、居住まいを正したくなるほどうまい。そのくすみが脂で、かすかな甘みの正体です。適度に柔らかな身が、シャリを包むようになじみます。
4月でも、脂ののったものが入ることがあります。うま味が強くてシャリに負けない。走りのすだちで塩を包むようにつまみ、塩としずくを一緒に落として食べる。しゃきっと目が覚める一かんです。
刺身など生で食べるのは、比較的新しい食べ方です。近年はすっかりありふれたものになりました。寒い時期は脂がのって、上品な白身なのに食べごたえがある。活魚は薄く造るといい。
鳴くための浮き袋も食べられます。「鳴き袋」とでも呼びたくなる部位です。肉厚の袋で、煮ても焼いてもうまい。大きな個体でも1つしかとれない珍味です。締めてすぐ取り出し、あぶって握った一かんもありますが、やや硬く、シャリとのなじみはいまひとつ。つまみのほうが向いています。

あらまで使い切る

頭が大きく、刺身にすると歩留まりが悪い。そのかわり、あらからいいだしが出ます。煮つけや汁にすれば無駄なく使える。料理法を選ばない、重宝な魚です。
長崎長崎県平戸市の生月島では、高級なホウボウを大ぶりに切って、みそ汁にしてしまいます。長崎らしく麦みそで、豆腐を入れるのがつきもの。産地だからできる贅沢です。
鹿児島鹿児島県日置市などでは、みりん干しや開き干しに加工されます。白身で上品ななかに、意外なほど豊かなうま味。
皮が硬いので、湯をかけるより、表面を焼く焼霜造りのほうが向きます。三枚に下ろして皮目をあぶり、氷水で粗熱を取る。少し冷蔵庫で落ち着かせてから切ると、皮のうま味が生きる。
寒くなったら、ちり鍋に。適当に切って湯通しし、氷水でぬめりと残った鱗を流す。昆布だしに酒と塩で味をつけ、あら、ぶつ切りの身、鳴き袋、肝を煮ながら食べます。
漁師の家で定番なのが煮つけ。皮も、骨についた身も、余さず食べられて、ご飯が進む。小型なら丸のまま煮てかまいません。
塩焼きは、塩がなじむのに時間がかかるので2〜3時間寝かせてから、じっくり時間をかけて焼きます。焼きにくい魚ですが、皮目の風味がいい。

値段

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市場

  • ホウボウ(関東の市場)入荷が多く、値段は安定して安め。活け締めと大型はやや高い(年の記載なし)

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
キミ石川県宇出津
キミヨ青森県西岸、秋田県男鹿、新潟県
キミウオ北陸
コト(琴)鳥取県境港、島根県鳴き声から
コトブキ青森県下北・西岸
ホウホウ富山県魚津、福井県三国鳴き声から
ホンブ長崎県雲仙市小浜
ブンブ長崎県壱岐
ダンカラ青森県津軽地方
シシツボ石川県輪島
カナガシラ三重県鳥羽、島根県石見、山口県萩、長崎県、鹿児島県標準和名カナガシラは別種

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