寿司のデータベース

品書き / 貝など

赤貝

あかがい/Ark shell / Bloody clam

かつての江戸前、東京湾はアカガイの宝庫。江戸前寿司を語るなら、まずこの貝です。身が赤いのは、人と同じヘモグロビンを持っているから。握る直前にまな板へたたきつけ、身を締める。味の決め手は、独特の苦みと風味。そのくせのある味が、シャリによく合う。いまの最上は宮城県閖上産。アカガイは「寿司屋の看板」です。

アカガイ(ウラジオストクの水族館)
アカガイ(ウラジオストクの水族館)写真: A. C. Tatarinov(CC0)
赤貝の握り(魚べい)
赤貝の握り(魚べい)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

旬は秋〜春。なかでも寒のころから晩春までがいい。産卵期の晩春に入ると、味が落ち始めます。

旬 出回る時期

貝なのに、血が赤い

アカガイの身が赤いのは、血液の色素として、人間と同じヘモグロビンを持っているから。貝なのに、血は赤いのです。
アカガイ、サルボウガイ、サトウガイの3つはよく似ていますが、殻の放射肋の数で見分けがつきます。アカガイは約42本、サトウガイは約38本、サルボウガイは約32本。
缶詰の「赤貝」の中身は、じつはアカガイではありません。原料は、近い仲間のサルボウガイです。
『和漢三才図会』には、年老いたコウモリがアカガイに化ける、という話が載っています。肉が甘いので字に「甘」をつくる(蚶)、という説明も。

まな板にパチン

握る前に身に切れ目を入れ、まな板にパチンとたたきつける。身がきゅっと締まって硬直した、その状態のまま握ります。
下ごしらえは、割ってヒモと身に分け、身を開いて水洗いするところから。熟練の職人は慎重にむき身にして足を開き、塩水の中で振り洗いします。
アカガイの貝殻は厚みがあるのに軽く、割りやすい。中の身は大きく、熱を通しても強く縮みません。
アカガイの味を決めるのは、独特の苦みと風味。口に入れるとまずアカガイらしさが広がり、あとから旨みと甘みが押し寄せてきます。

ヒモ派の職人たち

本来は捨てるアカガイのわたを甘く煮て、軍艦巻きにする店もあります。

ケミガワから閖上へ

千葉アカガイが江戸前寿司の代表的なタネになったのは、昔の東京湾でたくさんとれたからです。名産地は、千葉県浦安市や千葉市のあたりでした。
千葉東京では、「検見川(ケミガワ)」がそのままアカガイの呼び名になりました。明治から昭和の初めまでは、千葉県検見川、東京都羽田、神奈川県子安の順に格付けされていたほどです。
千葉船橋では1955年ごろまで、アカガイを「かます」に約30kgずつ詰めて築地へ送っていました。かますとは、筵を二つ折りにした袋のことです。
宮城高級寿司店が「アカガイは閖上産だけ」と言い切る、その閖上は宮城県名取市にあります。1992年の雑誌『サライ』では、閖上赤貝組合の会長が、閖上の赤貝が日本一と呼ばれるようになったのは「ここ数年」と語っている。看板としては、案外新しいのです。

仕入れるほど損をする看板

アカガイは原価が高く、仕入れるほど損になりやすい。それでも「寿司屋の看板」であることは変わりません。最近は、儲からないからとアカガイを置かない店も増えています。
握り1個にアカガイ1個を使う大きさ(約100g)だと、輸入ものでも原価は1個200円ほど。そんな試算があります。
初夏になると、店頭でアカガイに「子が入ってるか」を確かめる店もあります。子を持ち始めたら「アカガイはよしにしようか」。それが季節の切り替えどきの目安です。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • くら寿司「赤貝」1皿(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点
  • スシロー「赤貝」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)160円2026-09-29 時点
  • はま寿司「赤貝」1皿(税込)176円2026-09-29 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「赤貝」お好み1貫(税込)990円2026-09-29 時点
  • 築地玉寿司 築地本店「赤貝のひも」お好み1貫(税込)220円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「赤貝」おこのみ1貫(税込)504円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「赤貝ひも」おこのみ1貫(税込)315円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「赤貝」1個(グランドメニュー、税込)547円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「赤貝」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)385円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「むきたて赤貝」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)550円2026-09-29 時点

市場

  • アカガイの卸値(市場魚貝類図鑑の記事時点)宮城県閖上産など高級品は1kgあたり3,000〜4,000円、輸入ものは2,000〜2,500円。箱の最初の選び手は8,000円以上払うこともある

『江戸前の旬』では

第47話の題が「赤貝」。78巻の紹介文も、江戸前を代表する食材として、エビやハマグリと並べてアカガイを挙げています。

読者の感想によれば、5巻では捌きたての赤貝の旨さ、51巻では閖上の赤貝の丼。78巻では中国産の赤貝に仕事をして、65℃で湯ぶりしてから昆布で締め、梅ぽん酢を合わせます。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
ケミガワ(検見川)東京都千葉県検見川がアカガイの集積地だったことから。
タマ(玉)・ホンダマ(本玉)関東の市場近縁のサトウガイ(ばち)と区別するための呼び名。
チガイ(血貝)千葉県富津市・愛知県蒲郡・岡山県日生・山口県宇部市など
アカギャー長崎県島原
ミロクガイ有明海
ベンベンガイ山口県仙崎
ウマノツメ山口県仙崎・香川県三豊市詫間町
キサ(蚶)古名『和名類聚抄』などにある古い和名。

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