寿司のデータベース

品書き / イカ・タコ

イカ烏賊

いか/Squid / Cuttlefish

江戸前で「いか」といえば、スミイカ(コウイカ)です。寒い時期のものは身が厚く、ねっとりとした甘みがある。夏に出る赤ん坊の「新イカ」は1匹でやっと1貫になる大きさなのに、走りにはキロ数万円の値が付く。そこへイカ類でいちばん高価なアオリイカ、冬のヤリイカ、関東で「赤いか」と呼ぶケンサキイカが加わり、種類と季節で顔ぶれがくるくる入れ替わります。

コウイカ(スミイカ)。高知県土佐佐賀で水揚げされたもの
コウイカ(スミイカ)。高知県土佐佐賀で水揚げされたもの写真: Kingfiser(CC BY-SA 4.0)
コウイカの握り(すし銚子丸)
コウイカの握り(すし銚子丸)写真: RuinDig/Yuki Uchida(CC BY 4.0)

旬

スミイカ(コウイカ)
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アオリイカ
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旬 出回る時期

種類

スミイカ(コウイカ)

別名 コウイカ、ハリイカ、甲イカ

体の中に石灰質の甲を持つイカ。これは貝殻の名残です。関東ではスミイカ、西日本ではハリイカと呼ぶことが多い。寿司ダネとしても天ぷらダネとしても非常に重要で、高値で取引されます。寿命は1年きり。夏から秋に出回る子イカが「新イカ」です。

旬は秋から春で、漁の盛期は春。新イカが出るのは夏から初秋にかけて。

関連することば 新イカ

アオリイカ

別名 ミズイカ、モイカ

イカ類のなかで、いちばん高値がつく。大型のシロイカ型ともなればなおさらで、使うのは主に寿司店や高級料理店です。甘みのもとになる遊離アミノ酸も、イカ類で最多。

秋に小型がとれ始め、翌年の夏まで続く。旬は土地によって違い、秋から初夏のものを喜ぶところもあれば、秋から冬のものを喜ぶところもあります。

ヤリイカ

別名 テナシイカ、サヤナガ

寒い時期の高級イカといえば、まずこれ。上品な味と、ほどよい食感が持ち味です。大きく育つのは雄で、小振りのものはほぼ雌。春にはその雌が子を抱きます。

旬は秋から冬、そして春。

スルメイカ

別名 マイカ、ムギイカ、バライカ

日本でいちばん身近なイカで、各地で「マイカ(真イカ)」と呼ばれています。産卵期の違う3つの群れがいるおかげで、市場には1年中並ぶ。ただ、2020年前後からは不漁続きです。

ケンサキイカ

別名 アカイカ、シロイカ、マルイカ

ヤリイカ、アオリイカと肩を並べる高級イカ。呼び名が面白くて、関東では「赤いか」、山陰などでは「白いか」になります。長崎県から島根県で作られる最上級の「一番するめ」も、このイカが原料。

走りの新イカ、キロ5万円

スミイカ(コウイカ)新イカは、東京をはじめ関東で目をむくほど高くなります。走りの時期なら、キロあたり5万円前後。
スミイカ(コウイカ)1匹でせいぜい1貫。もっと小さいものだと2匹でやっと1貫です。だからこそ、1匹でちょうど1貫の握りになる大きさが喜ばれます。
スミイカ(コウイカ)走りの新イカは、ピンポン球ほど。噛むというより、押しつぶすような柔らかさです。江戸前の寿司職人が尊ぶのは、このシャリとのなじみのよさ。
スミイカ(コウイカ)新イカは本来、江戸前では初秋の味でした。それがいまでは、鹿児島県などから初夏から夏にかけて多く入ってきます。

真っ黒でこそスミイカ

スミイカ(コウイカ)・関東関東の人は、墨にまみれて真っ黒なまま届くのを好みます。ところが瀬戸内海沿岸や長崎県では、海水で墨を洗い流してから出荷する。同じイカでも、土地によって荷の姿がまるで違います。
スミイカ(コウイカ)墨を洗ってきれいにした四国などの荷を前に、「これじゃ墨いかじゃない」と腕組みするベテランの寿司職人もいます。真っ黒でこそスミイカ、というわけです。
スミイカ(コウイカ)寒くなったら、江戸前の握りにスミイカは外せません。寒い時期のものは身が厚く、ねっとりとした甘みがあります。
スミイカ(コウイカ)冬から初夏にかけての親のコウイカは、肉厚で甘みが強い。新イカをもてはやす関東でさえ、コウイカ本来の味は成イカになってから、というのが通り相場です。
スミイカ(コウイカ)コウイカの一生は1年。早春から初夏に浅場で卵を産んで死に、生まれた子は夏に「新いか」の大きさまで育ち、翌春には成熟します。
スミイカ(コウイカ)西日本の呼び名「ハリイカ」は、甲の後端にある針のような突起が、体から飛び出していることから。『和漢三才図会』(1712年)にも「針烏賊」の名で載っています。

煮いかと印籠ずし

スルメイカ江戸前寿司の基本のひとつに「煮いか」があります。小振りのヤリイカや新イカを煮ることもありますが、いちばん庶民的なのはスルメイカの煮いか。ところが作る人は年々減り、いまや貴重な一貫になりつつあります。
スルメイカ作り方はこう。水・しょうゆ・砂糖の煮汁にスルメイカを1尾ずつ入れ、胴に菜箸を差してくるくる回しながら短時間で煮上げます。みりんを使わないのが江戸前のやり方で、残った煮汁は詰めの材料にもなる。
スルメイカ煮いかは皮のほうを上にして握り、詰めを一はけ塗ります。コツは、思ったより甘く煮ること。
スルメイカ・関東関東では真冬から8月ごろまで、小振りのスルメイカ(麦いか)が入ってきます。これをさっと煮て、握りに。
ケンサキイカ江戸前寿司の仕事は「握る」だけではありません。「詰める」仕事もあって、煮たイカの胴にシャリを詰めたものが「印籠ずし」。切り分けたら、いちばん前の部分、といっても実はいちばん後ろの部分を立てて置くのが流儀です。

甘さのアオリ、後味のヤリ

アオリイカイカ類でいちばん高価なのがアオリイカ。なかでも大型のシロイカ型は、びっくりするほど高い。使うのは主に寿司店や高級料理店です。
アオリイカイカの甘みのもとは、グリシン、アラニン、プロリンなどの遊離アミノ酸です。これをイカのなかでいちばん多く含むのが、アオリイカ。
アオリイカ「アオリ」は馬具の障泥(あおり)のこと。鞍の下に敷く泥よけです。胴を縁取る大きなひれが、この障泥に似ているというわけです。
ヤリイカ(仙台うみの杜水族館)
ヤリイカ(仙台うみの杜水族館)写真: Kinori(CC0)
ヤリイカ都内で修業した寿司職人は、冬のヤリイカを好みます。甘さではケンサキイカにかなわない。それでも爽やかな食感と後味のよさがあり、握るならできるだけ大振りの雄の胴を選びます。
ヤリイカイカのひれ、通称「耳」は、大型のヤリイカでも2貫しかとれない特ネタです。胴より食感がよく、旨みも強い。
ヤリイカヤリイカは雄のほうが大きくなるので、春に見かける小振りのものはほぼ雌で、しかも子持ち。関東の寿司店には、この子持ちが好きな人が多いのです。

一番するめはケンサキで作る

ケンサキイカ・長崎長崎県から島根県にかけて作られる「一番するめ」は、非常に高価な一品で、原料はケンサキイカ。スルメイカで作ったものは「二番するめ」と呼ばれます。
ケンサキイカケンサキイカは、関東では「赤いか」、山陰などでは「白いか」。そのうえ大きさや型によっても呼び名が変わり、名前がいくつもあるイカです。
干されるイカ(鳥取県岩美)
干されるイカ(鳥取県岩美)写真: David Monniaux(CC BY-SA 3.0)
スルメイカ名前の由来は素直で、干物の「するめ」にいちばん多く加工されるイカだから。一方で、墨を吐くイカやタコを指す「すみむれ(墨群)」が転じたのだ、とする見方もあります。
スルメイカ・神奈川相模湾のあたりでは、初夏にとれる若いスルメイカを「ムギイカ」と呼びます。若いスルメイカがとれる時期が、ちょうど麦の収穫期と重なるから。
スルメイカかつては日本の総水揚げ量の半分を占めたこともあるスルメイカ。それが2020年前後から、不漁が続いています。

墨袋をつぶさずに

スミイカ(コウイカ)家でスミイカを刺身にするなら、まず墨袋をつぶさないように甲と内臓を取り去ります。手早く汚れを取ったら、そこから先は水で洗わないこと。皮をむき、切れ目を入れてから切り分けます。
スミイカ(コウイカ)新イカの湯引きの一例です。皮をていねいにむき、塩を加えて沸かした湯に冷水を半カップ入れて温度を下げる。そこで2〜3秒湯引いて、すぐ氷水へ。水分をよくきって刺身の形に切ります。味の薄い新イカも、湯引くとぐっと味が増します。

値段

回転寿司・街の寿司屋・高級店のおまかせを並べて比べる

回転寿司

  • くら寿司「いか」1皿(一皿110円からの店)110円2026-09-25 時点
  • くら寿司「松いか」1皿(一皿110円からの店)120円2026-09-25 時点
  • スシロー「いか」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)120円2026-09-29 時点
  • スシロー「コウイカ」1皿(巣本店、税込。店舗により価格が異なる)140円2026-09-29 時点
  • はま寿司「アカイカ」1皿(税込)110円2026-09-29 時点

大衆店

  • 築地玉寿司 築地本店「いか」お好み1貫(税込)220円2026-09-29 時点
  • 築地玉寿司 築地本店「げそ」お好み1貫(税込)165円2026-09-29 時点
  • 築地すし鮮「いか」おこのみ1貫(税込)315円2026-09-29 時点
  • すしざんまい「いか」1個(グランドメニュー、税込)140円2026-09-29 時点
  • 梅丘寿司の美登利「季節のいか」(税込。貫数の記載なし。一部店舗は価格が異なる場合あり)275円2026-09-29 時点
  • 芦屋 波沙鮓「剣先イカ」にぎり1貫(税込。本体価格700円)770円2026-09-30 時点
  • 芦屋 波沙鮓「アオリイカ」にぎり1貫(税込。本体価格500円)550円2026-09-30 時点
  • 富山 蛇の目寿司「いか」にぎり1個(税込。その日の仕入れや季節で変わる)330円2026-09-30 時点

市場

  • 新イカ(スミイカの子)走りの卸値走りの時期はキロあたり5万円前後(出始めは4万円を超える)

『江戸前の旬』では

連載の第8話の題は「コウとアオリ」。単行本でも、80巻と86巻に「新イカ」、84巻に「イカ尽くし」と題した話があり、2008年には総集編『スミイカ編』も出ています。

21巻の客は、親孝行のつもりでイカの王様アオリイカを父に食べさせます。ところが父は、昔食べたマイカのほうがずっと旨かった気がする、と言う。旬は、そのマイカの正体を調べ始めます。27巻では、イカづくしの注文に、旬が細工を施したイカの握りを4種類こしらえ、客は塩とすだちで食べる。129巻は、季節はずれに市場へ並んだ新イカに、旬も客も驚くところから始まります。原作の九十九森が手がけた最後の巻です。

土地の呼び名

呼び名土地種類・メモ
スミイカ関東周辺スミイカ(コウイカ)
ハリイカ大阪府・兵庫県・岡山県など西日本各地スミイカ(コウイカ)。甲の後端にある針状の突起が体から飛び出していることから。
シンイカ(新いか)東京都・千葉県・神奈川県・兵庫県明石などスミイカ(コウイカ)。初夏から秋にとれる当歳の小イカ。
モンゴウイカ徳島県の山間部スミイカ(コウイカ)
ボタモチ神奈川県小田原市・二宮町スミイカ(コウイカ)
ミズイカ(水烏賊)島根県・福岡県・長崎県・宮崎県・鹿児島県アオリイカ。透明感のある色合いから。
バショウイカ静岡県沼津市アオリイカ。形がバショウの葉に似ているため。
アキイカ(秋いか)京都府舞鶴市・宮津市・伊根町アオリイカ。秋にとれる小型。
シルイチャー沖縄本島アオリイカ
テナシイカ新潟県・兵庫県但馬・鳥取県・島根県浜田・山口県萩市ヤリイカ
サヤナガ富山県ヤリイカ
フユイカ(冬イカ)京都府伊根町ヤリイカ。スルメイカを夏イカというのに対して。
マイカ(真烏賊)各地スルメイカ
ムギイカ(麦いか)神奈川県相模湾周辺スルメイカ。初夏にとれる小さな若いスルメイカ。
バライカ新潟県佐渡・東京都内の市場スルメイカ。春から初夏の小振りのもの。
ガンセキ長崎県平戸市度島スルメイカ
アカイカ(赤いか)関東の市場・愛知県・新潟県・三重県・和歌山県・長崎県・鹿児島県ケンサキイカ
シロイカ(白いか)兵庫県日本海側・鳥取県・島根県ケンサキイカ
マルイカ(丸烏賊)相模湾・東京湾の沿岸ケンサキイカ

次に読みたくなる

イカとつながるタネ

出てきた寿司ことば

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