太刀魚
たちうお/Largehead hairtail
鱗がなく、体じゅうが銀色の膜に覆われた、刀のような魚。頭を上にして立ったまま泳ぐ姿からも名が来ています。1kgを超えると身が厚くなり、急に高級魚に変わる。皮目を一瞬あぶって握ると、甘味の強さに驚かされます。
旬
太刀魚
産卵期が春から秋と長く、旬も長くて複雑です。卵巣や白子が大きくなっても味がいい。比較的安定しているのは夏で、脂ののった個体が多い。
旬 出回る時期
刀のように、立って泳ぐ

鱗はなく、体の表面は銀色のグアニンの層に覆われています。この銀は無味無臭。鳥取では「ハクイオ」。箔を押したような魚、というわけです。
山口下関に大型まき網船で水揚げされるタチウオは「巻き太刀魚」。トロ箱の中にぐるぐると折り曲げて詰めるからです。小田原では小さいものを「鉋屑(かんなくず)」と呼ぶ。
タチウオの大きさは、指で測ります。平たい体の幅が指何本分あるか。「指4本」がひとつの目安です。120cmを超える大物になると、釣り人はもう「ドラゴン」と呼ぶ。
1kgを超えると別の魚
握りの基本は「あぶり」。皮目を一瞬あぶって、切りつけて握る。あぶりすぎないのがこつです。1kgを超える大ぶりのものは、季節を変えて何度握っても外れがなく、実に甘味が強い。
わりあい庶民的な魚ですが、1kgを超えると身が厚く脂ものって、値がぐんとはね上がる。突然、高級魚に変身するのです。このサイズはkgあたり3000円を超えることもあり、寿司屋でもなかなか仕入れられない。近年は寿司ダネとしての人気も高まっています。
大阪大阪・堺の魚市場の寿司屋では、タチウオの握りに青ねぎをのせ、おろしぽん酢をかけて出します。鮮度抜群で身は透きとおり、銀の皮が光る。シコッとして甘味がある。早朝7時前から、ぽんぽん口に入っていきます。
身を上にする四国の寿司
高知徳島県阿南市から高知県にかけては、タチウオの押し寿司が盛んです。高知では「ひっつけずし」、あるいは「かいさまずし」。かいさまは逆さまのことで、酢で締めたタチウオの皮を下に、身を上にして押す。表と裏が逆だから、この名前です。
徳島身を上にしてつけるのは四国でよく見られる形で、徳島県の山あいの町、勝浦町の太刀魚寿司も、酢で締めた身を上にして握ります。シャリはあっさり、締め方も控えめで、素朴な味。
和歌山和歌山市の雑賀崎では、小ぶりのタチウオを三枚に下ろさず、ひれを落として骨ごと薄く切り落とし、酢に漬けて骨を軟らかくしてから食べる「背ごし」。田辺市など和歌山県南部では、三枚に下ろして端から切ったものをポン酢で。
長崎長崎県雲仙市の「冷や汁」は、焼いてほぐしたタチウオを、ごまと麦みそと一緒にすり鉢ですり、水でのばして、きゅうり、ねぎ、みょうが、青じそを混ぜたもの。ご飯にかけると、箸が止まらない。
韓国では日本以上に値が高く、国民食といっていいほどの人気です。済州島の名物「カルチジョリム」は、にんにく、しょうが、唐辛子のきいた煮汁で煮るかなり辛い煮つけで、ご飯によく合う。
東京湾にもやってきた
2000年以前は、太平洋側では伊豆半島から西に多く、関東ではあまり一般的な魚ではありませんでした。それがいまでは相模湾でも増え、ほとんどとれなかった東京湾で1年中大型が揚がる。三陸でもごく普通になり、北へ上がる傾向がはっきりしています。
近年はよく似たテンジクタチも増えています。背びれが黄色っぽく、体の幅が広く、口の中が淡い黄色。タチウオは背びれが黒っぽく、口の中も暗い色。2024年現在、テンジクタチは関東から南にしかいません。
塩焼きから、骨せんべいまで
スーパーでも切り身がよく並ぶ、家庭の魚です。まずは塩焼きから。切り身に塩を振って1時間以上置き、じっくり焼くと、皮目が内側からしみ出した脂で揚げたようになって香ばしい。液体で煮るより、焼く、ソテーするほうが向く魚です。
刺身なら焼霜造りに。三枚に下ろして皮目をあぶり、冷凍庫で急いで冷やす。冷やしすぎないこと。これで柔らかくなった皮が締まり、切りやすくなります。うま味は皮の近くにある。
小ぶりのものの中骨はとても柔らかいので、片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げすれば骨せんべいに。尾の部分は三枚に下ろさず、低温でじっくり素揚げにすると、尾に近いところは丸ごとさくさく食べられます。
徳島徳島県海陽町の竹ヶ島では、タチウオの切り身と豆腐を吸いもののだしで煮て、薄口しょうゆと酒で味をつけます。だしのきいた汁が、すこぶるうまい。
値段
大衆店
- 築地すし鮮「たちうお炙り」おこのみ1貫(税込)344円2026-09-29 時点
市場
- 1kg超のタチウオ(関東の仲卸)kgあたり3000円を超える(年の記載なし)
- タチウオ(市場)釣りもの・大型は高級、小さいものは安い(年の記載なし)
『江戸前の旬』では
読者の感想に、6巻のタチウオの背越しと、126巻のタチウオづくしが挙がっています。111巻の紹介文では、秋に極上の旨さになった魚の一つにタチウオが入ります。
土地の呼び名
| 呼び名 | 土地 | 種類・メモ |
|---|---|---|
| タチ | 福井県三国、兵庫県神戸、広島県、島根県、山口県萩、高知県、有明海 | |
| タチノウオ | 東京、福岡県大川市、有明海 | |
| ハクイオ | 鳥取県 | 箔押ししたような魚、の意味か |
| サアベラ | 福島県小名浜 | |
| サーベル | 島根県西部 | |
| ギンタチ | 島根県東部 | |
| シラガ | 神奈川県小田原、新潟県、静岡県 | 静岡県では幼魚 |
| カンナクズ(鉋屑) | 神奈川県小田原 | 小さいもの |
| マキタチウオ(巻き太刀魚) | 山口県(下関に水揚げ) | トロ箱にぐるぐる巻いて詰めるので |
| ダツ | 秋田県 |
次に読みたくなる
太刀魚とつながるタネ
同じころに旬を迎えるタネ
出てきた寿司ことば
このページの出典(11件)
- タチウオ|市場魚貝類図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- タチウオのあぶり(1212貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- タチウオの詳細情報(上対馬町漁業協同組合)2026-09-25 閲覧
- タチウオ(Wikipedia)2026-09-25 閲覧
- 太刀魚/タチウオ(579貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- かいさまずし(1213貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- 太刀魚寿司(1435貫目)|WEB寿司図鑑(ぼうずコンニャク)2026-09-25 閲覧
- おこのみ一貫|築地すし鮮(すし鮮)2026-09-29 閲覧
- 江戸前の旬 111巻(作品紹介)|コミックシーモア(コミックシーモア(NTTソルマーレ))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 6巻の感想(シーナ@食べ物漫画好き)|読書メーター(読書メーター(シーナ@食べ物漫画好き))2026-10-11 閲覧
- 江戸前の旬 126巻の感想(FGN.G)|読書メーター(読書メーター(FGN.G))2026-10-11 閲覧
