広島県
広島の夏は、七度洗えば鯛の味という小いわしの刺身。家の寿司は、シャリの中に煮物を隠した角寿司。尾道のおからの寿司「あずま」、江波の海苔漁師の江波巻き、山あいにはワニ(サメ)の刺身まであります。
七度洗えば鯛の味
広島で「小いわし」と言えば、カタクチイワシのこと。エサのプランクトンが多い広島湾では身の大きな小いわしがたくさんとれて、広島県で揚がる魚のおよそ7割がカタクチイワシです(令和2年の統計)。2隻の船で引く網は、形が男性の下着のパッチに似ているので「パッチ網」。昔は新鮮な小いわしを売り歩く行商人がよく見られた、安くてうまい庶民の魚でした。イワシ

瀬戸内の鯛を見るなら、福山市の鞆の浦。初夏になると「観光鯛網」があり、伝統の漁法「鞆の浦鯛しばり網漁法」を目の前で見せてくれます。大漁旗を掲げた鯛網の船団が海に出る様子を、観覧船に乗って間近で見られる。日本遺産「鞆の浦」を形づくる文化財のひとつです。網でとれた鯛や小魚は、その場で特価で売られます。タイ
角寿司、あずま、江波巻き
広島の家の寿司に「角寿司」があります。広島市安佐北区のあたりから芸北地域の押し寿司で、四角い木の型にシャリと具を詰め、押し出すと同じ大きさの四角い寿司が6〜8個いっぺんにできる。上にはしめさば、薄焼き卵、かまぼこ、しいたけ、栗、山椒の葉、にんじんの葉、干しえび、でんぶ。赤、緑、黄と色あざやかに並べます。面白いのは、外からは見えないシャリの中に、にんじんやしいたけ、ごぼう、豆を辛めに煮たものが隠してあること。食べ進むと、突然、煮物の濃い味が広がる仕掛けです。サバ
昭和30年代には、角寿司の木型がどの家にもあるのが普通でした。祝いの席や来客のときに多めに作り、木箱に入れて隣近所にも配る。正月、花見、盆、秋祭り、家で婚礼や葬儀をしていたころは冠婚葬祭のときにも作られました。
尾道や福山には「あずま」があります。酢で締めたママカリを、シャリの代わりにおからで握った寿司です。米が貴重だった時代に、手に入りやすいおからで代わりをした。おからは砂糖、塩、酢で炒って冷まし、ネギやニラ、ごま、生姜を混ぜて小さく握ります。コハダやコノシロでも作る。山あいの三次市のあたりには、鮎をのせた「卯の花ずし」があります。コハダ鮎
尾道の巻き寿司には「えび粉」が入ります。ゆでた小さなアカエビの殻をむき、包丁で叩いて細かくして、砂糖、みりん、酒で甘く炒りつけたもの。「えびおぼろ」とも言います。これに焼き穴子、あさり、厚焼き玉子、しいたけ、かんぴょう、三つ葉を合わせて巻くのが、このあたりの巻き寿司です。太巻き穴子エビ
海苔の養殖が盛んだった広島市中区の江波には、「江波巻き」があります。焼き海苔にご飯をのせ、広島菜漬けとかつお節、醤油、白ごまを和えたものを巻く。シャリではなく、ふつうのご飯です。ゆっくり食事をする暇のない海苔漁師が、懐に入れて船に持ち込み、櫂を漕ぎながら片手で食べたのが始まり、という話が残っています。海苔は売り物にならない破れ海苔を使いました。
山のなかのワニ

ワニは秋祭りや正月のごちそうでした。三次市には「ワニを腹の冷えるまで食べてつかあさい」という、昔からのもてなしの言葉がある。祭りが近づくと、あちこちに「ワニの市」が立ったほどです。赤みの強い身はカジキに似ていて、三次では「三次カジキ」、庄原市西城町では「西城マグロ」と呼ぶこともありました。いまも秋祭りから正月にかけてはスーパーに並び、回転寿司で食べられることもあります。
広島県での呼び名
| 呼び名 | 一般には | 出典での土地の書き方 |
|---|---|---|
| ヒラサ | ヒラマサ | 広島 |
| オオグチガレイ(大口鰈) | ヒラメ | 東北・関西、和歌山県串本、兵庫県明石市、広島県、徳島県、愛媛県宇和島、福岡県志賀島 |
| オチョボ | マコガレイ(真子鰈) | 広島県旧御調郡 |
| モチコゴモリ | カワハギ | 広島、山口 |
| ホンダイ(本鯛) | マダイ(真鯛)チダイ、キダイと区別するため | 新潟県佐渡、静岡県牧之原市、和歌山、大阪市場、兵庫県神戸・明石、広島 |
| ハツコ/サッコ | コハダ | 広島県旧安芸郡 |
| タチ | 太刀魚 | 福井県三国、兵庫県神戸、広島県、島根県、山口県萩、高知県、有明海 |
| トウヘイ | 穴子大型。広島市では500g以上。 | 千葉県勝浦・広島市 |
| ビービー | 穴子小型。 | 広島市 |
広島県の食べ方・名産
- 鱧広島京都・大阪の「落とし」「ちり」と同じものを、徳島や広島では「湯引き」と呼びます。広島では比較的小ぶりの鱧を使うので手ごろな値段で、スーパーにも普通に並び、酢みそで食べるのが基本。
- 牡蠣広島国産の牡蠣の6割は広島生まれ。令和5年の広島県の生産量はむき身で16,129トン、全国の62.9%です。島や岬に囲まれて波が静かな広島湾に、川が栄養を運び込み、牡蠣の餌になるプランクトンが育つ。天文年間(1532〜1555年)に安芸の国で養殖の方法が生まれた、という記録も残っています。
- 牡蠣広島いまの筏で吊るす養殖のヒントは、軍艦でした。呉の海軍工廠で船底の塗料を研究していた青年から「停泊中より航海中、それも水面すれすれのところで大きく育つ」と聞いたのがきっかけ。竹を筏に組んで船で引き回し、潮の速い海に浮かべる試みが始まります。1926年に広島県で筏の試験が始まると、干潟に枝を立てる昔の方法の2倍以上に育ち、1950年代から一気に広がりました。
- 牡蠣広島土地の牡蠣料理もいろいろ。広島の土手鍋は、土鍋の内側に味噌を厚く塗り、牡蠣やネギを入れて、溶け出した味噌で食べる鍋。広島湾のあたりには牡蠣の雑煮もあります。岡山県備前市日生の「カキオコ」は、地元で養殖した牡蠣のむき身をたっぷり入れたお好み焼きで、1960年代に始まりました。
- 穴子広島広島県宮島の名物「あなご飯」は、蒲焼きにしたあなごをそぎ切りにして、だしで炊いたご飯の上に敷き詰めたもの。始まりは1901年、山陽鉄道の開通から4年後、宮島口駅の近くで駅弁として売り出されたことでした。
- 穴子広島江戸時代文政期の広島藩の地誌『芸藩通志』にも、アナゴはメバルやキスとともに、このあたりの産で味がよいと記されています。潮の速い廿日市市大野瀬戸のあたりでとれるものは「瀬戸のあなご」と呼ばれる。
- 太巻き広島全国に広げたのはコンビニです。1989年、大手コンビニが広島県の店で節分の巻き寿司を売り出しました。広島市のセブン-イレブンで加盟店を担当していた社員が、オーナーとの会話で節分の丸かぶりを知ったのがきっかけとされます。売り場は西日本へ、さらに全国へと広がり、1990年代に入ってコンビニやスーパーが売るようになったことで、節分に恵方巻を食べる習わしが全国に広まりました。
- 鯖寿司広島広島の県北や、内陸の東広島市西条あたりでも鯖寿司は根強い人気で、多いのは姿寿司。酢で締めたサバの内臓を抜いたところに、シャリを詰め込みます。海苔の代わりに広島菜漬で巻いたものもあります。
- かにかま広島いま見慣れた棒の形は、広島の大崎水産から。カニの身を詰めたきゅうりを魚肉で巻く「かに胡瓜」を作るうち、魚肉にカニの汁が混ざってカニそっくりの味になった。これを麺のように細くして束ねたのが、1974年発売の「かにスチック」。世界で初めての棒状のかにかまです。ところが、カニがほとんど入っていないのにカニを名乗るのはいけないと公正取引委員会に叱られ、「フィッシュスチック」に改名しました。
このページの出典(30件)
- 小いわしの刺身 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 角寿司 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- あずま 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 江波巻き 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- ワニの刺身 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- 鞆の浦・観光鯛網の季節がやってきました~(文化庁(日本遺産ポータルサイト))2026-09-29 閲覧
- 鞆の浦観光鯛網(福山観光コンベンション協会)2026-09-29 閲覧
- えび粉/巻き寿司 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-29 閲覧
- ヒラマサ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ヒラメ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マコガレイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- カワハギ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マダイ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- コノシロ(コハダ)|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- タチウオ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- マアナゴ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- ハモ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 広島かきの生産量等(公益財団法人広島市農林水産振興センター)2026-09-29 閲覧
- 広島かき|全国のプライドフィッシュ(全国漁業協同組合連合会)2026-09-29 閲覧
- カキ (貝)|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- マガキ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-29 閲覧
- あなご飯 広島県|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-25 閲覧
- 節分と恵方巻【すしのイベント(2)】|すしラボ(ミツカン)2026-09-30 閲覧
- 恵方巻き/巻きずし 大阪府|うちの郷土料理(農林水産省)2026-09-30 閲覧
- 節分「丸かぶり寿司」の風習|常設展示更新(大阪歴史博物館)2026-09-30 閲覧
- 恵方巻|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- 鯖寿司|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧
- カニよりもカニらしく フィッシュスチック(大崎水産)【動画】(2023年3月15日)(中国新聞デジタル)2026-10-09 閲覧
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- カニカマ|Wikipedia(Wikipedia)2026-09-29 閲覧