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品書き / 光り物

春子(かすご)春子・春日子

かすご/Young sea bream (Crimson sea bream etc.)

鯛の子どもを、コハダと同じように塩と酢で締めた江戸前のタネ。主に使うのはチダイの小さなもので、マダイの子も交じります。「春日子(かすご)」はもともと東京の魚河岸の言葉。三枚に下ろした片身がちょうど1かんになる大きさで、1尾から2かん。尾びれを残して握ると、皮の紅色がぱっと映えます。

チダイ(アクアマリンふくしま)
チダイ(アクアマリンふくしま)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
春子の握り(東京の寿司店)
春子の握り(東京の寿司店)写真: City Foodsters(CC BY 2.0)

旬

春子(かすご)
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チダイは春から秋まで脂がのります。産卵期は秋で、北ほど早く、時期も旬も土地によって違う。春子の名から春が旬と思われがちですが、実際はそうではなく、桜のころにたくさん獲れるので春を感じるタネになりました。

旬 出回る時期

種類

チダイ(花鯛)

関東で春子といえば、まずこれ。えらぶたの後ろの縁が、血がにじんだように赤い。関東では「花鯛」の名で通ります。

マダイの幼魚

小さなマダイも春子に含まれます。東京では、小型の赤い鯛をまとめて春子と呼び、マダイとチダイを分けない傾向があります。

キダイ(連子鯛)

西日本で小鯛といえばこちら。マダイよりひとまわり小さく、赤みは弱い。

尾びれを立てて、姿で握る

12〜13cmのチダイを、1尾で1かん、姿のまま握る。尾びれがぴんと立って、いちばん伝統的な形です。もう少し大きければ、三枚に下ろして皮付きのまま酢で締め、尾びれをつけた片身で1かん。これぞ江戸前好みの姿。
チダイはマダイより水分が多い。ふつうなら欠点のこの性質が、酢で締めると利点に変わります。身が硬く締まりすぎず、シャリによくなじむ。皮目には甘味があって、酢で締めてもこくが残る。皮の色もマダイより華やかです。
東京人形町の老舗では、15cmほどの小鯛に塩を10分、酢と砂糖を合わせた汁にくぐらせ、昆布で1時間半ほど締める。身が薄く、締めると縮んでしまうので、海老のすり身を入れた甘いおぼろを身とシャリのあいだにかませて握ります。脂はのっていなくても、軽やかな酸味とふくよかなうま味が合わさる一かんです。
小さいからこそ手がかかる。包丁で下ろしにくく、小骨を一本残らず抜くまで神経を使います。鯛と名がついても、マグロや穴子ほどの華はない。お決まりの握りにはなかなか入らず、出会えたら幸運なタネです。
同じ鯛でも、大きいものは白身、小さいものは光りものとして扱う。春子は光りものの側です。

魚河岸の言葉「春日子」

「春日子」は東京の魚河岸で生まれた言葉で、江戸前寿司が誕生したころからのタネです。チダイは江戸前を代表する魚のひとつでした。
名前の由来としていちばん有力なのは、神饌として春日神社に奉納したから。春の字に引っぱられて春が旬と思われがちですが、実際は違います。
チダイ(マリンピア日本海)
チダイ(マリンピア日本海)写真: Totti(CC BY-SA 4.0)
チダイの「チ」は血。えらぶたの後ろの縁が、血がにじんだように赤いからです。もともと千葉県や東京都で使われた呼び名でした。
大きくなった雄はおでこが盛り上がって、目の前がくぼむ。これが鼻が折れたように見えるので、江戸時代には「鼻折鯛(はなおれだい)」。1712年の『和漢三才図会』にもこの名で出てきます。いまも愛知や三重には「ハナオレ」の呼び名が残る。
関東でチダイは「花鯛」。国産なら、寿司屋の品書きも土地の呼び名どおり「花鯛」と書きたいところです。

東のチダイ、西のキダイ

東のチダイ、西のキダイ。関東では寿司ダネにチダイを使い、西日本ではキダイを使います。小鯛といえば、西日本ではキダイ、東日本ではチダイ。味は甲乙つけがたく、違いは色合いです。
キダイ(連子鯛)キダイの味は皮目にある。皮を引くと味が一段下がります。三枚に下ろして湯をかけ、氷水に落とす皮霜造りにして握れば、身の甘さが先に来て、皮目の味と食感があとを追う。
福井日本海側の名物が「小鯛の笹漬け」。小鯛を酢で締めたもので、福井県、京都府、兵庫県などで作られています。塩味も酸味もほどよく上品で、名物のなかでも名品のひとつ。

大きな花鯛は嫌われた

チダイ(花鯛)大きな花鯛は、江戸前寿司の世界では意外に嫌われてきました。煮る、締める、焼くといった仕事をしないタネを「刺身ずし」と呼んで避ける傾向があったからです。それが近年は変わってきて、生のまま握る職人も増えています。12月の成魚でも、ほどよく脂がのって甘い。
チダイ(花鯛)花鯛は、春が長けてから夏の魚という印象がある。けれど暮れに入った千葉のチダイは卵を抱えていて、脂ものっていました。産卵が早い個体なのでしょう。1尾全部を握りにしても、何かん食べても飽きない。
まとまって獲れるので、祝いの折り詰めの焼きものによく使われてきました。マダイ、チダイ、キダイは、祝儀に使う赤い鯛の3種。最近はチダイの焼きものも高くなり、海外から代わりの鯛が輸入されています。

おから、佃煮、鯛めし

新潟新潟県新発田市の名物「からずし」は、江戸時代中期から作られてきたおからの寿司です。酢と砂糖であっさり味をつけたおからを、酢で締めた小鯛(チダイやマダイの幼魚)、イワシ、アジ、キスなどでくるむ。やや甘めで、お茶請けにもいい。
山形山形県遊佐町の道の駅には、底引き網に入る小ぶりのチダイやマダイを、骨まで軟らかくなるほど甘辛く煮た佃煮が並びます。
愛媛愛媛県南予風の鯛めしは、本来マダイで作るものですが、チダイでもいけます。刺身に切ったチダイを、しょうゆ・みりん・だしをひと煮立ちさせて冷ました地に、生卵と一緒に漬け込み、ご飯にかける。ねぎやごま、焼き海苔を添えて。熱いお茶をかけてもおいしい。
小ぶりの花鯛が手に入ったら開き干しに。皮目に鯛らしい風味と甘味があって、とてもうまい。千葉県鴨川などでも作られています。
関東関東では、花鯛は釣りの代表的な対象魚です。マダイより手軽に釣れて、数を競う楽しみがある。外房や常磐ではエビを餌にした胴付き仕掛けで狙います。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

大衆店

  • 芦屋 波沙鮓「小鯛柚子昆布〆」にぎり1貫(税込。本体価格700円)770円2026-09-30 時点

高級店

  • 銀座久兵衛 銀座本店・新館のお土産「小鯛雀寿司」(税込・税抜の記載なし)3,780円2026-09-29 時点

市場

  • 関東の市場での鯛の値段の順マダイ、チダイ、キダイの順に高い(年の記載なし)

『江戸前の旬』では

122巻で、カスゴは試験の題になります。伝説の江戸前寿司職人・新見清次郎を祖父に持ち、鱒之介の弟子になった新見清人。その修業の最終試験が、カスゴの握りです。

83巻の第1話も、題は「カスゴ」です。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
ハナダイ(花鯛)関東チダイ(花鯛)
カスゴ(春日子)東京(魚河岸)小型の赤いタイ科
チコ島根県全域、高知、福岡県玄海・戸畑チダイ(花鯛)
シバチコ福岡県北九州市戸畑チダイ(花鯛)。幼魚
ハナオレ愛知県熱田、三重県南伊勢町、長崎県雲仙市チダイ(花鯛)
オオッパナ東京チダイ(花鯛)。大型の雄
ハナアカ(鼻赤)石川県宇出津チダイ(花鯛)。成魚
デココダイ福島県いわき市豊間チダイ(花鯛)。成魚の雄
レンコ(連子)西日本キダイ(連子鯛)

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春子(かすご)とつながるタネ

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