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品書き / 貝など

ミル貝海松貝

みるがい/Mirugai clam (Tresus keenae)

標準和名はミルクイ。大きな貝なのに、握れるのは水管だけで、1個から1貫。二枚貝のなかでも、値は最上位です。名は「海藻のミルを食う」。ただ、実際にミルを食べるわけではありません。

白ミル(ナミガイ)岡山県産、東京の市場で
白ミル(ナミガイ)岡山県産、東京の市場で写真: PD files(Public domain)

旬

ミルクイ(本ミル・黒ミル)
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ナミガイ(白ミル)
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旬は春。

旬 出回る時期

種類

ミルクイ(本ミル・黒ミル)

別名 ミルガイ、ホンミル、クロミル

バカガイ科の大型の二枚貝。水管が黒い皮で覆われ、刺身と寿司ダネになる。国産は減り、高級品。

旬は春

ナミガイ(白ミル)

別名 シロミル、オキナノメンガイ

キヌマトイガイ科でミルクイとは別の貝。ミルクイの代わりとして広まり、いまでは甘みのある貝として認められてきた。

旬は春

1個からとれるのは、たった1貫

大きな二枚貝なのに、寿司ダネになるのは水管だけ。大きくても小さくても、1個からとれるのは1貫分。しかも相場が高い。江戸時代から続く高級ダネで、寿司屋で「みるがい」と頼むには、かなりの勇気がいります。それでも財布を空にしてでも食べたい一貫です。
二枚貝のなかでも別格の値段。卸値でキロ3000円を超えるのが普通で、日常使いできる値段ではありません。安いときでもキロ2500円はします。
歩留まりの悪さも高値のわけ。ナミガイの水管は全体の約10%、外套膜を入れても30%ほどしかありません。ミルクイはさらに歩留まりが悪い。
水管は、軽く湯通しして握ります。甘みが強く、歯ごたえはほどよい。それでいて、シャリとなじむ。口から消えたあとには、貝の風味が残る。握り姿も美しい。
江戸前では「みるがいの仕込み」は基本の技です。とはいえ、職人みずから殻から仕込む店は高級店に限られます。

「海松食」なのに、ミルは食べない

海藻のミル(Codium fragile)
海藻のミル(Codium fragile)写真: Flyingdream(Public domain)
漢字で「海松食」。水管に海藻のミルをつけていることがあり、それがミルを食べているように見えるから、ミルクイ。ところが実際にはミルは食べません。水管にはミル以外の海藻やフジツボのほうがよくつきます。
フジツボ類やシロボヤをつけたミルクイなら、よく目にする。けれど、ミルをつけた「ミル食い」は、京都府の海洋センターでさえ見たことがありません。名前の由来になった姿は、それほど珍しいのです。
ミルクイの別名は「西施舌」。西施は中国・春秋時代の越の美女です。ちなみに河豚の白子は「西施乳」。
水管は大きく発達し、殻の中に引っ込められません。アサリのように殻をきちんと閉じることもできない。浅瀬の砂泥に深い穴を掘って暮らし、水管から植物プランクトンを吸い込んで食べています。

政宗の膳から江戸前の屋台へ

寛永12年(1635)正月、伊達政宗が将軍家光をもてなした膳にも、ミルクイは出ています。御肴の一品が「海松食吸物」。同じ膳には「たいらき小串」、つまり平貝も並びました。
18世紀の後半、江戸で握り寿司が生まれたころ、ミルクイは江戸湾の遠浅でとれていた二枚貝のひとつでした。いまも東京湾で漁は続いています。主な産地は愛知県、瀬戸内海、それに東京湾の千葉県と神奈川県です。
全国の水産試験場が安定して育てる方法に取り組んできたものの、いまだに成功していません。国産は減り、出回るミルクイのほとんどは中国産や韓国産です。

本ミルと白ミル

ナミガイ(白ミル)市場で「白ミル」と呼ぶのはナミガイ。水管を食べるところはミルクイに似ていますが、分類ではまったく別の貝です。ミルクイが減って高くなり、代わりに盛んに使われるようになりました。ミルクイは「本ミル」「黒ミル」と呼んで区別します。
ナミガイ(白ミル)白ミルは、昔はミルクイの偽物扱いでした。いまは値も上がり、白ミルをつけるのを嫌がる職人は減っています。ほどよく火を通した白ミルは甘く、貝らしい弾力と風味も豊か。味の差は言われるほど大きくない。それでも軍配はミルクイに上がります。値段はミルクイがナミガイの2倍以上。

台所のミル貝

刺身にするなら、剥き身から水管だけを外し、縦に開いて湯通しして皮をむきます。水管の先は切り落とす。先端だけ少しゆでると赤みが出て、見た目も華やかです。
天ぷらは意外な当たり。水管を開いて湯通しし、冷水に落として皮をむき、水気をよく拭いてやや高温で短時間揚げる。揚げると甘みがぐっと増します。
水管を外したあとの足やヒモ、内臓も捨てないで。適当に切って水から煮出し、みそを溶けば、ミルクイとみそだけとは思えない奥行きのある汁になります。にんにく風味のバターで短時間ソテーしても旨い。

旬のはなし

旬は春。俳句の季語としては冬(三冬)です。

値段

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大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「本みる貝」お好み1貫(税込)880円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「みる貝」1個(グランドメニュー、税込)437円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「白みる貝」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)275円2026-09-29 時点

市場

  • ミルクイの卸値(年の記載なし)キロあたり3000円を超えるのが普通

『江戸前の旬』では

読者の感想に、26巻と57巻の本ミル貝が挙がっています。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
ミルガイ市場(全国)ミルクイ(本ミル・黒ミル)
シロミル(白ミル)全国の流通ナミガイ(白ミル)
カモガイ北海道(サロマ湖・北見・道南)ナミガイ(白ミル)
クリガイ香川県丸亀市ナミガイ(白ミル)
シラガイ鳥取県境港市ナミガイ(白ミル)
ナミゲ鹿児島県大隅半島ナミガイ(白ミル)

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